痛覚は中枢神経への入り口である脊髄後角で、選択的かつ有効にコントロールされている。しかし痛覚伝達の調節が如何に行われるかなど、生理的条件下におけるシナプス・細胞レベルでの機能解析は十分には進んでいない。本研究は、脊髄神経細胞の神経伝達物質タイプの判別の為にVGAT-Venusラットを用いた実験系を立ち上げ、更に従来個別に進められていた電気生理学的研究と免疫組織学的研究を融合させた研究を行う事で、痛覚伝達の調節機構を統合的に明らかにする事を目的とする。 当研究所では、群馬大学の柳川教授が開発したVGAT-Venusラットが飼育されている。VGAT-Venusラットは、蛍光タンパク質Venusの遺伝子をVGAT遺伝子につないで発現させたラットであり、大脳皮質ではVenus発現細胞が抑制性神経細胞である事がすでに確認されている。しかし、脊髄においては同様の確認が行われていないため、抗GABA抗体を用いて免疫染色を行い、脊髄においてもVenusの発現がGABAの発現と一致するかを検証する基礎的なデータを得ておく必要がある。 そこで、今回VGAT-Venusラット脊髄においてVenusの発現がGABAの発現と一致するかどうかを調べるため、すでに大脳皮質でGABAの染色が確立されているUematsuらの論文(2008)と、マウス脊髄でGABAの染色が行われているHeinkeらの論文(2004)を参考に、Venusラット脊髄におけるGABAとVenusの二重染色を行ったところ、Venusラット脊髄において、GABAとVenusを共に発現している細胞が多数観察された。Venusラット脊髄におけるGABAとVenusの詳細な解析等はまだこれからであり、今後定量的な解析を行う予定である。
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