研究目的 遺伝子増幅方法のOSNA(One Step Nucleic acid Amplification)法を用い、細胞診検体中の腫瘍細胞(腺癌細胞)の検出を行い、分子生物学的に良悪の判定が可能か否かについて検証した。 検討方法 対象検体として術中腹腔洗浄細胞診や通常の腹水細胞診検体22検体(腹水11検体、腹腔洗浄7検体、ダグラス窩洗浄4検体)を用いた。対象検体の細胞診での判定結果は陰性8症例、陽性14症例であった。CEA遺伝子を標的とし、そのcDNA内でOSNA法に利用可能なプライマーセットを4本作製し、遺伝子増幅装置(RD-100i)を用いOSNA法で測定した。 研究成果 OSNA法で測定を行った結果22検体すべてにおいて反応が得られなかった。今回反応が得られなかった原因の検証を行った。まず、検体保存法が良好か否かをOSNA法で普段使用している標的遺伝子CK19を用い測定したところ、反応が得られる検体があったためカルノア固定での検体保存法は良好と考えた。次にOSNA法での反応時間は至適ではないのではと考え、別のリアルタイム濁度測定装置を用い反応時間を60分(OSNA法用RD-100iは16分)と延ばし測定したところ、5症例について反応が得られた。 考察 今回、OSNA法での測定結果は良好な結果が得られなかった。しかし、別条件においてはいくつかの検体で反応が得られたことは、OSNA法による検出の可能性があることが示された。OSNA法での測定を可能とするためには測定法にあったCEA標的プライマーを作製することが重要である。そのため、多くプライマーを作製し検討する必要があると認識した。今後、遺伝子増幅装置(RD-100i)以外のリアルタイム濁度測定装置を用いプライマーのデザインや反応時間などの検討を行い、OSNA法に至適な測定条件の確立が優先課題と思われた。
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