C反応性タンパク(CRP:C-reactive protein)の分子構造は免疫グロブリンIgMのように5個のサブユニットが輪状に結合したペンタマー構造である。しかし、10量体の分子構造の存在も報告されているが、その臨床的意義は明らかでない。今回、CRP高分子化の理由と臨床的意義について研究を実施した。 第一に急性心筋梗塞患者20例および糖尿病患者151例を対象に、愚者血清を高速液体クロマトグラフィーで分析および分取し、CRPを定量測定することで分子量を解析したところ、CRPのピーク値のほとんどは70~120kDの領域(NP領域)であった。しかし、急姓心筋梗塞患者では2例(10.0%)、糖尿病患者では30例(19.9%)で高分子である120~180kDa領域(HP領域)にピーク値が認められた。第二に他の生化学項目である総タンパク、アルブミン、尿素窒素、クレアチニン、総コレステロール、HDLコレステロール、LDLコレステロール、トリグリセライド、リン脂質、AST、ALT、LDH、γ-GTP、グルコース、HbAlc、インスリンおよびHOMA-Rを測定し、NP領域群とHP領域群とで比較したところ、すべての項目で有意差は認められなかった。第三にHP領域の試料にEDTAを添加し、分子量を解析したところNP領域にCRPのピーク値が移行した。第四にEDTA処理前後の試料について抗CRP抗体を用いてWestern blotを試行したところ、EDTA処理前では30kDa付近にバンドが認められた。しかし、EDTA処理を行うと30kDa付近のバンドは消失した。 以上本研究により、高分子CRPの出現頻度は急性心筋梗塞患者に比較して糖尿病患者が高いことから、高分子CRPは局所性の病態ではなく、全身性の病態に関与している可能性が示唆された。また、高分子CRPの出現は30kDa付近のCRPの出現が一つの要因であることが示唆された。
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