(研究目的)前回の奨励研究では6種類のIV型コラーゲンα(IV)鎖のうち、α3(IV)鎖とα4(IV)鎖の賦活ができなかった。また、前回抗原賦活が良好だった抗体はα(IV)鎖のコラーゲン領域を抗原として作製したものであり、NC1領域を抗原とした抗体の賦活は不良だった。これを改善するため、コラーゲン領域に作用する酵Collagenaseを用いて消化を行い、抗原賦活を試みた。 (研究方法)抗原賦活の条件設定を行うためヒトの腎臓組織を用いた。これを腎生検によく使われるホルマリン固定とアルコールブアン固定の2種類の方法で固定し、通常の方法でパラフィン包埋した。Clostridium histolyticum由来のCollagenase(100units/ml)を2時間及び15時間パラフィン切片に作用させ、抗原賦活を行った。その後、6種類あるIV型コラーゲンα(IV)鎖を識別する24種類のα鎖特異抗体の反応性を確認した。また、反応性の良好なα鎖特異抗体を用いて、パラフィン切片の長期間保管による抗原賦活への影響を検討した。 (研究成果)Collagenaseを用いた抗原賦活によりα1鎖~α6鎖の6種類すべてのα鎖を検出することができた。ヘマトキシリンによる核染も可能であった。抗原賦活は予想通り非コラーゲン領域特異抗体の反応性が高かった。-80℃、デシケーター、室内に約3年間保管したパラフィン切片でCollagenaseによる抗原賦活効果を調べた結果、ホルマリン固定切片では-80℃やデシケーターに保管した切片に比べ室内に保管した切片の反応性低下が明らかだった。アルコールブアン固定切片では保管方法の違いによる反応性に大きな差はなかった。以上、Collagenaseによる抗原賦活により全α(IV)鎖の解析が可能となったことから、本法はこの分野の研究に大きく貢献できることがわかった。さらに、Alport症候群の免疫組織診断においても、α5(IV)鎖だけでなくα3(IV)鎖、α4(IV)鎖の欠損も証明できることから、本法は本症診断に大きく貢献すると考える。
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