研究概要 |
本研究のサンプルとして、全身麻酔下にて歯周病の治療を行ったイヌ116頭から歯垢サンプルを採取し培養を行った。犬116頭中83頭(72%)で黒色色素産生菌を検出し、それぞれの口腔内の臨床データと照らし合わせた。犬において歯槽骨吸収のある50頭中35頭(70%)で黒色色素産生菌が検出され、歯槽骨吸収のない31頭中15頭(48%)でも黒色色素産生菌が検出された。また検出された黒色色素産生菌について、ヒトの歯周病原細菌であるporphyromonas gingivalisのプライマーを用い類似細菌と予測されるものを選択した。犬の口腔内の黒色色素産生菌として知られているヒトの歯周病原細菌であるp. gingivalisと同属とされるporphyromonas. gulaeなどをはじめとする数菌が知られているため、選択した黒色色素産生菌についてゲノム採取を行い16srRNA領域のシークエンスを行った。得られた配列をBLASTにて既知の配列と比較したところ、18検体がp. gulaeであるとの結果であった。これについてはMLST法や次世代高速シーケンサーなどを用いて、遺伝子配列についての解析を行い、現在データ処理中である。 飼い主との相互感染についての研究に関しては、飼い主からの唾液を採取し、ヒトの主な歯周病原細菌とされるp. gingivalis, Tannerella forsythia, Treponema denticola, Prevotella intermedia, Aggregatibacter actinomycetemcomitansの5菌種についてそれぞれに特異的なプライマーを用いPCRを行った。また同居の犬の歯垢サンプルを採取し飼い主と同様の方法で検索比較した。5家族において実施したところ、ペットである犬と接触する機会の多い飼い主において、その飼い犬が持つ細菌と同じ菌種が飼い主の唾液から検出される傾向にあり、ペットの犬と飼い主の間で相互感染が存在している可能性が示唆された。
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