研究概要 |
【本研究の目的】申請者が所属する小学校において縦断的調査として行われている「新体力テスト」の最も有効なフィードバック方法を探ることを目的とする。具体的には,児童個人の入学から卒業年度にいたるまでの「新体力テスト」の時系列データを活用した授業を開発し,児童の自分の身体への興味を促すとともに,自分の身体づくりや心身の調子を整えるための動機づけを得る方法論を検討する。 【研究の成果】6年生児童を対象に行った実践では,自分の6年間の変化に目を向けられるようにグラフを作成したり「身近な大人(保護者)の姿」を調べたりすることを行った。その結果,保護者が記述した「運動に対する思い」には,普段児童が暗黙知のうちに理解している内容や,未経験の内容まで様々なレベルがあったが,ほとんどが肯定的な意見で占められており,実践において有効に活用することができた。保護者が記述し「運動に対する思い」から児童が「運動のよさ」を考えることができたことは大きな成果であった。また保護者の運動履歴に書かれた運動やスポーツの名前は,児童の興味を高めるには十分であった。これは,運動に対する間口を広げる役割となった。 本研究における授業実践では,「新体力テスト」の時系列データを活用することにより,児童に自分の体を知り考える機会を提供することができた。また学習過程の中で,体力面だけではなく,心の健康や人との交流などいった「運動のよさ」について小学校6年生児童にとっても無理なく追求することができた。以上のことから,本実践は,自分の身体づくりや心身の調子を整えるための動機づけを得る方法論として適切な授業実践であったことが示唆される。
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