研究課題/領域番号 |
23H00002
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研究種目 |
基盤研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
中区分1:思想、芸術およびその関連分野
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研究機関 | 武蔵野大学 |
研究代表者 |
下田 正弘 武蔵野大学, ウェルビーイング学部, 教授 (50272448)
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研究分担者 |
柳 幹康 東京大学, 東洋文化研究所, 准教授 (10779284)
石井 清純 駒澤大学, 仏教学部, 教授 (30212814)
蓑輪 顕量 東京大学, 大学院人文社会系研究科(文学部), 教授 (30261134)
永崎 研宣 一般財団法人人文情報学研究所, 人文情報学研究部門, 主席研究員 (30343429)
大向 一輝 東京大学, 大学院人文社会系研究科(文学部), 准教授 (30413925)
八尾 史 東京大学, 大学院人文社会系研究科(文学部), 准教授 (30624788)
納富 信留 東京大学, 大学院人文社会系研究科(文学部), 教授 (50294848)
苫米地 等流 一般財団法人人文情報学研究所, 仏典写本研究部門, 主席研究員 (60601680)
船山 徹 京都大学, 人文科学研究所, 教授 (70209154)
高橋 晃一 東京大学, 大学院人文社会系研究科(文学部), 教授 (70345239)
柴田 泰山 浄土宗総合研究所, その他部局等, 専任研究員 (80451037)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
45,110千円 (直接経費: 34,700千円、間接経費: 10,410千円)
2024年度: 11,310千円 (直接経費: 8,700千円、間接経費: 2,610千円)
2023年度: 19,370千円 (直接経費: 14,900千円、間接経費: 4,470千円)
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キーワード | 仏教学 / 大蔵経 / 人文情報学 / デジタルヒューマニティーズ |
研究開始時の研究の概要 |
デジタル媒体における研究基盤の構築と利活用という人文学にとっての重要課題は現在新局面を迎えている。研究資料の全体を画一的にデジタルに転換し汎用性を追求する情報技術の方向性と、個々のテキストや資料に対する研究方法の多様性と個別性を尊重する人文学の方向性との間に乖離が生じ、両者の調停が重要な課題となっているのである。 本研究はこの最先端の問いを解決し、人文学の進路を開くため、これまで仏教学全体における汎用性を志向して研究開発を進めてきたSAT大蔵経データベースについて、仏教学各分野の個別具体的な研究手法に沿って構造化したうえで再び統合し、新たな仏教学の知識環境を提供する。
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研究実績の概要 |
本年度に進めた事業は、(1)AI-OCRを用いた異読校合システムの開発と実装、(2)大正新脩大蔵経テキストデータベースSATから出した諸典籍のTEI化、(3)急速に深化するAIの能力を仏典研究に取り入れるための国際協力の開始、(4)以上の成果レヴューのための国内外の学界における成果公開に纏められる。 (1)は、AIの導入を図る(3)を視野に入れ、本研究を今後飛躍的に拡大推進するための起爆剤となる画期的事業の開始を告げるものであり、実績として特筆したい。本システムは、東大図書館や浄土宗増上寺等からIIIFを用いて公開された大蔵経の画像データを対象とし、国会図書館開発のOCRソフトを発展的に適用することで異系統の版本の異読校合を機械的に可能にする。これによって大蔵経全体のインド、中国撰述部のテキストについて、現状で七系統、総計三億五千万字を超える典籍の異読を瞬時に抽出することが可能となり、大正新脩大蔵経の改訂という学界の悲願を可能にする環境が提供される。(2)については、毎週2回中核的な研究分担者・協力者によってSATデータのTEI化方法を策定する研究会を開催し、7月には研究合宿を開催、インド・中国・日本撰述部の仏典の構造の特性を解明し全体のガイドラインを策定しつつある。(3)および(4)については国内外の学界での活動の概要は、仏教文献デジタル化会議(4月、ウィーン大学)、比較思想学会50周年国際シンポジウム(6月、大正大学)、国際哲学会東京会議(8月、東京大学)、英国仏教協会(10月、ロンドン)、国際シンポ「デジタル・ヒューマニティーズと研究基盤」(11月、東京、日経新聞に記事が掲載)、ケンブリッジ大学DH拠点シンポジウム(2月、ケンブリッジ大学)、パリPSL大学(2月、PSL大学)等を開催し、海外からDHやAIの研究者を随時迎えて研究の国際連携を構築した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本年度は、当初の計画である(2)大正新脩大蔵経テキストデータベースSATのインド、中国、日本撰述部から選別し抽出した諸典籍のTEI化の推進、(3)急速に深化するAIの能力を仏典研究に取り入れるための国際協力の開始、(4)以上の成果を評価するための国内外の学界における成果公開に加え、(1)AI-OCRを用いた異読校合システムの開発と実装という、新たな成果を挙げることができた。これはことに浄土宗増上寺と本研究の主体となるSAT研究会が全面的に協力をして画像公開に至った、三大蔵と称される三種類の大蔵経の画像公開によって、その意義は当初の予想を超えて大きなものとなった。さらに、本研究課題が人間文化研究機構と共同主催をしたデジタル・ヒューマニティーズの国際シンポジウムは、日本全国の最先端の主要プロジェクトを結集し、state of artの意義を示すものであり、日本経済新聞にその意義が掲載されるなど、注目すべき成果を収めることができた。これら二つの成果は、研究が終了する最終年度に実現する予定で進めていたものが前倒しされて獲得されたものであり、研究が予想以上に進捗していることの証左である。
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今後の研究の推進方策 |
仏教学の研究対象としてのテキストや画像資料を扱う専門の方法を研究の特性に即して明示的に記述し、明示化された方法をデジタル化したテキストや画像資料に構造として組み込みつつ、あらたな仏教学知識環境としてウェブ上で提供するという、本研究の基本方針に則りつつ、上述した実績を踏まえ、次年度より「大正新脩大蔵経の改訂」というきわめて重要な問題の解決に向けた準備を整えてゆく。 1924年に出版が開始された『大正新脩大蔵経』はたちまちに国際標準となり、仏教学の最も重要な知識基盤として、今日まで世界における研究を支えてきたが、その一方で、研究の進展とともに改訂と再編集が求められてきた。けれども、複数の版本や写本の入手と利用がきわめて困難であることと、たとえ利用できたとしてもその分量が厖大すぎるため再校訂はとうてい不可能であるとの見通しから諦められていた。しかるに、SATプラットフォーム上におけるIIIFを通した諸版本画像の利用可能化と、上述した画期的「異読校合システム」の完成によって、百年に亙る学界の悲願である大正新脩大蔵経の改訂が可能な仕組みが整った。次年度(令和6年度)よりはこの事業を視野に入れたうえで、本研究計画を効率的に推進する。 年間の予定としては、毎週2回のTEI研究会を貴重としつつ、SAT大蔵経改訂研究会(6月、東京)において今後の具体的方針を策定する。さらに、中間成果の公開とレヴュー、および国際共同事業の推進については、仏教学知識基盤デジタル化会議(4月、台湾大学)、東アジア資料DH会議(ベルリン)、国際デジタル・ヒューマニティーズ学会ADHO国際会議(8月、ワシントン)、TEI国際会議(10月、ブエノスアイレス)、英国仏教協会共同事業会議(10月、ロンドン)、ITLR共同事業会議(2025年3月、ハンブルク)等において実現を図る予定である。
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