研究課題/領域番号 |
23H00019
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研究種目 |
基盤研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
中区分3:歴史学、考古学、博物館学およびその関連分野
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研究機関 | 札幌学院大学 |
研究代表者 |
臼杵 勲 札幌学院大学, 人文学部, 教授 (80211770)
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研究分担者 |
正司 哲朗 奈良大学, 社会学部, 教授 (20423048)
木山 克彦 東北学院大学, 文学部, 准教授 (20507248)
佐川 正敏 東北学院大学, 文学部, 教授 (40170625)
中村 大介 埼玉大学, 人文社会科学研究科, 教授 (40403480)
坂本 稔 国立歴史民俗博物館, 大学共同利用機関等の部局等, 教授 (60270401)
笹田 朋孝 愛媛大学, 法文学部, 准教授 (90508764)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2028-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
47,450千円 (直接経費: 36,500千円、間接経費: 10,950千円)
2024年度: 5,590千円 (直接経費: 4,300千円、間接経費: 1,290千円)
2023年度: 19,630千円 (直接経費: 15,100千円、間接経費: 4,530千円)
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キーワード | 遊牧国家 / 匈奴 / 囲壁施設 / 生産遺跡 / 東西交易 |
研究開始時の研究の概要 |
遊牧国家の原型となる匈奴の国家経営を、匈奴の囲壁施設(居館・城塞等)と生産遺跡を主たる対象に検討する。それらの形状や出土遺物を分析し、類型化と機能を検討する。さらに、周辺の生産遺跡、集落等との関係性を考古学的に検討して、それらの役割を解明する。また、匈奴の地域分割統治や、東西交易に着目し、匈奴国家西半部と中央アジアに遺された諸資料を分析検討する。また、匈奴期の前後段階の考古資料を、匈奴の資料と比較検討し、匈奴国家形成過程や、後続する遊牧国家への継承の内容を考察する。 以上から、匈奴の遊牧国家経営における制度・施設、生産・交易等の経済基盤の実態を明らかにし、その歴史的位置づけを考察する。
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研究実績の概要 |
23年度は、モンゴル国北部を中心に匈奴時代の囲壁施設、集落遺跡、周辺関連遺跡の確認・測量調査、遺跡探査を実施し、囲壁施設の記録化を進めた。確認・記録は、セレンゲ県ボロー遺跡、ハンドガイト遺跡等で行い、遺跡の位置・地形・形状を記録した。また、アルハンガイ県ハルガニーン・ドゥルブルジン遺跡においては、ドローンによる全体測量、内城の中央部・西部の基壇周辺で磁気探査を行い、遺構の範囲・形状の確認を行った。探査の結果、中央基壇の建物は東西約40m、南北約25mの長方形プランを持つことが判明し、センなどを用いて建物の壁が構築されている可能性が高まった。また、基壇の東に通路状の遺構が取り付き、門に向けて伸びることも確認できた。さらに東側と基壇周辺でも建物の痕跡が確認でき、建物配置の概要が判明した。本遺跡は、出土した瓦から匈奴単于の宮殿遺跡と推定されており、内部施設の構造を考える基礎資料が収集できた。また、測量の結果では、内城の外部にも建物跡が分布することも確認できた。なお、2021年に発掘された建物跡から出土した柱根から、多数の年輪を含む年代測定試料を採取することができ、宮殿跡の年代を確定するための重要資料が得られ、関係した単于の特定を可能とする重要資料が得られた。さらに遺跡の北西約5km西側に位置するこの遺跡に瓦を供給したハルヒラー川1遺跡からオルホン川まで、地形測量を行い、関連遺跡の位置関係を把握した。さらに、遺跡西側に位置する、石列群、方形囲郭をドローン・GNSS機器を用いて作成した。この遺跡は、墓・囲壁施設などの分布状況から、匈奴時代の可能性が高いと考えられ、性格の解明が必要である。 以上のように、囲壁施設に関連する良好な資料を収集することができ、次年度以降の囲壁施設の比較検討のために良好な成果を得ることができた。 また、カザフスタンの匈奴時代併行の関連資料調査も実施した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
23年度は、囲壁施設関連の情報を、現地調査によりモンゴル中央北部で順調に取得することができた。セレンゲ川流域のハンドガイト遺跡は、大型集落型囲壁施設でかつ東西二城という稀少例であり、良好に記録化した点は重要な成果である。また、ハルガニーン・ドゥルブルジン遺跡では、磁気探査を実施し、囲壁内の中心建物等の内部施設の情報が得られた。この探査は、物理探査の有効性を確認することも目的としていたが、予想以上に良好な成果が得られ、次年度以降の各城址の物理探査の有効性も確実になった。さらにオルホン川・タミル川流域においても城址遺跡・生産遺跡の確認・資料化を進めた。その結果、今後の研究のための資料、次年度以降の調査計画に関する情報・資料を十分に蓄積できたことは、大きな成果である。 また、計画初年度にあたり、GNSS測量機等の導入を行ったが、これらの機器についても国内での試用によって、調査の効率化について検証を済ませることができ、次年度以降の作業の迅速化が確実視できる。 囲壁施設の分類、規格・設計の解明作業も進め、漢尺の使用はほぼ確実とする結果が得られ、設計の基準や方位についても情報が得られた。一部の囲壁施設についてはすでに規格・設計の検討を進めており、それらについて一定の成果が得られ、今後の分析の進め方についても見通しが得られた。 この他に、関連資料の調査のため中央アジア・カザフスタンの匈奴時代併行期の考古資料調査を行い、匈奴と西方地域との関係性を考察する情報を得た。 以上のように、今年度は資料・情報の収集・蓄積、今後の調査・研究計画についての展望も進み、順調に研究が推移していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
集落遺跡・囲壁施設については、オルホン川・セレンゲ川流域の資料の蓄積が進んだ。これまでにヘルレン川上流域の資料については、すでに測量等で収集済である、これらの遺跡の集中地点については資料が充実化している。しかし、囲壁施設の存在が知られる南方のゴビ地域などの詳細情報は未収集であり、今後、モンゴル国を中心に調査を実施していく。ヘルレン川の中流域についても、発掘調査例が存在するが、詳細な測量が行われておらず、設計等の分析は行われていない。いずれも今後の調査により、内容を明らかにしていく必要がある。また、文献で匈奴国家の統治領域として知られるアルタイ地域などの西方や、大型墳墓群や工房址が存在するオノン川流域については、集落遺跡・囲壁施設の存在資料は知られておらず、今後・踏査・探査・試掘などの方法で存在の有無を確認していく必要があり、計画的に調査を実施する。また、隣接する中央アジアの関連遺跡についても踏査を行う。 調査には、ドローン・GNSS測位、Lidar等を活用し、記録の迅速化・詳細化を図る。また、遺構の残存状況が良好と考えられる遺跡については、物理探査(レーダー・磁気)を行い、地下遺構の様子を探る。 また、窯業・金属加工関連遺跡については、踏査による候補地の中から、発掘調査を実施する。特に囲壁施設との関連性が推定される遺跡を選択する。この際に、年代・成分組成・温度推定等の分析を、併せて資料を採取し実施する。 調査成果のうち迅速に公開が可能なものについては、学会発表、SNS等で公開する。また、一定の作業が必要な発掘調査の成果は、期間内を目途に報告書を作製し、電子媒体での公開を目指す。囲壁施設の分類、設計・規格等の解明については、収集資料の分析を進め、論文等で成果を公開する。 各年度ごとに、研究成果のまとめを研究参加者で検討し、最終年度に国際会議を開催し、総括を行う。
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