研究課題/領域番号 |
23H00020
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研究種目 |
基盤研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
中区分3:歴史学、考古学、博物館学およびその関連分野
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研究機関 | 長崎大学 (2024) 青山学院大学 (2023) |
研究代表者 |
飯島 渉 長崎大学, 熱帯医学研究所, 教授 (70221744)
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研究分担者 |
橋本 雄太 国立歴史民俗博物館, 大学共同利用機関等の部局等, 准教授 (10802712)
後藤 真 国立歴史民俗博物館, 大学共同利用機関等の部局等, 准教授 (90507138)
高橋 そよ 琉球大学, 人文社会学部, 准教授 (60772829)
五月女 賢司 大阪国際大学, 公私立大学の部局等, 准教授 (30535571)
中澤 港 神戸大学, 保健学研究科, 教授 (40251227)
市川 智生 沖縄国際大学, 総合文化学部, 教授 (30508875)
井上 弘樹 東京医科大学, 医学部, 准教授 (40868527)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2028-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
44,070千円 (直接経費: 33,900千円、間接経費: 10,170千円)
2024年度: 7,540千円 (直接経費: 5,800千円、間接経費: 1,740千円)
2023年度: 13,910千円 (直接経費: 10,700千円、間接経費: 3,210千円)
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キーワード | 歴史学 / 感染症 / データベース / COVID-19 / 新型コロナウイルス感染症 / パンデミック / 公文書 / 公文書館 / インタビュー / クラウド型データベース / 博物館学 |
研究開始時の研究の概要 |
COVID-19のパンデミックの歴史化をめぐっては、個人的な記録や記憶など、感染症対策への反応を示す資料群の整理・保全が必要である。そのための仕組みとして、国立歴史民俗博物館が運用しているクラウドソーシング・デジタル・プラットフォームを援用し、「コロナ関係資料アーカイブズ」(仮称)を構築・運用する。 COVID-19のパンデミックの感染状況などの基本的な状況を示すデータを組み込む。中澤港(神戸大学)が整理・公表してきた時系列的な感染の推移データを基本とし、国別の状況も組み込む。 持田誠(浦幌町立博物館)、五月女賢司(大阪国際大学)、高橋そよ(琉球大学)の収集資料などを、デジタル化して組み込む。
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研究実績の概要 |
新型コロナウイルス感染症のパンデミックをめぐる資料、記録、記憶を保全・継承するためのクラウド型データベースの構築を進め、試行版を作製した。その間、研究代表者と分担者が緊密な連絡を行いながら、病院、学校などの機関での資料、記録、記憶の保全のためのパイロット的な調査を行った。この調査の中には、鹿児島県与論島でのインタビューなどの発展的な内容を含んでいる。 2023年11月のグローバルヘルス合同大会(東京大学)では、本科研費メンバーが中心となって、「新型コロナの記録と記憶:「何を、誰が、どう残すか」」をテーマとするシンポジウムを開催し、医療や公衆衛生を専門とする参加者との間で活発な意見交換を行った。 同時に、市民参加型ワークショップなどでも同様の報告を行い、研究成果の多角的な発信を進めた。例えば、2024年3月の沖縄県那覇市でのイベントでは、参加者が「COVID-19の自分史」を考え、相互に討論・発表するという企画を計画、実施した。これは、新型コロナウイルス感染症をめぐる記憶や経験を叙述することの意味を考えることである。 年度末には、韓国と台湾から関係の研究者を招聘し、韓国と台湾における新型コロナウイルス感染症対策のあり方に関して、日本との比較を行いながら、総合的体系的な理解を進めるための意見交換を行った。この中で、台湾の歴史博物館が進めている資料の保全のための取り組みについて理解を深め、日本でも同様の博物館展示を行う可能性などを検討した。 このほか、科研費メンバーそれぞれが、研究文献、学術論文の執筆や国内外での学会報告を行った。なお、中国におけるロックダウンの調査研究の可能性も模索したが、政治的な状況が厳しく、本年度は断念したことを付け加えておきたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定通り、年度内にクラウド型データベースを製作し(外部への委託)、試験的な運用の準備を整えることができた。また、研究代表者及び分担者がそれぞれ資料・記録・記憶をめぐる試験的な調査を進め、そのアップロードの準備も進めている。 こうした作業の過程で、グローバルヘルス合同大会などでの意見交換を進め、新型コロナのパンデミックの中で、その対策に従事し、資料、記録、記憶を蓄積してきた医療・公衆衛生の領域の専門家との議論を進め、資料、記録、記憶の価値判断に関しても分析を開始した。また、社会発信をかねて、より公開性の高い市民参加型のワークショップなども開催し、資料、記録、記憶の保全と継承を進めながら、同時に、その将来的な公開(分的な公開)に関する知見も獲得することができた。 中国の事例研究を加えることができるか否か、は大きな課題である。中国におけるロックダウンをはじめとする新型コロナ対策の実相を分析することは、新型コロナ・パンデミックの歴史学的研究において不可欠である。しかし、昨今の政治情勢を踏まえると調査は今後も慎重にならざるを得ない状況である。そのため、本年度は、中国研究、情報において独自の強みを持つ台湾の研究状況を把握し、同時に、研究者との直接的な意見交換の機会を持った。これは、代替的な手法であるが、次年度以降もそうした手法を採用せざるを得ないと考えている。 以上のような理由から、上記のような進捗状況にあると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
(1)クラウド型データベースに具体的なデータをアップロードし、地理情報も付加しながら、その試験的な運用を開始する。データとしては、文書、写真、動画などなるべく多彩な情報をアップロードする。この作業の目的は、公開自体ではなく、プロジェクト参加者が新型コロナのパンデミックの実相を理解するためのツールを構築することである。そのうえで、将来的に公開を行った場合には、どのような問題点があるか(例えば、個人情報の処理等)を確認することも目的の一つである。 (2)資料・記憶・記録を残すという行為=歴史学的な「介入」の意義・正当性、またその行為自体が持つ権力性などについても討論を深め、他の学問領域や社会に対しても十分に説明できるような理論的な研究を進める。その際には、SNSなどのデジタル資料の取り扱い方についての検討も必要である。 (3)公文書館での資料公開も開始されており、新型コロナのパンデミックをめぐる資料、記録の保全、特に公文書についてパイロット的な調査を開始する。例えば、国立公文書館などでも、関係公文書の移管が開始され、その部分的な閲覧が可能になっている。しかし、より重要度の高い公文書の公開にはなお時間を要するため(現用文書としての保存期間が長く設定されており、移管に時間を要するため)、粘り強く公文書へのアクセスを継続する。 (4)メンバー各自が資料収集やインタビューなど、関連する調査を継続する。また、メンバー各自が学術論文の執筆や学会発表を行う。 (5)昨年度同様に、医療系の学会での発信、情報提供を行う。2024年度は、日本公衆衛生学会でのシンポジウムの開催を予定している。
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