研究課題/領域番号 |
23H00023
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研究種目 |
基盤研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
中区分3:歴史学、考古学、博物館学およびその関連分野
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研究機関 | 独立行政法人国立科学博物館 |
研究代表者 |
瀧上 舞 独立行政法人国立科学博物館, 人類研究部, 研究員 (50720942)
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研究分担者 |
鶴見 英成 放送大学, 教養学部, 准教授 (00529068)
山本 睦 山形大学, 人文社会科学部, 准教授 (50648657)
鵜澤 和宏 東亜大学, 人間科学部, 教授 (60341252)
角田 恒雄 山梨大学, 大学院総合研究部, 特任助教 (80446575)
神澤 秀明 独立行政法人国立科学博物館, 人類研究部, 研究主幹 (80734912)
板橋 悠 筑波大学, 人文社会系, 准教授 (80782672)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
46,800千円 (直接経費: 36,000千円、間接経費: 10,800千円)
2024年度: 11,310千円 (直接経費: 8,700千円、間接経費: 2,610千円)
2023年度: 13,000千円 (直接経費: 10,000千円、間接経費: 3,000千円)
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キーワード | アンデス考古学 / リャマ飼育 / トウモロコシ農耕 / 同位体 / 古代ゲノム / 同位体分析 / 古代ゲノム分析 / インガタンボ遺跡 / パコパンパ遺跡 / アンデス文明 / 古人骨 / 古獣骨 / ゲノム分析 |
研究開始時の研究の概要 |
アンデス文明の栄えた南米の太平洋岸は、フンボルト海流とアンデス山脈によって形成された多様な生態環境が隣接している。食物資源は異所的に偏在しており、社会ネットワークの構築により安定的な食料供給が導かれたことで、高度な文明発展に至った。本研究では南米ペルー共和国における考古学調査に理化学的手法を組み合わせることで、冷涼な高地高原で始まったラクダ科動物飼育と、温暖な峡谷域で広がったトウモロコシ栽培が結びついた複合型生業の成立過程を明らかにし、文明発展の機序解明を目指す。
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研究実績の概要 |
令和5年度は研究計画初年度のため、すでに国内にある試料の分析を進めつつ、新たな試料の採取を精力的に行った。 まずは日本で保管しているコトシュ遺跡、パコパンパ遺跡、クントゥル・ワシ遺跡およびカハマル盆地内遺跡のサンプルを用いて①食性推定、②DNA分析、③出身地推定から、トウモロコシ農耕集団とリャマ飼育集団の融合に関する調査を行った。①食性の変化は、パコパンパ遺跡の人骨コラーゲンからアミノ酸窒素同位体比の分析を行い、ヒトが摂取していた食物の時代変化を検出した。またコトシュ遺跡の獣骨からコラーゲン抽出と歯エナメルの前処理を進めた。②ではパイロット研究でmtDNA分析を行ったパコパンパ遺跡の個体について核ゲノム分析を行い、パコパンパ集団は先行研究で報告された北海岸集団に近いゲノム配列だったことを明らかにした。③ではクントゥル・ワシ遺跡のヒトのSr同位体比から出身地域を推定し、クントゥル・ワシ期およびコパ期の第一基壇内埋葬人骨はカハマルカ期の個体に比べて出身地域が多様だったことを明らかにした。 夏期調査ではインガタンボ遺跡の動物骨調査で形成期中期にはほとんどラクダ科動物は存在しておらず、形成期後期以降に出現することを確認した。その飼育形態や生業への影響を調べるため、人骨と動物骨の食性推定・出身地推定のための試料採取を行った。また、クントゥル・ワシ遺跡で2022年度に出土したイドロ期の動物骨および散乱人骨のサンプリングを行った。さらに南部高地のアヤクーチョ遺跡についてもパイロット研究として動物骨を数点採取している。これらの試料は令和6年度に分析を進めていく。 本プロジェクトの目的を古代アンデス研究者に紹介するためのキックオフシンポジウムを開催した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和5年度の調査により、形成期後期の社会変化に新たな情報が付加された。 これまでの研究で形成期後期にトウモロコシで飼育されたリャマとトウモロコシの摂取量が増加したことが明らかになっていたが、本研究のアミノ酸窒素同位体比分析により、その2つの資源だけではない更なる資源変化の可能性が示され、生業の変化について新たな指摘ができる期待が高まった。古代アンデス試料についてアミノ酸同位体分析を行ったのは本プロジェクトが初めてであり、より詳細な食性についての議論が可能となった。 北部高地のアンデス形成期の人骨試料について古代ゲノム分析が実施されたのも初めてのことであり、神殿に埋葬された集団の遺伝的特徴が明らかにされたことはとても重要である。紀元前のアンデス集団のゲノムデータは不足しており、同時期の他の神殿遺跡や北海岸のより古い時代の追加データが必要であるという方針が明確になった。すでに必要な地域の試料で調査を進める計画も立てられており、更なる成果が期待できる。 また、令和5年度には実験補助員の雇用と育成ができたことで分析可能試料数を拡大できるようになった。ペルー考古試料は輸出許可から1年以内に分析報告書を提出する必要があり、これまでは一年間の分析可能数が限られていたが、今後は分析点数を増やしていく予定である。 これらのことから、研究計画はおおむね順調に進展していると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
令和6年度は令和5年度に輸出申請した試料の分析を中心に行いながら、パコパンパ遺跡とクントゥル・ワシ遺跡で得られたリャマ飼育の開始とヒトの生業変化の関係について検証し、リャマ飼育集団の影響による社会変化についての議論を進めていく。 また令和7年度以降の分析に向けて、インガタンボ遺跡、クントゥル・ワシ遺跡、パコパンパ遺跡、カンパナユック・ルミ遺、ペルー北海岸の遺跡などで試料採取を行う。夏期調査でサンプリングを行い、ペルー文化庁に輸出申請を行い、許可が出たら日本に送り、翌年の調査までに報告書を作成するという一定のペースで進めていく。 アミノ酸分析や古代ゲノム分析では引き続き分析を進め、利用資源の時代変化や集団の遺伝的変遷について調査を進めていく。
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