研究課題/領域番号 |
23H00025
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研究種目 |
基盤研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
中区分3:歴史学、考古学、博物館学およびその関連分野
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研究機関 | 奈良県立橿原考古学研究所 |
研究代表者 |
光石 鳴巳 奈良県立橿原考古学研究所, 企画学芸部, 部長 (70263548)
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研究分担者 |
森先 一貴 東京大学, 大学院人文社会系研究科(文学部), 准教授 (90549700)
出穂 雅実 東京都立大学, 人文科学研究科, 准教授 (20552061)
高田 将志 奈良女子大学, 人文科学系, 教授 (60273827)
津村 宏臣 同志社大学, 文化情報学部, 准教授 (40376934)
白石 純 岡山理科大学, 生物地球学部, 教授 (70434983)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2028-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
46,280千円 (直接経費: 35,600千円、間接経費: 10,680千円)
2024年度: 10,660千円 (直接経費: 8,200千円、間接経費: 2,460千円)
2023年度: 18,330千円 (直接経費: 14,100千円、間接経費: 4,230千円)
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キーワード | 旧石器時代 / サヌカイト / 石材原産地 / 原産地推定 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、石材の原産地分析や石器の接合関係の再検討、遺跡の古環境分析などを組み合わせることで、旧石器時代にサヌカイトを多用した狩猟採集民の集団関係や移動のあり方を明らかにすることを目指している。 蛍光X線分析によるサヌカイトの産地推定研究を進めることを柱として、小規模な産地を含めたサヌカイトおよび安山岩原産地の実態調査をおこない、過去の出土遺物について3次元計測等による石器接合関係の抽出を試みるほか、発掘調査や古環境復元を含めた原産地における復元研究をおこなう計画である。
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研究実績の概要 |
研究初年度である2023年度は、可搬型蛍光X線分析装置を導入して稼働に向けて基礎的なデータの取得を進めるなど、各種の準備作業をおこないながら、(1)原産地遺跡研究、(2)卓上型蛍光X線分析装置による石材産地研究、(3)小規模産地の研究を進めることができた。 (1)原産地遺跡研究については、香芝市桜ヶ丘第1地点遺跡第10次調査出土遺物の基礎整理を進めた。同遺跡についてはこれまでに第11次までの調査履歴があるが、本研究ではまず、1998年におこなわれた第10次調査の出土品を扱っている。主たる旧石器の包含層とされるⅡb層の出土品で出土位置を記録している6761点を実査し、器種分類や最低限の計測を進めている。これに並行して、3DモデリングとAIの活用による接合資料研究のための写真撮影を進めている。予定の点数をほぼ終えており、アルゴリズムの確立に向けた作業に移行しつつある。 (2)卓上型蛍光X線分析装置による石材産地研究においては、岡山県恩原1・2遺跡出土の安山岩製石器について、石器表面の微小な欠けを利用した産地推定を実施した。対象は4文化層にわたり、多くはすでに藁科哲男氏らが分析済みのものだが、今回新たに12点を分析することができた。全体として四国産のサヌカイトを用いていることが確認され、藁科氏らの分析結果もおおむね追認された。特筆すべきは、少数ながら二上山産や金山産とみられる石材が認められることと、粗粒軟質安山岩とされてきたO文化層の横長剥片石核が玄武岩等である可能性が高いことが判明した点である。 (3)小規模産地の研究では、兵庫県西宮市甲山で採集された安山岩を卓上型蛍光X線分析装置により試験的に分析し、結果の精査を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
桜ヶ丘第1地点遺跡出土品については当初の想定より作業量が多くなっており、分類等の作業完了は2024年度の下半期までかかる見込みとなっている。また、3DモデリングとAIを活用した接合資料研究についても、アルゴリズム確立に向けた作業への移行が若干遅れ気味である。これらの影響もあって、表面粗さ測定器を用いた研究や、これまで続けてきた卓上型蛍光X線分析装置による分析法の課題解決に関わる作業があまり進んでいない。また、2024年度後半に再発掘調査を予定する鶴峯荘第1地点遺跡について、土地所有に関する問題があることが判明している。これは、申請時に把握されていなかった事案であり、その調整に時間を割かざるを得なくなっている。 一方で、可搬型蛍光X線分析装置の導入と、稼働に向けた基礎データの蓄積が進んでいることから、出土遺物の石材産地に関する分析研究には大きな遅れは生じていない。 以上のことから、部分的に遅れはあるものの、研究計画の先後を入れ替えるなどの方策で対応できると見込んでおり、全体としてはおおむね順調に進んでいると言える。
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今後の研究の推進方策 |
2024年度には可搬型蛍光X線分析装置を本格的に稼働させる予定である。複数の石器群を分析できると見込んでおり、すでに実施に向けた調整を進めている。石器群あたりの分析可能点数も従来より格段に多くなる見込みであり、新たな成果が期待される。この分野については大きく進捗を図りたい。 二上山北麓の原産地遺跡については、桜ヶ丘第1地点遺跡に関する基礎作業の進捗を急ぐとともに、他地点との関係を明らかにする作業への移行を目指したい。また、当初の計画にはなかったが、2023年度終盤から郡家今城遺跡(大阪府)石器群の再整理作業に参加する機会を得ており、接合資料の検討などをおこなっている。同石器群は原産地である桜ヶ丘第1地点遺跡や鶴峯荘第1地点遺跡の石器群と比較検討する上で好材料であり、この成果を原産地遺跡の検討に反映させるよう図りたい。 再発掘調査の実施について問題を生じている鶴峯荘第1地点遺跡については、香芝市教育委員会を通じて課題解決を図るべく調整を進めており、年度の半ば過ぎには見通しを得たいと考えている。
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