| 研究課題/領域番号 |
23H00047
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| 研究種目 |
基盤研究(A)
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| 配分区分 | 補助金 |
| 応募区分 | 一般 |
| 審査区分 |
中区分7:経済学、経営学およびその関連分野
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| 研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
古澤 泰治 東京大学, 大学院経済学研究科(経済学部), 教授 (80272095)
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| 研究分担者 |
濱野 正樹 早稲田大学, 政治経済学術院, 教授 (20711089)
青木 浩介 東京大学, 大学院経済学研究科(経済学部), 教授 (30263362)
藤原 一平 慶應義塾大学, 経済学部(三田), 教授 (50736874)
坂本 陽子 明治学院大学, 経済学部, 講師 (90846007)
クチェリャヴィ コンスタンティン 東京大学, 大学院公共政策学連携研究部・教育部, 講師 (30774153)
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| 研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2028-03-31
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| 研究課題ステータス |
交付 (2025年度)
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| 配分額 *注記 |
46,150千円 (直接経費: 35,500千円、間接経費: 10,650千円)
2025年度: 10,920千円 (直接経費: 8,400千円、間接経費: 2,520千円)
2024年度: 6,370千円 (直接経費: 4,900千円、間接経費: 1,470千円)
2023年度: 7,020千円 (直接経費: 5,400千円、間接経費: 1,620千円)
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| キーワード | 実物・貨幣経済 / 構造変化 / 長期停滞 / ニュー・ケインジアン・モデル / グローバル・バリュー・チェーン / 実物・金融貨幣経済 / 実物・貨幣金融経済 / バブル |
| 研究開始時の研究の概要 |
産業構造や人口動態の変化による自然利子率の低下が引き起こす長期停滞や金融政策効果の国際伝播は、各国の経済構造に影響を与える大きな問題となっている。これらの中長期的重要課題を適切に分析し政策提言につなげるためには、貨幣面のショックが、短期のみならず中長期において実物経済に影響を与えうる新たな理論的枠組みの構築が必要であり、精緻な実証分析に基づいた定量分析が求められる。本研究では、長期停滞や金融政策効果の国際伝播といった具体的課題に取り組むことを通じて、新たな中長期実物・貨幣経済統合理論を構築し定量分析を行うことにより、国際貿易とマクロ金融分野を融合する学術研究を大きく前進させる。
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| 研究実績の概要 |
技術進歩や人口構造の変化に端を発した産業構造の変化などが、実物経済と貨幣金融経済に与える影響を理論的・実証的に検証し、実物経済と貨幣金融経済の相互連関を明らかにするのが、本研究の目的である。2024年度は、その目的を達成するための準備として、実物経済の構造変化に関する研究を進めるとともに、相互連関に関わる貨幣金融経済の研究を推進した。 実物経済面では、人口や労働参加率が内生的に決定されるマクロモデルを構築し、日本の戦後データをもとにカリブレートし、人口やGDPなどの将来予測を行った。そして、子育てに関する固定費用や、労働参加に関係する教育などのコストが、人口動態や、GDPの成長に与える影響を分析した。また、日本の多国籍企業の海外直接投資活動や国際的R&D活動を理論的および実証的に分析し、企業単位の活動が国全体の構造変化につながる様子を捉えた。さらに、国際的な分業活動を理解するためのグローバル・バリュー・チェーンの分析も進め、関税政策などが各国の生産活動や社会厚生に与える影響を、定量的に分析した。 金融面では、資産バブルの研究を発展させた。資産バブルは新興国などのブーム・バスト・サイクルに非常に重要な役割を果たすが、従来のバブル理論は価格が上昇する「正のバブル」しか分析できていなかった。この研究においては、弱気の期待が「負のバブル」を生じさせる理論モデルを構築した。 実物経済と貨幣金融経済をつなげる研究としては、国際貿易論と国際金融論を用いたモデルを用いて実質為替相場が決定されるメカニズムを明らかにする研究が挙げられる。このサブプロジェクトを推進するとともに、価格弾力性が可変となるモデルを用いて、実物経済における産業の寡占化を通じて、フィリップス曲線のフラット化を説明することに成功した。
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| 現在までの達成度 |
現在までの達成度
2: おおむね順調に進展している
理由
実物経済と貨幣金融経済を統合する中長期理論を構築し、定量的モデルによる解析により、金融政策の実物経済への影響や実物経済に対する貿易政策等の貨幣金融経済への影響を分析するのが本研究の目的である。これにより、様々な経済政策が各国経済に与える影響を、実物面と貨幣金融面の双方にわたり総合的に明らかにすることができる。 これまでの成果としては、この中長期理論の基礎となるモデルの開発が挙げられる。今後、研究代表者である古沢が中心となり、このモデルを拡張していく。また、そのモデルで発生すると予見される資産バブルの研究も進んだ。研究分担者の青木は、従来からバブルと呼ばれていた「正のバブル」だけでなく、「負のバブル」についても研究を進め、「負のバブル」の発生により、かえって過剰な資本蓄積が起こり、経済が動学的非効率になる可能性も存在することを理論的に明らかにした。しかも、この状況は金融制約が非常に緩い場合に発生することを示した。本研究の分析対象の重要な一つの現象である「長期停滞」についても研究が進んだ。研究分担者の浜野は、人口動態の推移や労働参加率の変化が生産性や長期金利に与える影響について、定量的モデルを組み分析を進めた。同じく研究分担者である藤原は、構造変化が内生的に生じる理論モデルの構築に成功した。研究分担者である坂本が進めている企業のR&D活動の内生化と組み合わせ、「長期停滞」の主要な原因の一つである経済のサービス産業化を説明する重要な理論パーツになると考えている。 上述のように、本研究の目的である実物経済と貨幣金融経済の統合理論の構築に向け、主要な理論パーツが完成しつつあるというのが、これまでの状況である。
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| 今後の研究の推進方策 |
これまでは、最終的な統合理論のパーツとなる理論の構築を主に進めてきたが、これからはそれらを統合していく作業に入っていく。まず、古沢が開発してきた長期停滞モデルに貨幣を導入し、統合モデルの基礎となる理論モデルを開発する。貨幣の導入により資産バブルが発生しうるモデルとなるが、バブルの発生条件やその影響について、研究分担者である青木とともに理論的分析を進めていく。また、長期停滞の理由の一つとして挙げられている人口動態もモデルに組み込み、統合理論モデルの定量的モデル化も進めていく。 本研究において強調したい長期停滞の一要因は経済の構造変化である。先進国を中心にサービス産業のウェイトが高まるという構造変化が進んでいるが、その構造変化がどうして起きているのかについても解明していく。ICT革命に代表されるサービス産業での技術革新が発生する背景について考察し、技術革新を内生化していく。そしてそれがもたらす資本需要の減少、それによって引き起こされる長期停滞について、理論的考察を深め、統合理論に反映させていく。 こうした研究をチーム全体として行なっていく。これまでは、研究代表者と研究分担者がそれぞれが行なってきた研究を報告しあうことで、共通の研究目的に向けての異なるアプローチに対する認識を深めた。今年度もこうした機会を頻繁に持ち、各研究者が持つ強みを生かしたモデルづくりを行なっていく。海外の研究協力者との連携も深めながら、実物経済と貨幣金融経済を一体化した中長期モデルを構築し、産業構造の変化や人口動態変化とマクロ経済との相互関係を理論化し、データを用いた定量分析につながる基礎理論を確立していく。
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