研究課題/領域番号 |
23H00049
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研究種目 |
基盤研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
中区分7:経済学、経営学およびその関連分野
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研究機関 | 一橋大学 |
研究代表者 |
佐藤 主光 一橋大学, 社会科学高等研究院, 教授 (50313458)
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研究分担者 |
中村 良太 一橋大学, 社会科学高等研究院, 教授 (00717209)
Rahman Mizanur 一橋大学, 社会科学高等研究院, 客員准教授 (10726433)
Rouyard Thomas 一橋大学, 社会科学高等研究院, HIAS客員研究員 (40859542)
本田 文子 一橋大学, 社会科学高等研究院, 教授 (80815027)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2028-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
46,670千円 (直接経費: 35,900千円、間接経費: 10,770千円)
2024年度: 6,630千円 (直接経費: 5,100千円、間接経費: 1,530千円)
2023年度: 10,140千円 (直接経費: 7,800千円、間接経費: 2,340千円)
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キーワード | ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC) / 家計破たんリスク分析 / 保健・医療制度改革 / 医療財源 / 実証分析 |
研究開始時の研究の概要 |
日本政府は、「国際保健外交戦略」や「平和と健康のための基本方針」で、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)の実現を政策目標に掲げている。しかし、多くの途上国では医療財源の不足によって、人々が必要な医療へのアクセスの欠如、あるいは高額な自己負担による家計破綻のリスクなど、実現に向けての課題は多い。本研究ではアジア・アフリカの途上国等における医療財源の制度と運営を比較し、医療費の負担による家計破たんや国民健康水準に与える効果について国際機関等の公開データに加え、独自の行政データを用いるなどして証拠(エビデンス)に基づいた実証分析を行い、UHCの実現に向けた途上国における医療財源の在り方を提言する。
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研究実績の概要 |
2023年度は、それぞれのプロジェクトを以下のとおり実施した。 ①現地調査:セネガルで実施した家計調査とコミュニティ共済組合調査のデータ分析を進め、共済組合の特性と家計の保険料の支払状況や医療費による家計破綻との関係について分析した。分析結果をもとに、セネガル国家医療保障庁および国際協力機構と、今後の制度改革や支援について意見交換した。ガーナにおける新型コロナワクチンや非感染性疾患対策の費用と効果に関して調査の設計と実施を行い、収集したデータの分析を行った。ブータンの国家健康調査データを分析し、論文として取りまとめを開始した。また、同分析結果に基づき、アルコール消費抑制と必須医薬品の財源確保のためのアルコール課税政策の設計について保健省と議論した。 ②先進国との制度比較:低・中所得国の医療制度改革に資する制度的要点を明らかにするため、社会保険方式のもとでの公的、民間医療機関への診療報酬の仕組みについて、日本とフランスの制度比較を行い、論文にまとめた。また、チュニジア、ナイジェリア、ブルキナファソなどでのケーススタディをもとに、複数支払い機関による診療報酬が、医療機関のサービス提供に及ぼす影響について、質的データを用いて検証し、論文に纏めた。国連大学グローバルヘルス研究所で開催されたワークショップに参加し、日本でのHealth Policy and Systems Research(HPSR)に関する研究の実施状況を共有すると共に、西太平洋地域でのHPSRの促進について議論した。 ③途上国の家計破たんリスク分析:医療財政政策に関するデータのうち、アジア諸国についてのデータ収集、分析、取りまとめ、アフリカ諸国のデータ収集を開始した。バングラデッシュおよびパキスタンにおける医療サービスへのアクセスやQOL(Quality of Life)向上に関する調査に関連するデータ収集を実施した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
それぞれのプロジェクトにおいて、研究代表者の統括のもと、現地調査はセネガル、ブータン等現地政府・研究機関と順調に進捗している。先進国との制度比較のプロジェクトにおける、日本とフランス等OECD諸国との制度比較及び検証、また途上国の家計破たんリスク分析プロジェクトのアジア・アフリカ各国のデータ収集、分析、取りまとめも予定通り進展している。
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今後の研究の推進方策 |
①現地調査:セネガルにて2024年度実施予定の家計調査の準備を進める。これまでの家計調査で用いた質問票を改訂し、同国UHC庁と協働して調査内容に関して擦り合わせを行う。従来のコミュニティレベルでのリスクプーリングから、県単位でのリスクプーリングの実施のための共済組合の統合の影響が、地域や家計の所得状況によってどう異なるか検証することを念頭に、調査実施に先立って現地における聞き取り調査を行う。ガーナにおける疾病予防(高血圧)に係る私的・公的医療サービス利用に関する調査を継続して進める。ブータンでは、医療費財源確保のためのアルコール課税の実施にむけ、そのインパクト評価のベースライン調査の分析を進め、その結果をもとに同国保健省や健康信用基金に対して政策形成に向けた支援を行う。 ②先進国との制度比較:2023年度に引き続き、日本・フランス等OECD諸国の公的保健・医療制度における①サービスの質と診療報酬の仕組み、②非雇用労働者を対象とした公的医療保険プール、③複数の資金プールの調整や一元化について比較検証を実施する。 ③途上国の家計破たんリスク分析:2023年度に引き続き、アフリカ諸国におけるデータ収集を実施する。アジアおよびアフリカ諸国における国の医療財政政策に関する多国間データの収集・分析に関する論文を、アジア、アフリカそれぞれに主眼をおいたものを執筆、投稿する。同様に、バングラデッシュおよびパキスタンにおける医療サービスへのアクセスやQOL(Quality of Life)向上に関する調査についても収集したデータをもとに論文を執筆する。
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