研究課題/領域番号 |
23H00052
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研究種目 |
基盤研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
中区分7:経済学、経営学およびその関連分野
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
牧野 成史 (MakinoShige) 京都大学, 経済学研究科, 教授 (50938941)
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研究分担者 |
関口 倫紀 京都大学, 経営管理研究部, 教授 (20373110)
山田 仁一郎 京都大学, 経営管理研究部, 教授 (40325311)
チョルパン アスリ 京都大学, 経営管理研究部, 教授 (70511286)
若林 直樹 京都大学, 経営管理研究部, 教授 (80242155)
澤邉 紀生 京都大学, 経営管理研究部, 教授 (80278481)
砂川 伸幸 京都大学, 経営管理研究部, 教授 (90273755)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
45,630千円 (直接経費: 35,100千円、間接経費: 10,530千円)
2024年度: 11,700千円 (直接経費: 9,000千円、間接経費: 2,700千円)
2023年度: 15,470千円 (直接経費: 11,900千円、間接経費: 3,570千円)
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キーワード | 事業ポートフォリオ / 戦略的トレードオフ / 多角化企業 / 多国籍企業 |
研究開始時の研究の概要 |
バブル経済崩壊以降の日本企業の企業価値の毀損を招いたメカニズムと解決策を探るため、本研究は、(1)多角化企業の事業ポートフォリオ変革に関する実効性の高い理論を構築すること、(2)世界企業の大規模データベースの構築および産業界との連携を通じた定量・定性分析による実証的なエビデンスを蓄積することを目的とする。具体的には、多角化企業によるダイナミックな事業ポートフォリオ変革のメカニズムとその企業価値への影響を、戦略的意思決定レベル、経営基盤レベル、外部関係レベルのトレードオフの相互関係の観点から解明・理論化し新しいビジネス環境において、事業ポートフォリオ変革をいかに効果的に実施するべきかを解明する。
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研究実績の概要 |
本研究プロジェクトは、グローバル化・デジタル化・レアイベント・持続的な開発目標(SDGs)への対応が急務である新たなビジネス環境において、①事業ポートフォリオ変革に伴う戦略意思決定レベルのトレードオフ、②変革の実行に関わる経営基盤(組織・人材・管理会計システム)レベルのトレードオフ、そして③対外関係(対投資家など)レベルのトレードオフの 3つの戦略的トレードオフの相互関係を取り入れた新しい理論枠組みを構築することである。以下は、現時点での、査読付き国際論文、学会発表、図書出版、およびケーススタディーの成果の概要をまとめたものである。
(1)雑誌論文(査読付き論文: 全6件、招待論文1件):経済学、経営学、国際ビジネスの領域における新たな理論的アプローチや実証分析を含む。例えば、多国籍企業の女性取締役採用の動因や、日本企業の従業員報酬の停滞の解析など、多岐にわたるトピックが扱われている。 (2)学会発表(発表件数: 7件):国内外の著名な学会での発表が含まれ、国際経営や企業戦略、人的資源管理などが主要なテーマ。これらの発表は、研究の最前線での議論を反映し、学術界だけでなく実務界にも影響を与える内容が多い。 (3)図書出版(編著本: 1冊、分担執筆: 複数の章が含まれる図書1冊):「Transformation of Japanese Multinational Enterprises and Business」では、日本の国際ビジネスと多国籍企業の進化に関する深い洞察を提供。各章では、日本の特定の産業や企業に焦点を当てた詳細な分析が展開されている。 (4)ケーススタディー(ケース数: 4件):ケーススタディーは、特に自動車産業や飲食業界の企業が直面する具体的な戦略的課題に焦点を当てている。各ケースは、実際の企業事例を基にした実践的な学習材料として提供され、教育ノートも用意されている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
プロジェクトのメンバーにより、7本の論文(査読付き6本、招待論文1本)、1件の編著本(英語)、1件の分担執筆が出版され、国内外の学会でも活発に研究発表が行われた。アウトプットを概観する限り、概ね順調にプロジェクトは進展していると考えてよいと思う。以下は、発表された文献および学会発表の成果を、国際経営、起業家研究、財務研究、人的資源管理の観点からまとめた概要である。 ●国際経営:日本企業における従業員報酬の停滞についての研究では、利益創出、従業員の生産性、従業員株式が報酬停滞にどのように影響しているかが分析された。これは国際的なビジネス環境での人件費管理とパフォーマンス評価の理解を深めるものである。 また、多国籍企業がホスト国における雇用と企業社会責任の多様性にどのように対応しているかに関する発表は、グローバルビジネス戦略における新たな洞察を提供している。 ●起業家研究:起業家精神と組織革新の間の相互作用に焦点を当てた研究では、外部イベントの発生とそれを利用する能力が革新に与える影響が明らかにされた。起業家活動における過去の成功が新たな資金調達にどう影響するかを検討した研究は、起業家活動におけるレジティマシーの伝播のメカニズムを解明する。 ●財務研究:Environmental, social, & governance(ESG)株価指数の変動と株価動向に関する研究は、持続可能な投資戦略と市場動向の関連性を掘り下げ、投資家と政策立案者に対する重要な示唆を与えている。 ●人的資源管理:女性グローバル従業員のキャリアエージェンシーと環境との適合性を探る研究は、国際的な雇用管理における性別とキャリアのダイナミクスを明らかにしている。また、職場における先輩、後輩、同期との関係が助け合いの行動にどう影響するかを分析した研究は、職場の人間関係とその文化が社員の行動に与える影響を詳細に調査している。
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今後の研究の推進方策 |
前年度に続き各ワーキンググループによる事業ポートフォリオ変革に関する理論・実証分析が実施される予定である。研究活動の概要を以下に示す。 ●多国籍企業の研究: 日本の多国籍企業の社会貢献や組織内のジェンダーバランスとリーダーシップの動向を探ることを目的として、企業の社会貢献が雇用促進に与える影響に関する実証研究、および女性取締役の採用要因を探る研究が進行中である。 ●不確実性と企業業績:世界の3000万社のビッグデータを用いて、長期パネルデータを構築し、これを使用することでコロナ禍の影響下およびレジリエンスの過程における世界企業のパフォーマンス変化の分析が進展中である。年内に学術ジャーナルへの提出が予定されている。 ●組織内の制度及び組織間関係の研究: 日本のホテルチェーンの成長とコロナ禍の影響に焦点を当て、イベントシステム理論を用いて組織内の非公式制度や階層が事業ポートフォリオ変革に及ぼす影響の分析が進行中である。さらに、2010年代以降の企業間関係の変動に焦点を当て、リゾートトラストグループの1990年代のサービス多角化戦略に関する研究が進行中である。 ●起業と組織変革に関連する研究: 組織内の時間感覚とリズム感、アントレプレナーシップと組織マネジメントの関連性の研究、また、日本企業の事業ポートフォリオの転換をテーマに、大企業、ベンチャー企業、取引先企業などの複数の事例研究により、転換の促進と阻害要因に関する理論的な仮説を構築する予定である。 ●サステナビリティへの対応に関する研究:ESGサステナビリティと財務的企業価値の関連性についての研究が進行中である。また、日本企業の事業ポートフォリオの見直しにどのように影響しているのか、具体的には明治ホールディングスとレゾナックのケーススタディが実施されている。ケーススタディの成果は、ブックチャプターとして今年度中に公表される見通しである。
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