研究課題/領域番号 |
23H00060
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研究種目 |
基盤研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
中区分8:社会学およびその関連分野
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研究機関 | 日本福祉大学 |
研究代表者 |
斉藤 雅茂 日本福祉大学, 社会福祉学部, 教授 (70548768)
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研究分担者 |
辻 大士 筑波大学, 体育系, 助教 (90741976)
中込 敦士 千葉大学, 予防医学センター, 准教授 (70792711)
尾島 俊之 浜松医科大学, 医学部, 教授 (50275674)
平井 寛 山梨大学, 大学院総合研究部, 准教授 (20387749)
伊藤 大介 日本福祉大学, 社会福祉学部, 講師 (30825021)
渡邉 良太 日本福祉大学, 健康社会研究センター, 研究員 (50910410)
井手 一茂 千葉大学, 予防医学センター, 特任助教 (40900410)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
46,540千円 (直接経費: 35,800千円、間接経費: 10,740千円)
2024年度: 10,790千円 (直接経費: 8,300千円、間接経費: 2,490千円)
2023年度: 12,090千円 (直接経費: 9,300千円、間接経費: 2,790千円)
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キーワード | 社会的孤立 / 高齢者 / 地域づくり / ポピュレーションアプローチ / 長期縦断研究 |
研究開始時の研究の概要 |
高齢者の社会的孤立の予防・軽減にむけた長期縦断研究として、既存の大規模パネルデータ・繰り返し横断データに基づいた社会的孤立の記述研究およびアウトカムワイド研究、当該調査データと公的統計情報とを突合した前向きコホート研究、地域づくりによる効果を検証するポピュレーション介入研究、の3点に取り組む。ポピュレーション介入に関しては、ポイント付与制の地域活動の参加促進、住民主体の「通いの場」の展開、公共交通が脆弱な地域での新たな移動手段の導入、SIBを活用した官民連携の多様な拠点づくりという4つの地域事例に着目し、地域づくりによって高齢者の社会的孤立をどの程度予防・軽減しうるのかを解明する。
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研究実績の概要 |
高齢者の社会的孤立の予防・軽減にむけた長期縦断研究として、以下の3点に取り組んでいる。 記述研究およびアウトカムワイド研究(研究①):日本老年学的評価研究(JAGES)による「健康とくらしの調査」から、12年間の繰り返し横断データ、および、3つの3時点パネル(2010-13-16/2013-16-19/2016-19-22パネル)データの整備を進め、社会的孤立の時代変化、身体・心理・社会的Well-beingというアウトカムワイドな指標への影響、および、その加齢・世代・時代効果等の解析を進めた。 前向きコホート研究(研究②):2023年度には、対象自治体に対して介護給付実績情報および要介護認定・介護保険賦課情報を暗号化された被保険者番号で、人口動態統計に基づく死亡小票(死因情報)は生年月日と死亡年月日、性別、自治体をキーにして大規模調査データと個人単位で結合した。数万人規模で最長12年にわたる介護サービス利用実績および転帰を追跡したデータを構築し、高齢者の社会的孤立の健康影響および生涯介護費への影響の分析に取り組んだ。 ポピュレーション介入研究(研究③):通いの場を通じた介護予防(Case 1)および、ポイント付与制による地域活動の参加促進(Case 2)では追跡情報と結合し、それらの短期的な孤立予防・軽減効果の解析を進めた。電動カートを活用した外出促進(Case 3)では電動カート利用者のベースラインおよび利用実績に関する情報を新たに収集し、電動カート利用層のセグメントについての解析を進めた。社会的インパクト投資を活用した官民連携の多様な拠点づくり(Case 4)は追跡調査を実施し、民間企業によるスポーツ・趣味・エンタメ等を含む多様な拠点整備による短期的な社会的孤立の軽減・予防効果の解析に取り組んでいる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実績の概要にあるとおり、高齢者の社会的孤立の予防・軽減にむけた長期縦断研究として、以下の3点について概ね順調に進めることができている。 記述研究およびアウトカムワイド研究(研究①):日本老年学的評価研究(JAGES)による「健康とくらしの調査」から高齢者の大規模なパネルデータに基づいて、身体・心理・社会的Well-beingに関するアウトカムワイド研究に取り組み、孤立度の高い人ほどその後、手段的日常生活動作の低下や歩行量および外出頻度の少なさ、健康診断を受診しにくさ、抑うつ傾向や孤独感の高さ、幸福度および生活満足度の低さなどと関連していることが確認された。 前向きコホート研究(研究②):最長12年にわたる介護サービス利用実績および転帰を追跡したデータを構築したところ、社会的孤立が高齢者の自殺と密接に関連しており,なかでも,孤食状態にあった高齢者はベースライン時の属性を調整しても2.8倍ほど(抑うつ傾向を調整しても2.5倍ほど)自殺死亡のリスクが高いことなどが確認された。介護費用に関しても社会参加の乏しい高齢者の方がその後早期に要介護状態に至りやすく,介護給付費が高い傾向にあることが確認された。 ポピュレーション介入研究(研究③):通いの場を通じた介護予防(Case 1)、ポイント付与制による地域活動の参加促進(Case 2)、電動カートを活用した外出促進(Case 3)、社会的インパクト投資を活用した官民連携の多様な拠点づくり(Case 4)については、いずれもプログラムは予定通りに実施され、当該事業への参加による孤立軽減効果についての予備的な分析に着手した。たとえば,ポイント付与制による地域活動の参加事業では、ボランティアとして参加した高齢者も利用者として参加した高齢者もその後友人との交流を有する人が増加しやすく,要介護状態への移行リスクも低減していることが確認された。
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今後の研究の推進方策 |
記述研究およびアウトカムワイド研究(研究①):これまでに整備してきた既存データを用いた分析および論文化を進める。日本老年学的評価研究(JAGES)による「健康とくらしの調査」から数万人規模での最長12年間の繰り返し横断データ、および、複数時点のパネルデータを整備できたため、本データに基づいて、とくに高齢者の社会的孤立の時代変化、および、その加齢・世代・時代効果等の解析を進める。 前向きコホート研究(研究②):対象自治体に対して介護給付実績情報および要介護認定・介護保険賦課情報、および、人口動態統計に基づく死亡小票(死因情報)を収集し、結合している。継続して、数万人規模で介護サービス利用実績および転帰を追跡したデータを構築し、高齢者の社会的孤立の健康影響および生涯介護費への影響の分析および成果発信を進めていく。 ポピュレーション介入研究(研究③):通いの場を通じた介護予防(Case 1)、ポイント付与制による地域活動の参加促進(Case 2)、電動カートを活用した外出促進(Case 3)、社会的インパクト投資を活用した官民連携の多様な拠点づくり(Case 4)について進める。Case 1では質的な情報収集を含めて、通いの場のタイプ別の社会的軽減効果の解析をすすめる。Case 2では結合した情報から参加層の特性の変化の解析をする。Case 3については、電動カート利用層のセグメントについての解析を引き続き進める。Case 4については、2024年度内にベースラインから2年後の追跡調査を予定している。民間企業によるスポーツ・趣味・エンタメ等を含む多様な拠点整備による短期・中期的な社会的孤立の軽減・予防効果の解析に取り組む。
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