研究課題/領域番号 |
23H00064
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研究種目 |
基盤研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
中区分9:教育学およびその関連分野
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研究機関 | 筑波技術大学 |
研究代表者 |
金堀 利洋 筑波技術大学, 障害者高等教育研究支援センター, 准教授 (00352568)
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研究分担者 |
嶋 俊樹 筑波技術大学, 障害者高等教育研究支援センター, 助教 (00966020)
廣瀬 浩二郎 国立民族学博物館, 人類基礎理論研究部, 教授 (20342644)
田中 仁 筑波技術大学, 障害者高等教育研究支援センター, 講師 (70422392)
守屋 誠太郎 筑波技術大学, 産業技術学部, 准教授 (90809310)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2028-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
25,480千円 (直接経費: 19,600千円、間接経費: 5,880千円)
2024年度: 7,410千円 (直接経費: 5,700千円、間接経費: 1,710千円)
2023年度: 6,890千円 (直接経費: 5,300千円、間接経費: 1,590千円)
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キーワード | 視覚障害 / 触形 / 情報造形 / 立体感知 / STEAM教育 / 触形ユニット / 視覚障害者教育 / 3Dプリンティング技術 / 触覚学習 / ユニバーサルデザイン / リハビリテーション |
研究開始時の研究の概要 |
視覚による情報が得られない視覚障害者にとって、触覚で得られる情報が最も重要である 。ルイ・ブライユ(仏/1809-1852)によって発明された点字は、言語を1次元の6つの点で 表し盲人の文字として全世界に普及した。続いて2次元の触図は、線と表面の肌理や高低 差で、地図や解剖図、名画鑑賞など絵画的イメージを表わすことができる。しかし3次元 における立体の触察ツールは、教材模型の他彫刻や博物館展示品などに限られているのが 現状である。
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研究実績の概要 |
本年度の研究では、視覚障害者向け触形ユニットの開発を中心に、その製造技術の向上と教育への応用を進めている。研究の目的は、触覚に依存する視覚障害者が直感的に情報を得られる新しい教材を創出し、その社会的・教育的影響を探求することである。 5月には、このプロジェクトのための3Dプリンターを導入し、触形ユニットの設計とプロトタイプの製造を開始している。この技術は、研究の効率を大きく向上させ、具体的な成果を早期に形にすることが可能である。6月には、研究成果の記録と共有のためにビデオカメラを設置し、学術会議やワークショップでの活動を積極的に記録している。 8月には、「科学へジャンプ」というイベントで特別支援学校の生徒たちとのワークショップを実施。生徒たちと一緒に触形ユニットを使用した作品作りを行った。さらに、同月末には札幌で開催された日本基礎造形学会にて、当研究プロジェクトの成果を「TACTILE ART & THERAPY PROJECT」として発表し、参加者からのフィードバックを得ている。 年末に向けて、触形ユニットの量産を目指し、効率的な製造プロセスを確立するための試みを行っている。これにより、より多くの教育機関や研究者にユニットを提供し、その利用範囲を広げることが可能となる。 本年度の研究を通じて、視覚障害者が触覚を用いてより豊かな情報を得られる教材の開発に大きな進展があった。今後もこの研究をさらに発展させ、視覚障害者だけでなく、高齢者や認知症患者のリハビリテーションにも応用できる可能性を探る計画である。この一連の取り組みは、触覚による情報処理の重要性を浮き彫りにし、視覚障害者教育の新たな地平を開くものと期待する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究では視覚障害者向けの触形ユニットの開発とその応用に重点を置いて進められているが、いくつかの進捗上の変更と遅れが生じている。当初は3Dプリンターを活用して我々自身でユニットの製造を行う計画であったが、品質の向上と生産効率を考慮し、外注する方針に変更した。この変更により、ユニットの素材選定や生産体制の見直しが必要となり、生産開始が当初の予定より遅れている。しかしながら、外注体制が確立されれば、計画していた数量以上の生産が可能となる見込みである。 また、筑波大学附属視覚特別支援学校との連携においては、ワークショップを授業の一環として組み込む計画であったが、実際には予想以上の調整が必要であり、自立活動での実施など、形態の見直しを検討している。これにより、ワークショップの内容と方法も一部変更を余儀なくされた。 これらの事情を踏まえると、本研究の進捗状況は「やや遅れている」と評価される。外注による生産体制の確立や、教育機関との連携における障壁の克服により、今後の研究の進展が期待される。この研究がもたらす社会的・教育的影響は計り知れないものがあり、視覚障害者の情報アクセス手段の革新に寄与する可能性を秘めている。この取り組みは、視覚障害者に新たな学習の機会を提供し、その生活の質を向上させることに寄与すると期待する。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の今後の推進方策として、第二年目は国内の視覚特別支援学校などとの連携をさらに深め、美術と数学を組み合わせた横断的な教育プログラムの開発を進めることを計画している。各校との打ち合わせを通じて現場のニーズや課題を抽出し、これをプログラム設計に反映させる。ワークショップの実施は、教育効果を直接的に確認し、今後の改善へと繋げる貴重な機会となる。 また、触形ユニットの増産を進めることで、より多くのワークショップを実施可能となり、使用感の向上と教育効果の最大化を目指す。具体的には、外注による生産体制の確立が進んでおり、その成果を受けての量産が計画されている。この体制が確立されれば、当初の計画に比べてスムーズな実施が可能となる。 国際的な場では、11月にインドで開催予定の国際視覚障害者教育協議会(ICEVI)の世界会議に参加し、本研究の成果と触知教材の有用性を発信する。この国際会議は、各国の視覚障害教育者との協力関係を構築し、グローバルな視点での教育方法の革新を目指す機会となる。 国内では「第1回 触形アートフォーラム」を開催し、研究者や教育関係者との知見共有を図る。このフォーラムは、触形アートの可能性と課題を多角的に議論し、本研究の社会的な位置づけとその影響を明確にする場となる。 これらの取り組みを通じて、本研究の進捗状況と成果を評価し、次年度以降の活動に反映させる計画である。
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