研究課題/領域番号 |
23H00086
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研究種目 |
基盤研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
中区分12:解析学、応用数学およびその関連分野
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
坂上 貴之 京都大学, 理学研究科, 教授 (10303603)
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研究分担者 |
榊原 航也 金沢大学, 数物科学系, 准教授 (30807772)
横山 知郎 埼玉大学, 理工学研究科, 教授 (30613179)
宮廻 裕樹 東京大学, 大学院情報理工学系研究科, 助教 (40881206)
小野寺 有紹 東京工業大学, 理学院, 准教授 (70614999)
奈良 高明 東京大学, 大学院情報理工学系研究科, 教授 (80353423)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2028-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
44,200千円 (直接経費: 34,000千円、間接経費: 10,200千円)
2024年度: 8,580千円 (直接経費: 6,600千円、間接経費: 1,980千円)
2023年度: 10,010千円 (直接経費: 7,700千円、間接経費: 2,310千円)
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キーワード | 複素解析 / 特異点解析 / 逆解析 / 自由境界問題 / 基本解解法 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究課題は複素関数の動的特異点解析を用いて (P1) トポロジカル特異点フロー解析による非線形波動の数値解析,(P2) 特異点最適化による基本解解法の高度化と確率論・自由境界問題への応用,(P3) 特異点逆解析と特異点解析の三次元化による点ソース同定の逆問題への応用,(P4) 動的特異点解析によるベルヌーイの自由境界問題の研究,(P5) 動的特異点解析による細胞集団の配向場やトポロジカル欠陥の数理モデリング の研究を推進する.これらを通じて,特異点解析の数学理論を深化させ,応用分野を拡大する.さらに,応用数学の国際的潮流である学術基盤“応用計算複素解析(ACCA)”の進展にも貢献する.
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研究実績の概要 |
(P1) 横山はリーマン面上の1次元のレベルセット関数の性質を調べ,その両端の極限的な振る舞いに応じて,関数の特異点やレベルセットの極限集合にトポロジカルな制約が現れることを発見した.坂上は二重周期境界条件を持つ平坦トーラス上の点渦の定常解をSchottky-Klein prime関数を用いた解析的構成に成功した.(P2) 榊原は円板領域上での Laplace 方程式の Dirichlet 境界値問題に対し,悪条件性が完全に除去しつつ収束オーダーが従来と変わらない新しい基本解解法を構成した.(P3) 奈良は特異点解析手法の三次元問題への拡張にむけて四元数値関数の解析的性質を物理的に解釈し,時空間からなる四元数変数を設定,スカラー場である電位とベクトル場である磁場からなる四元数値関数を構成した.ここから特異点の位置や強さと,電磁場の時空間境界積分に関する代数方程式を導出することに成功した. (P4) 単連結領域の場合に双曲型自由境界が Robin 関数の極小点に集中することを主張する Flucher-Rumpf (FR) 予想の解決に向けて,小野寺はパラメータ摂動により導出される幾何学流がなす時空間力学系のヘテロクリニック軌道の構成に帰着されることを確かめた.(P5) 宮廻と坂上は単連結上の細胞配向場を決定するポテンシャル問題を二重連結領域の問題へSchottky-Klein prime関数を使って解決することに成功した
開始早々にオンライン会合を開催,10月に金沢大学でチーム会合で研究情報の交換を通してACCAの成果の相互展開について検討した.ACCAの国際連携活動として,坂上がゲストエディターの1人となりPhysica Dに特別号(16編の論文を掲載)を発刊した.さらに,インド工科大学ハイデラバード校でACCA Meetingを開催し,日印の研究者の共同研究を推進した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(P1)-(P5)で設定した個別の課題の研究も順調に進んでいる.またこの計画で重視している(P1)-(P5)の課題の横断的連携活動も本格的に進み始め論文として成果がでつつある.Applied and Computational Complex Analysis (ACCA) の国際的な研究連携活動も予想以上に拡大をしている.
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今後の研究の推進方策 |
ひきつづき(P1)から(P5)の研究項目の研究課題に取り組む.(P1)では,坂上と横山が中心にリーマン面上の関数の特異点分布に対して,それによって生成される勾配流の流線路ポロジーを離散構造で表現する手法を創出.昨年度の(P5)の研究成果である宮廻と坂上の細胞配向場の課題への応用を念頭にして,こうした場の離散構造で表現する手法の第一歩として,リーマン球面上の「非圧縮」配向場のCOT表現の構成を目指す.(P2)では,榊原を中心に坂上と横山が連携して,基本解近似解法における最適な特異点配置に特化した特異点最適化手法を構築する.(P3)では,奈良と宮廻が中心に坂上・榊原と連携して,四元数を用いた三次元ポテンシャル場の特異点逆解析手法を開発する.(P4)では小野寺と坂上の共同で,榊原と連携しながらベルヌーイ自由境界問題の自由境界の凝集現象について,多重連結領域の場合を含めた一般的状況下において理論的および数値的解析を行う,(P5)では,宮廻と坂上を中心に榊原・奈良と連携し,点渦力学における形状微分法を基盤として,細胞集団中の所望の位置にトポロジカル欠陥 を配置する境界形状を決定するための逆問題解法を構築する.
研究推進のための全体ミーティングを6月に開催し,研究成果の共有と今後のさらなる研究項目間の連携を加速する.また,各研究項目の研究進捗状況を定期的に確認する機会を設けて,上記方針に従った着実な研究達成に向けた連携活動を行う.こうした会合の機会にACCA活動に参加しうる研究者の講演会なども開催して,活動の国内展開を図る.各研究者は関連する国内外の研究集会に参加して研究情報の収集や研究発表を行うと同時に,海外におけるACCAの国際的な研究者ネットワークの拡大を図る.特にインドで昨年度行ったVikas Krishnamurthy博士らのグループとの交流を重視して行う.
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