研究課題/領域番号 |
23H00092
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研究種目 |
基盤研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
中区分13:物性物理学およびその関連分野
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研究機関 | 学習院大学 |
研究代表者 |
町田 洋 学習院大学, 理学部, 教授 (40514740)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
48,360千円 (直接経費: 37,200千円、間接経費: 11,160千円)
2024年度: 9,750千円 (直接経費: 7,500千円、間接経費: 2,250千円)
2023年度: 28,860千円 (直接経費: 22,200千円、間接経費: 6,660千円)
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キーワード | フォノン |
研究開始時の研究の概要 |
近年の第一原理計算に基づくフォノンの熱伝導率予測の驚くべき正確さは、1世紀前のパイエルスの理論を出発点とした我々のフォノンの熱輸送に対する理解が完成を迎えつつあることを思わせる。しかし最近相次いで見出されている多数のフォノンが相互作用することにより生み出される集団現象としてのフォノン流体やそれによる熱輸送、フォノンの熱ホール効果は、フォノンにはまだ既存の概念を打ち破る新奇な物性が潜んでいることを強く示唆している。本研究では歪みや圧力、磁場印加によるフォノン流体制御を介した巨大熱伝導率の創出など、フォノン流体を基軸とした創発フォノン物性の開拓と、それらを包含する新しい学理の構築を目指す。
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研究実績の概要 |
フォノンが熱輸送の担い手である絶縁体において、高温の熱伝導率の大きさはフォノンの比熱、フォノンの速度、フォノンの散乱時間によって決定される。フォノンの散乱時間はフォノンどうしの散乱において散乱前後でフォノンの運動量が保存されないウムクラップ散乱の頻度がその大きさを決める要因となる。フォノンの比熱、速度、散乱時間とそれらの積であるフォノンの熱伝導率は、フォノンのスペクトルに基づく理論計算によってかなり正確に予測が可能となっており、理論計算に基づく様々な熱伝導率の大きさをもつ物質設計も可能になりつつある。 フォノンどうしの散乱において、フォノンの運動量が散乱前後で保存される散乱も存在し、正常散乱を呼ばれる。正常散乱が支配的な場合フォノンはあたかも流体のように熱を運ぶ。このときフォノンどうしの散乱が高頻度に起こるほど熱はフォノンによって固体内を高効率に輸送されるため、熱伝導率の増大がもたらされる。 ウムクラップ散乱や試料境界における散乱(境界散乱)を主としたフォノンの運動量変化を伴う抵抗散乱に着目したフォノンの熱伝導研究は盛んである一方で、フォノンの流体的側面には長い間光が当たってこなかった。本研究はフォノンの流体としての性質を積極的に活用し、熱伝導率の制御を試みることを主眼としている。本年度の研究の第一段階として、測定試料に応力が加えられた状態においても熱伝導率が測定可能な手法の開発を行った。またその過程において同手法の様々な問題点を洗い出すことができた。次年度は本年度に明らかとなった問題点を踏まえて同手法の確立と応力下での熱伝導率データの取得を目指す。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
フォノンの流体としての性質を積極的に活用し制御することを目的として、測定試料に応力が加えられた状態においても熱伝導率が測定可能な手法の開発を行った。その結果同手法の様々な問題点を洗い出すことができた。いくつかは当初の予想の範疇を超えるものであったが、得られた知見を踏まえて軌道修正できたため、研究は概ね順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
上述の進捗状況を踏まえ修正した方針のもと、測定試料に応力が加えられた状態における熱伝導率測定を実現し、研究目的の遂行を目指す。併せて絶縁体のおけるフォノンの熱ホール効果の発現機構の解明およびフォノン流体と熱ホール効果の相互関係の追求も行い、固体におけるフォノンの熱輸送現象のより深い理解を目指す。
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