研究課題/領域番号 |
23H00103
|
研究種目 |
基盤研究(A)
|
配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
中区分15:素粒子、原子核、宇宙物理学およびその関連分野
|
研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
有賀 昭貴 千葉大学, 大学院理学研究院, 准教授 (20377922)
|
研究分担者 |
有賀 智子 九州大学, 基幹教育院, 准教授 (00802208)
佐藤 修 名古屋大学, 未来材料・システム研究所, 特任准教授 (20377964)
|
研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
|
配分額 *注記 |
47,710千円 (直接経費: 36,700千円、間接経費: 11,010千円)
2024年度: 10,270千円 (直接経費: 7,900千円、間接経費: 2,370千円)
2023年度: 22,360千円 (直接経費: 17,200千円、間接経費: 5,160千円)
|
キーワード | ニュートリノ / LHC / フレーバー物理 / レプトン普遍性 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は史上初めて衝突型加速器(コライダー)を用いてニュートリノ研究を行う。世界最大のコライダーである欧州原子核研究機構 CERN の大型ハドロンコライダー LHC を用いることにより、過去の加速器実験より一桁高いTeV領域の高エネルギーフロンティアを開拓し、3世代それぞれのニュートリノの生成・伝搬・相互作用を新しい運動学的レジームで解明する。特に、近年標準理論の公理であるレプトン普遍性を破るような「フレーバーアノマリー」が大きく議論されている中で、本研究は従来のアプローチ(β崩壊)ではなく、ニュートリノ散乱(逆β崩壊)を用いるという画期的な手法を用いて研究を行う。
|
研究実績の概要 |
帰国発展研究を中断して本基盤Aに切り替え、研究テーマとなるレプトン・クォーク相互作用の研究を推進した。FASER実験とNA65/DsTau実験という2つの実験のデータ取得が2023年の主要な課題であった。双方、名古屋大でエマルジョン検出器を生産し、千葉大もしくは九州大にて前処理をしたのちCERN(ジュネーブ)へ輸送し、現地で組み立てとデータ取得を行った。 FASER実験は予定している2022-2025年のデータ取得期間の2年目に対応した。CERN-LHC加速器の不調により予定していた半分のニュートリノデータ取得(30 fb^-1)にとどまり、用意した検出器は2024年度に使用することとした。物理解析面では2022年に取得したデータを使い解析体制の構築を行った。エマルジョン検出器を用いたサブサンプル(10 fb^-1の陽子衝突と130kgの検出器)の解析を行い、4電子ニュートリノと8ミューニュートリノをレプトンフレーバーを同定しながらそれぞれ5σを超える統計的優位性で検出し、史上初めてTeVエネルギー領域でのニュートリノ反応断面積を求めた。この結果を研究代表者がMORIOND EW 2024コンファレンスで報告をした。並行して2023年夏にCERN-SPS加速器を用いたテストビーム実験を行った。高エネルギー電磁シャワーのエネルギー構成のサンプルの作成に成功した。 DsTau実験では予定していた陽子・原子核反応の統計をためることに成功し2021年-2023年の3年間をかけたデータ取得期間を終了した。陽子・タングステン反応の断面積の測定、チャーム検出アルゴリズムの開発を行った。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
FASER実験についてデータ取得は加速器のトラブルで問題があったがその分は2024年度に埋め合わせることになっている。データ解析は順調に進んでおり、未開拓のエネルギー領域におけるニュートリノ反応断面積という物理結果を報告することができた。大きい統計・系統エラー範囲内でレプトン普遍性と矛盾のない結果を得た。 DsTau実験では2021年2022年度のランに比べて2.5倍と言う量的にチャレンジングなデータ取得となったが滞りなく終了することができた。 また、本研究に関わった4名の修士学生(千葉大学)を修了させることができた。
|
今後の研究の推進方策 |
FASER実験に関しては2024年度のデータ取得を遂行する。すでに取得した70 fb^-1に加え、本年度は20-30 fb^-1のデータ取得を期待している。並行して、エマルジョン検出器からのデータの読み出し・処理の両方を加速し、2024年度中にニュートリノ反応検出数を10倍にする。これを用いて電子・ミューニュートリノの微分生成断面積、およびそれぞれの荷電カレント反応から生成されるであろうチャーム粒子の検出を確立する。一方で、夏にCERNのSPS加速器を用いたテストビーム実験を予定している。これにより高エネルギーミューオンの電磁多重散乱による運動量測定について実証する。 DsTau実験は名古屋大学における高速読み出し、陽子・原子核反応によるチャーム粒子対生成の研究を加速させる。一方で千葉大学に精密読み出し装置の開発を進める。
|