研究課題/領域番号 |
23H00116
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研究種目 |
基盤研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
中区分15:素粒子、原子核、宇宙物理学およびその関連分野
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
青木 茂樹 神戸大学, 人間発達環境学研究科, 教授 (80211689)
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研究分担者 |
伊代野 淳 岡山理科大学, 理学部, 教授 (10211757)
中野 敏行 名古屋大学, 理学研究科, 准教授 (50345849)
仲澤 和馬 岐阜大学, 教育学部, 招へい教員 (60198059)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
46,670千円 (直接経費: 35,900千円、間接経費: 10,770千円)
2024年度: 20,410千円 (直接経費: 15,700千円、間接経費: 4,710千円)
2023年度: 11,830千円 (直接経費: 9,100千円、間接経費: 2,730千円)
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キーワード | ガンマ線 / 原子核乾板 / エマルション |
研究開始時の研究の概要 |
ガンマ線天文学は,NASAが2008年に打ち上げたFermi衛星LAT検出器により飛躍的な進歩を遂げたが,解像度(角度分解能)の不足から天体が密集するとともに拡散ガンマ線の放射が混入する銀河面近傍の観測では未解明の課題が残されている。さらにX線による観測ではVelaやCrabなどの高輝度天体で偏光の観測が報告されているが,ガンマ線天文学では未達成となっている。 原子核乾板を用いて,高解像かつ偏光に感度を有するガンマ線望遠鏡を実現し,大面積・長時間の観測により,上記の課題に対して質的に新しいデータを提供する科学観測に着手する。
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研究実績の概要 |
2023年春のオーストラリア気球実験は、前回(2018年)実験を1桁上回る高統計観測を目指し、原子核乳剤量産・連続機械塗布の設備により量産体制を確立して臨んだ。ローラー駆動機構により大面積化・軽量化した開口面積1.25m^2の多段シフターにコンバーター部をマウントした望遠鏡を標準ユニットとし、大型化した与圧容器ゴンドラにユニット望遠鏡2台を搭載した総開口面積2.5m^2の望遠鏡を製作し、輸出した。 4月30日早朝から5月1日にかけての総飛翔時間27時間、高度35.4-37.2kmの水平浮遊24.3時間のフライトに成功し、Velaパルサーおよび銀河中心領域が望遠鏡の視野を横切る時間を完全にカバーすることができた。フライト中のモニターデータおよびメディアに記録されたデータから各コンポーネントの健全な動作が確認できており、回収後にフィルムを日本に冷蔵輸送し現像を行って各フィルムに飛跡が健全に記録されていることも確認できている。 多段シフターのフィルムは前回実験でも使用した超高速飛跡読取装置(HTS)でスキャンニングを進め、全160枚のフィルムのうち80%以上のスキャンが完了している。コンバーター部のフィルムは全部で1800枚あり,HTSの5倍速を狙う次世代機(HTS-2)のコミッショニングと並行してスキャンを進め25%以上のスキャンが完了している。45枚/週のスキャン速度から2倍速へのアップグレードに成功し、スキャンを進行中である。シフターフィルムの飛跡データからは各段間のフィルムの位置関係がオペレーション通りに得られており、それに基づいて各飛跡へのタイムスタンプを行い0.1秒以下の時間分解能が達成できている。コンバーターフィルムの飛跡データについては、前回(2018年)実験で確立した解析手法に基づいて、ガンマ線の電子対生成事象が系統的に得られることを確認している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2023年春にオーストラリアにて実施した気球実験では、前回の6.6倍となる2.5m^2の開口面積で天球が1周する24時間を上回るレベルフライトに成功した。これにより、前回実験で結像に成功したVelaパルサーからのガンマ線をさらに高統計で蓄積することに成功するとともに、銀河中心が望遠鏡の視野を横切る時間帯もフルにカバーすることに成功した。回収、フィルムの日本への冷蔵輸送、現像も順調に完了し、製造時から現像までの期間、フィルムが健全であったことも確認できている。 前倒し執行によって、解析体制の人的配置やハードウェアの強化をはかったことによって、超高速飛跡読取システムによるスキャンニングと飛跡データの解析が順調に進んでいる。フィルムのスキャンニングについては、タイムスタンプ部のフィルムについては80%以上について完了し、コンバータ部のフィルムについてもスキャン速度の倍速化の成功により翌年度の6月末頃の完了見込みを目指して進めている。得られた飛跡データの解析についても、コンバーター部およびタイムスタンプ部それぞれについて順調に進んでおり、両データを統合する系統的な解析も順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
2023年春のオーストラリア気球実験は開口面積が前回(2018年)実験の6.6倍となっており、Velaパルサーについてはそれに応じた高い統計のデータが得られることが期待できる。高統計のガンマ線事象のうち、より高エネルギーのガンマ線だけに絞ることにより、前回実験での観測よりも高い解像度(角度分解能)でのイメージングに挑む。さらには、銀河中心方向や銀河面放射などVelaパルサー以外のガンマ線源の検出にも挑む。 Velaパルサーからのガンマ線に関して高統計での観測が達成できれば、各事象の電子対の開く方向について親ガンマ線の入射軸まわりのアジマス角を測ることにより偏光の分析が可能となるが、その解析手法の検討も進める。
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