研究課題/領域番号 |
23H00143
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研究種目 |
基盤研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
中区分17:地球惑星科学およびその関連分野
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
横山 哲也 東京工業大学, 理学院, 教授 (00467028)
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研究分担者 |
井田 茂 東京工業大学, 地球生命研究所, 教授 (60211736)
中本 泰史 東京工業大学, 理学院, 教授 (60261757)
奥住 聡 東京工業大学, 理学院, 准教授 (60704533)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
47,060千円 (直接経費: 36,200千円、間接経費: 10,860千円)
2024年度: 10,530千円 (直接経費: 8,100千円、間接経費: 2,430千円)
2023年度: 15,860千円 (直接経費: 12,200千円、間接経費: 3,660千円)
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キーワード | 同位体二分性 / 隕石 / 原始太陽系円盤 / 同位体分析 / 理論研究 / 隕石同位体二分性 / CC隕石・NC隕石 / CAI / CIコンドライト / 分子雲コア / 粒子運動解析 |
研究開始時の研究の概要 |
近年、初期太陽系の内側と外側の安定同位体組成が異なっていたという「同位体二分性」が惑星科学の一大トピックとなっている。本研究の目的は、このような不均質がなぜ生じたのか、隕石の同位体分析と太陽系進化の理論研究双方のアプローチから明らかにすることである。隕石研究では、太陽系最古の物質CAIおよび太陽系平均組成を保持するCIコンドライトの精密同位体分析を行う。理論研究では、原始太陽系円盤の形成から惑星形成まで、同位体不均質がどのように変化したか、その素過程を明らかにし、新たな太陽系進化モデルを構築する。
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研究実績の概要 |
【隕石研究①】CAIのCr-Ti-Ca同位体異常の分析を行った。形成後に熱溶融を被った粗粒CAI(CG)と異なり、凝縮時の情報を残す細粒CAI(FG)を集中的に分析した結果、FGのCr-Ti同位体組成はCGよりも大きく変動することが分かった。このことはFGが複数の場所/時間で形成したことを示唆する。Ca同位体組成については、48Caと43Caに富む2種類の端成分がCAI形成に寄与していることが明らかになった。Ca同位体組成とCAIの主成分化学組成に強い相関があることから、CAI形成領域では両端成分が中心星からの距離に従って不均一に分布していた可能性が示された。 【隕石研究②】CIコンドライトの分析を開始した。1-2mgのCIコンドライト20試料の元素存在度を測定した結果、Ca, Mn, P, REEといった元素の存在度が誤差の範囲を超えて大きく変動した。これは、母天体の水質変成で生じた二次鉱物の不均質分布を反映していると考えられる。 【理論研究①】分子雲から分子雲コアへの進化段階における同位体分布均質化を調べた。分子雲段階に対しては,第一ステップとして簡単な定式化を行い、基本的な性質を捉えた。フィラメント状分子雲から分子雲コアへの進化段階については具体的な数値シミュレーションを行い、定量的な結果を得た。 【理論研究②】木星が原始太陽系円盤において早期形成したとの仮説のもと、円盤ダスト進化計算を行い、NCおよびCC隕石のCr同位体濃度と隕石母天体の集積年代のトレンドを同時に再現しうる円盤モデルを特定した。 【理論研究③】原始惑星系円盤内のダストの酸素同位体交換およびシリケイトの結晶化について、ダストの運動のモンテカルロシミュレーションを行ない、酸素同位体交換ラインおよびシリケイト結晶化ラインの位置と幅を円盤パラメータの関数として求めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
隕石研究では、細粒CAIのCr-Ti-Ca同位体異常分析という、技術的にも困難な分析を実施した。FGのCr-Ti同位体組成がCGよりも大きく変動していること、CAIに48Caと43Caに富む2種類の端成分が寄与しているしていることなど、宇宙化学的に重要な結果を得ることができた。理論研究においても、分担者3名がそれぞれの研究を計画通りにすすめており、全体としておおむね順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
【隕石研究】昨年度に引き続き、CAIの同位体分析(特に40Ca)を実施する。得られたCr, Ti, Ca同位体データを解析し、論文を執筆・投稿する。さらに、アルミニウムに富むコンドリュール(ARC)のCrおよびTi同位体分析を行い、CAIとコンドリュールの形成プロセスに制約を与える。CIコンドライトに関しては、これまで1-3 mg程度の小試料20個について、元素存在度分析を終えた。今年度は試料数を増やすと同時に、C2未分類コンドライトTagish LakeおよびTardaの分析も行う。 【理論研究】 (1)星間雲から分子雲コアにいたる過程はいくつかの段階に分けられるが,各段階で同位体分布がどの程度均質化されるのかを定量的に求めることを目指している。今年度は特に,フィラメント状星間雲から分子雲コアの段階に対し定量的な分析を行う。 (2)これまでに開発してきた原始太陽系円盤の固体粒子の成長・移動シミュレーションモデルに、隕石母天体の材料となる固体粒子アグリゲイトへの高温凝縮物(CAIなど)の取り込みを新たに組み込み、隕石母天体のCr, Ti同位体組成が高温凝縮物の取り込みによってどのように決定されるかを明らかにする。 (3)昨年度に構築した、太陽系円盤における粒子の移流・拡散・ドリフト運動など考慮した理論モデルを使って、同位体異常を持つ円盤内物質の分布の進化を解析する。
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