研究課題/領域番号 |
23H00174
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研究種目 |
基盤研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
中区分21:電気電子工学およびその関連分野
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
山下 真司 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 教授 (40239968)
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研究分担者 |
セット ジ・イヨン 東京大学, 先端科学技術研究センター, 准教授 (20530827)
丸山 茂夫 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 教授 (90209700)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
47,450千円 (直接経費: 36,500千円、間接経費: 10,950千円)
2024年度: 15,600千円 (直接経費: 12,000千円、間接経費: 3,600千円)
2023年度: 19,110千円 (直接経費: 14,700千円、間接経費: 4,410千円)
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キーワード | デジタルフォトニクス / 低次元ナノマテリアル / 光非線形性 / 短パルスファイバレーザ / 光計測 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究ではこれまでの1次元/2次元ナノカーボンマテリアルを2次元半導体マテリアルに拡大した高信頼な低次元ナノマテリアルの可飽和吸収/光非線形性を最大限に利活用した可変・集積デバイス化を進めるとともに、2022年度までの基盤研究Sで発展させてきたデジタルフロンティア光計測を量子技術の導入によりさらに発展させたデジタルフォトニクス技術の確立を目指す。
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研究実績の概要 |
低次元ナノマテリアルデバイス作製については、ヘテロ構造ナノチューブ(CNT@BNNT)の中赤外波長(2.3μm)での可飽和吸収(SA)特性を測定し、通常のCNTとほぼ同じSA特性を持つことを見出した。また、テーパファイバ型CNT-SAの温度による特性変化を詳細に検討し、SA特性自体は大きくは変化しないが非飽和損失が変わることを見出した。 デジタルフォトニックファイバレーザについては、まずCNT-SAを用いた高繰り返し(783MHz) モード同期ファイバリングレーザの実現に成功した。これまでにCNT-SAによる10GHzの高繰り返し周波数は実現されているがファブリペロー(FP)共振器であり、リング共振器での小型化は難しくこれまでは100MHz程度がせいぜいであった。今回は新たな共振器デザインにより短共振器化が可能となっており、リングレーザとしては世界最高記録である。また、上述のテーパファイバ型CNT-SAを用いたモード同期ファイバリングレーザを試作し、温度変化によりモード同期特性を可変にできることを確かめた。また、Lyotフィルタを利用した高速な波長可変モード同期ファイバレーザの実現に成功した。 デジタルフォトニクス応用については、デジタルフォトニックファイバレーザとデジタル信号処理との組み合わせでセット・山下らのオリジナルな3次元光計測であるCAMPS法の更なる改善を進めた。また、分散チューニングSS-OCTにおいて圧縮センシングを適用することでデータ量が削減できることをシミュレーションと実験で検証している。さらに、光ファイバ分布センシングにも圧縮センシングが適用できることを見出し、シミュレーションによりその効果を確認した。また、FMCW光計測において相関領域スペクトル推定により分解能を向上できることを提案し、実験で確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
研究実績の概要に記した通り、本研究では当初の研究計画で予定していた研究の順調な進展があるのみならず、一部では想定以上に研究が進展しており、それらに加えて下記のような多数の新たな展開にもつながっている。 1.ヘテロ構造ナノチューブ(CNT@BNNT)の中赤外波長(2.3μm)での可飽和吸収(SA)特性の発見と精密な測定 2.温度可変テーパファイバ型CNT-SAの実現 3.世界最高の高繰り返しCNT-SAモード同期ファイバリングレーザの実現 4.Lyotフィルタを利用した高速な波長可変モード同期ファイバレーザの実現 5.光ファイバ分布センシングにも圧縮センシングが適用できることの発見 6.FMCW光計測において相関領域スペクトル推定により分解能を向上できることを提案 これらの本研究に関する昨年度の研究成果は、10件の学会誌論文、27件の国際会議発表、10件の国内学会発表として発表済または発表予定である。発表の中にはチュートリアル講演1件を含む招待講演5件も含まれており、本研究の注目度は極めて高いものと考えている。このように、本研究は当初の研究計画で予定していた研究の順調な進展があるのみならず、想定を超える多数の研究の進展と多数の予見しない新たな展開があり、期待以上の成果が見込まれると確信している。
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今後の研究の推進方策 |
低次元ナノマテリアルデバイス作製については、前年度に明らかにしたヘテロ構造ナノチューブ(CNT@BNNT)による中赤外波長帯可飽和吸収(SA)素子を試作し、高出力2.3μmモード同期ファイバレーザの実現を目指す。また、前年度から進めているテーパーファイバ型CNT-SAの温度による特性可変化について、CNTを分散するポリマー材料を変更することで特性可変範囲の更なる向上を行う。さらに、CNTおよびナノマテリアルは丸山が合成、もしくは協力者から提供してもらい、デバイス作成および特性測定を山下・セットが担当する。 デジタルフォトニックファイバレーザについては、前年度に実現した783MHzの繰り返し周波数を持つCNTモード同期ファイバリングレーザの更なる短共振器化による高繰り返し周波数化を図る。また、上述の温度可変SAによりパルス幅やチャープなどの特性が可変な受動モード同期ファイバレーザの研究を進め、特にデュアルコムファイバレーザの構成・特性の最適化を図ることで更なる高安定化・低雑音化を目指す。山下・セットが担当する。 デジタルフォトニクス集積化 については、可変SAを組み合わせてさまざまな波長帯で集積化可能な高繰り返しモード同期チップレーザの実現を目指す。山下・セットが協力者と連携しながら担当する。 デジタルフォトニクス応用については、デジタルフォトニックファイバレーザとデジタル信号処理との組み合わせでセット・山下らのオリジナルな3次元光計測であるCAMPS法の高度化を目指す。また、前年度から進めている光ファイバセンシングにおいて圧縮センシングによるデータ量の削減のシミュレーションをもとに実験で検証するとともに、量子技術の適用による高感度化を検討する。さらに、デュアルコムファイバレーザの計量・分光計測の研究を進める。セット・山下が担当する。
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