研究課題/領域番号 |
23H00188
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研究種目 |
基盤研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
中区分21:電気電子工学およびその関連分野
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
横山 士吉 九州大学, 先導物質化学研究所, 教授 (00359100)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
46,410千円 (直接経費: 35,700千円、間接経費: 10,710千円)
2024年度: 10,920千円 (直接経費: 8,400千円、間接経費: 2,520千円)
2023年度: 11,700千円 (直接経費: 9,000千円、間接経費: 2,700千円)
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キーワード | 電気光学 / 光変調器 / ポリマー / 進行波型電極 / 光信号伝送 / 高速伝送 / シリコン導波路 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、電気光学ポリマー変調器の作製と高速変調の研究を進め、変調器の小型化や高効率化において既存技術の延長では到達が困難な高速化を実現することを目標とする。未到達の高速変調を実現するには、原理的に介在する材料やデバイスの課題解決に取り組む必要がある。本研究では、シリコン導波路とポリマーを複合化したキャパシタ接合型スロットを考案し、これまで両立が困難であったポリマー変調器の集積化と超高速変調を実証する。本研究の革新的な材料とデバイス技術の研究を展開することで、将来の光ファイバ通信を支える鍵となり得る新デバイス技術の創生が期待できる。
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研究実績の概要 |
本研究の目的は、電気光学ポリマーが持つ優れた光学特性を生かして、既存技術の延長では到達が困難な信号伝送特性を実証することである。本課題では、シリコン導波路とポリマーを複合化したハイブリッド変調器を考案し、これまで両立が困難であったポリマー変調器の集積化と超高速変調の実験に取り組んでいるが、予測される変調帯域はシリコン導波路を電気回路として見たときの寄生抵抗と容量に制限される。これを解決するため誘電体膜を複合化させた変調器の設計と作製実験を行うこととしている。本年度は、基本構造となるシリコン導波路作製に注力して実験を進め、電気光学ポリマーと組み合わせたハイブリッドデバイスを作製し、変調の動作電圧と100Gbit/sレベルの高速信号伝送の試験を行った。シリコン光導波路回路の設計では、最終的にシリコンスロットと誘電体導波路を組み合わせたハイブリッド構造を計画しており、この電気的構成によって寄生抵抗の低減につなげ、変調効率の向上と広帯域化につなぐことを目指している。本年度は、光導波路回路の主要部となるシリコン導波路部の作製を進め、その結果スロット構造によるモード閉じ込め効果を使うことで半波長電圧が1V台の低電圧化を確認した。作製したデバイスの位相長は数ミリメートルであることから変調利得は1Vcm以下であることも確認できた。このような高効率な変調特性は、本研究グループで開発を進めてきたポリマー変調器と比べても10倍以上高い結果となる。また、光信号伝送実験に着手し100Gbit/sレベルの信号解析を進め、その結果は次年度に継続的に進める予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究計画のマイルストーンでは、研究実施2年度目に1V台の変調効率と50GHzの周波数応答性の確保、および高速信号伝送試験で128Gbaud信号生成を実証することをあげている。本年度に得られたデバイスは半波長電圧が1V台を有し、さらに最適化が進み低電圧動作が見込まれる。高周波数での信号損失を低減するシリコン導波路回路を開発することで、高速動作で1V動作変調の課題に取り組める状況となる。本年度の検討で、100Gbaud(シンボルレート)動作が確認できたことから50GHzの周波数応答性は確保できているといえる。このような広帯域領域での高効率変調は、本提案で計画するデバイス改良によって損失低減を実現することでさらに高まり、最終目標とする80GHz動作も実現可能と予測できる。以上の状況から、研究開発の浸食状況は計画通りである。
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今後の研究の推進方策 |
本研究のマイルストーンは2段階で構成しており、2年度目の到達目標では変調効率の最適化、周波数応答性、及び高速信号生成の実証をあげている。1年度目終了時点で、動作電圧特性や周波数応答性で一部の目標は到達見込みであり、今後、シリコン導波路回路の改良を行うための誘電体薄膜の形成や加工、その精度の検討を行うことで変調器動作の高効率化につながる見込みである。デバイス作製実験に加えて、高速信号伝送試験では信号復調を適正に行うためのデジタル・シグナル・プロセスが重要となってきている。100Gbaudレベルで適切な補正フィルタの有効性も確認しており、今後の高速伝送試験でも有効手段として活用する。このようにデバイス作製実験と信号処理技術を組み合わせることで、2年度目には次段階のマイルストーンの到達に向けた準備に入る予定である。
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