研究課題/領域番号 |
23H00198
|
研究種目 |
基盤研究(A)
|
配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
中区分22:土木工学およびその関連分野
|
研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
岡村 未対 愛媛大学, 理工学研究科(工学系), 教授 (50251624)
|
研究分担者 |
泉 典洋 北海道大学, 工学研究院, 教授 (10260530)
小野 耕平 愛媛大学, 理工学研究科(工学系), 講師 (30804166)
前田 健一 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (50271648)
全 邦釘 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 特任准教授 (60605955)
|
研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
|
配分額 *注記 |
36,660千円 (直接経費: 28,200千円、間接経費: 8,460千円)
2024年度: 9,750千円 (直接経費: 7,500千円、間接経費: 2,250千円)
2023年度: 15,470千円 (直接経費: 11,900千円、間接経費: 3,570千円)
|
キーワード | 河川堤防 / パイピング / 実験 / 相似則 / DEM / 模型実験 / 沈下 |
研究開始時の研究の概要 |
河川堤防の越水による破堤に対しては堤防表面を被覆し,粘り強い堤防とする対策が既に進められているが,パイピングによる破堤対策はほとんど進んでいない。 本研究では最新実験技術を駆使して実験の相似則を明らかにし,力学的に妥当な大型模型実験を系統的に実施してパイプの発生・進展,パイピング破堤に対する粘り強さのメカニズムを解明する。パイピング部を探査する技術については,表面形状の微細な変化を基にした探査法を,洪水中にリアルタイムで適用できる方法へと発展させる。これらをもって,洪水で破堤しない粘り強い河川堤防の合理的な設計および改築・対策技術の基礎を築く。
|
研究実績の概要 |
本研究では、河川堤防の洪水時パイピングメカニズムを解明し,模型実験の相似則を明らかにすることを目的の一つとしている。そのため,R5年度は力学的に相似な小型、中型、大型模型実験を装置を作成し、堤体のスケール効果を調べた。今年度は小型、中型模型実験により、パイプの発生・進展,パイピング破堤に及ぼす堤体スケール効果を調べると共に、対策止水矢板対策による粘り強さのメカニズムを実験で調べた。小・中型模型実験により、パイプ内流れが掃流の場合のパイピング進展水位とパイプ内の圧力分布、砂粒子の移動メカニズムについて、詳細なデータが取得できた。また、パイピング進展中にパイプの3次元形状をリアルタイムでする新たな手法を開発し、その制度を確認した。さらに、大型実験装置については、実験棟を建設し装置を設計製作、設置しR6年度から実験を実施できる準備を整えた。 次に、パイピングの進展予測法の開発を行った。これは流れの状態(層流、乱流)を考慮し、パイプ内の浸食、パイプ進展条件を予測できる方法であり、小・中型模型実験の詳細な観測結果を基に予測法妥当性の検証を行った。小・中型模型のスケールは3倍異なるものであり、この範囲においては、発生するパイプの断面の大きさ、パイプ内の圧力分布、パイプが進展する水位をうまく予測することができた。 パイピング部を探査する技術については,表面形状の微細な変化を基にした探査法を,洪水中にリアルタイムで適用できる方法へと発展させることが目的である。そのために、まずは実際の堤防の表面形状の経年変化と内部変状の関係を取得するために、那賀川、肱川、吉野川での観測を継続し、データを蓄積した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の根幹をなすパイプ進展メカニズムの解明については,小型および中型実験装置を用いたスケールの異なる実験をほぼ計画通りに実施し,堤防のスケール効果を含むメカニズム解明に資する重要な成果を得ることができた。また,新たに開発したパイプのリアルタイム形状計測法も,使用するラインレーザーの出力と入射角を調整することにより、砂粒子以上の精度で計測できる,精度の高いものとすることができ,来年度以降の実験に大いに役立つものとすることができた。さらに、パイピング予測法についても,パイプ内流れが小型・中型模型の層流の場合についてはその妥当性が確認できるなど,順調に進展したが,限界シールズ数の計測は非常に細く蛇行して位置が定まらないパイプ内の圧力分布の計測に手間どったためデータ数がやや足りず、さらなる実験を実施する必要があることが明らかとなった。 本研究において大型実験装置は,堤体寸法が減少に及ぼす影響と,パイプ内流れが乱流の場合の影響を調べるための実験データを取得することを目的とした,研究の根幹をなす重要なものである。1年目はその準備として,大型装置を収容する実験建屋の用地確保から認可・建設,そして装置の設計製作と設置を極めて順調に進めることができ,次年度始めから実験ができるよう準備を整えることができた。 このように,R5年度の研究を概ね計画通りに進めることができた。
|
今後の研究の推進方策 |
パイピング現象の相似則解明のために、R5年度に製作した大型装置を含む、スケールの10倍異なる幾何的に相似な模型実験装置を用い、系統的に実験を実施する。R6年度は、パイプ部断面の径と砂粒子径の比(D/d)およびパイプ径と堤体幅比(D/L)の2つの無次元パラメータの影響を調べる実験を中心に行う。また、パイプ内流れ(層流/乱流)の影響を調べるために、粒径が大きな粗砂あるいは細礫を使用することで乱流状態の、細砂を使うこと層流状態を再現した実験を行う。大型実験は1か月に2ケース程度しかできないため、R6年度は乱流状態を再現できる粗砂の実験から進める。 大型実験でも小型・中型実験と同様に透明アクリル堤体を用い,パイプ内の水の流れ,パイプ先端部の崩壊・進展,孔壁の侵食とパイプ内土砂運搬の現象を詳細に観察する。高速度カメラでパイプ内を撮影し,流速をPIV解析で測定すると共に,R5年度までに開発したラインレーザー法を大型実験にも適用できるよう改良し,パイプの3D形状をパイプの進展とともに逐次計測する。特に大型実験ではパイプの断面寸法が大きく、現象の進行は遅くなるため,パイプせん断部の壁面崩壊やパイプ側面の浸食状況の観察にも力を入れ、観測結果の解析によりパイピング進展メカニズムの解明に繋げたいと考えている。 粘り強い堤防にするための対策工については、川表側の止水矢板、浅い矢板や礫によるバリアー層などの効果を小型・中型模型で調べ,予測解析法による検証を行う。 堤体表面形状からリアルタイムでパイピング部を特定する方法の開発については、毎年のように噴砂が発生する堤防での表面形状観測を継続するとともに、強風時や強雨時にUAVを飛行させ、表面形状データ取得における問題点抽出を試みる。
|