研究課題/領域番号 |
23H00232
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研究種目 |
基盤研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
中区分26:材料工学およびその関連分野
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
関 剛斎 東北大学, 金属材料研究所, 教授 (40579611)
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研究分担者 |
山根 結太 東北大学, 学際科学フロンティア研究所, 助教 (30586863)
輕部 修太郎 京都大学, 化学研究所, 特定准教授 (30802657)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
46,540千円 (直接経費: 35,800千円、間接経費: 10,740千円)
2024年度: 16,120千円 (直接経費: 12,400千円、間接経費: 3,720千円)
2023年度: 10,010千円 (直接経費: 7,700千円、間接経費: 2,310千円)
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キーワード | スピントロニクス / スピン流 / ナノ磁性 / 磁気秩序 / 反対称交換相互作用 |
研究開始時の研究の概要 |
スピントロニクスは、強磁性体や反強磁性体、ヘリカル磁性体など、様々な磁気モーメントの配置(磁気秩序)を有する材料を適材適所に用いることで機能性を引き出してきた。しかしながら、デバイス動作のキーとなる磁気秩序は材料の本質的特徴であるため、バルクの磁気秩序を任意に操作することは難しい。そこで本研究課題では、磁性多層膜の磁性層間に働く長距離の交換相互作用に着目し、対称および反対称な層間交換結合を活用することで、ノンコリニア磁気構造を含む多彩な3次元磁気秩序を人工創製することに挑戦する。磁気秩序とスピン流との相関を明らかにし、革新的情報処理技術に資する材料と要素技術の実現を目指す。
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研究実績の概要 |
本研究課題では、磁性多層膜の磁性層間に働く長距離の交換相互作用に着目し、強磁性的・反強磁性的秩序をもたらす対称な層間交換結合に加え、反対称な層間の交換相互作用を活用することで、ノンコリニア磁気構造を含む多彩な3次元磁気秩序を人工創製する。具体的には、[研究項目(1)]人工的な反対称交換相互作用の機構の究明、[研究項目(2)]膜面内および膜積層方向におけるノンコリニア磁気秩序の制御、[研究項目(3)]人工ノンコリニア磁気秩序のスピントルク磁化操作とスピン流創出、および[研究項目(4)]3次元集積化と情報処理技術への展開に取り組む。 当該年度では、まず(1)に関して、反対称交換相互作用を精度良く評価するための測定技術の改善に取り組み、これまでに抱えていた技術的問題点を解決した。そして、垂直磁化かつ反強磁性結合を有するPt/Co/Ir/Co/Pt薄膜をサファイア基板上にエピタキシャル成長させる条件を明らかにし、断面透過電子顕微鏡観察による構造解析や磁気特性評価を経て、エピタキシャル薄膜と多結晶薄膜とで反対称交換相互作用の違いについて検討を行った。(2)に関しては、MgO/CoFeB/Ta/CoFeB/MgOの系で反対称交換相互作用を誘導するための薄膜作製条件を探索し、当該積層構造が垂直磁化を有するための条件を明らかにした。さらに、(4)に関して研究計画の前倒しを行い、磁壁移動デバイスにおける反対称交換相互作用について再測定を行うとともに、理論と比較することで機構を理解するための議論を進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
反対称交換相互作用を評価するための測定技術の改善、エピタキシャル成長の実現とその試料を用いた薄膜の結晶配向と反対称交換相互作用の大きさとの相関に関する知見、ノンコリニア磁気秩序の制御に向けた新しい材料系の作製など、当該年度に予定していた[研究項目(1)]および[研究項目(2)]について順調に研究を遂行できている。加えて、[研究項目(4)]について前倒しで検討を開始している。したがって、当該年度の研究実施内容は計画を概ね達成するものであり、研究は順調に進展しているものと評価される。
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今後の研究の推進方策 |
[研究項目(1)]および[研究項目(2)]に加えて、[研究項目(3)]に関しても着手する。 (1)に関しては、傾斜膜作製技術および微細加工技術を駆使し、構造の非対称性を設計・制御を試み、強磁性F1層/非磁性N層/強磁性F2層を基本構造として薄膜試料の作製および評価を行う。具体的には、斜入射による蒸着や磁場中アニールが反対称交換相互作用に与える影響を引き続き調べる。また、非磁性N層の組成を傾斜させた層間交換結合膜や局所イオン照射によって面内に特性を変調させた試料を作製し評価を行うことで、反対称交換相互作用の増強を検討する。 (2)については、昨年度から引き続き、反対称交換相互作用や層間交換結合を活用して磁区構造や磁化方向を制御する手段を検討する。その結果と (1)で得られた知見を組み合わせて、垂直磁化と面内磁化を組み合わせたT型構造の作製へと展開させる。 (3)に関しては、(2)で得られた構造に対し、スピン流を使った磁化反転について検討を開始する。 上記の実験と並行して、マクロスピンモデルやマイクロマグネティクスシミュレーション等の数値計算により反対称層間交換相互作用が存在する系での磁化反転過程やダイナミクスに関する検討を開始し、得られた計算結果を実験における層厚設計などにフィードバックさせることで効率的に研究を推進する。
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