研究課題/領域番号 |
23H00237
|
研究種目 |
基盤研究(A)
|
配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
中区分26:材料工学およびその関連分野
|
研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
土山 聡宏 九州大学, 工学研究院, 教授 (40315106)
|
研究分担者 |
増村 拓朗 九州大学, 工学研究院, 准教授 (40804688)
奥山 彫夢 木更津工業高等専門学校, 電子制御工学科, 准教授 (50804655)
諸岡 聡 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 原子力科学研究所 物質科学研究センター, 研究副主幹 (10534422)
|
研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
|
配分額 *注記 |
47,320千円 (直接経費: 36,400千円、間接経費: 10,920千円)
2024年度: 24,700千円 (直接経費: 19,000千円、間接経費: 5,700千円)
2023年度: 18,590千円 (直接経費: 14,300千円、間接経費: 4,290千円)
|
キーワード | 結晶粒微細化 / 高強度 / 組織制御 / マルテンサイト / 元素分配 / コア-シェル組織 / 複相鋼 / TRIP効果 / 残留オーステナイト |
研究開始時の研究の概要 |
金属材料を強化するために「コア-シェル構造組織」の利用を試みる。このような第二相組織の制御によって、それを起点とする延性破壊が抑制されれば、均一伸びと局部伸びのトレード・オフ関係を打破し、高強度と高加工性を兼ね備えた新しい構造材料の創成が可能となる。本申請ではとくに、「部分マルテンサイト変態と二相域焼鈍からなる二段熱処理法」を発展させると共に、特性発現の機構を実験的・理論的に解明することを目指す。
|
研究実績の概要 |
1.コア-シェル組織を微細化・等軸化するには、IQ処理前のオーステナイト粒径を微細化することが有効であると考えられたため、まず対象材料であるFe-5%Mn-0.1%C合金を焼入後、種々の加工率で冷間圧延し、その後のオーステナイト化処理で生成する結晶粒径の変化を調査した。その結果、加工率が上昇するに伴い、マルテンサイト鋼の逆変態時に生じるオーステナイトメモリーが徐々に抑制され、30%以上の加工で結晶方位がランダム化し、得られる結晶粒径が50μmから5μmまで微細化することを確認した。それを初期組織として、続くIQ処理ならびにIA処理を行なった後に焼入れを行なった結果、ねらい通りの等軸で微細なコア-シェル組織が形成されることを明らかにした。 2.ナノDIC解析については、まずは従来のコア-シェル組織鋼に本手法を適用し、(コアシェル組織/母相フェライト)界面近傍の母相側の極微小な領域で優先的に塑性変形が生じていることを確認した。ただし、厚さ数十ナノメートルのシェル部での優先的塑性変形を観察するには、本手法ではFE-SEMの解像度的に難しいことが判明した。 3.まずは従来のコア-シェル組織鋼を用いて中性子線その場応力測定法を適用し、マルテンサイトとオーステナイト間の応力分配挙動を捉えることに成功した。その結果より、外力が約600 MPaに達したときにオーステナイト(シェル部)が塑性変形を開始することを明らかにした。 4.CP-FEMでは等軸コア-シェル組織近傍での塑性変形挙動や転位組織発達についてシミュレーションを行なった結果、オーステナイト部が塑性変形することで母相界面に生じる極大応力が緩和される傾向を再現することに成功した。同時に、母相部における塑性ひずみの不均一性もコア-シェル組織によって改善されることが確認された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定通り、変態前の結晶粒径を微細化することによりコア-シェル組織を微細化および等軸化させることに成功している。とくに結晶粒の微細化の機構に関しては、結晶学的な考察を行なうことで論文として発表することもできた。優れた機械的性質を引き出すには、今後熱処理条件によって相比の最適化や草案訂正の制御が必要になるが、すでにDP鋼を上回る強度-伸びバランスは得られてており材料創製に関しては順調に進捗していると言える。解析の手法として利用する(1)ナノDIC解析、(2)中性子線その場応力測定、(3)CP-FEMについても手法は既に確立されており、目標とするデータも出始めている。とくに計算手法である(3)については順調に成果が得られており、等軸状コア-シェル組織の有用性を明確に証明することができている。
|
今後の研究の推進方策 |
令和6年度は、コア-シェル組織材の創製において適正な熱処理条件を見出すことが最も重要な課題となる。現状では、最終の焼入時に生成するマルテンサイト量が多すぎるため、強度は高いが延性が低く、コア-シェル組織の利点が十分に引き出せていない。IQ処理時点での未変態オーステナイト量を減じ、フレッシュマルテンサイトコア量の低減と残留オーステナイトシェル部の安定化を目指す。上記にも示した(1)~(3)の組織解析については、最適な対象材がなければ先に進めることができないので、上記の材料創製に最も力を入れて進める予定である。
|