研究課題/領域番号 |
23H00239
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研究種目 |
基盤研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
中区分26:材料工学およびその関連分野
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
野口 祐二 熊本大学, 半導体・デジタル研究教育機構, 教授 (60293255)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
46,800千円 (直接経費: 36,000千円、間接経費: 10,800千円)
2024年度: 10,140千円 (直接経費: 7,800千円、間接経費: 2,340千円)
2023年度: 17,940千円 (直接経費: 13,800千円、間接経費: 4,140千円)
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キーワード | 強誘電体 / 分極 / 格子欠陥 / フェリ誘電体 / 結晶構造 / 誘電率 / 相転移 / 反強誘電体 |
研究開始時の研究の概要 |
日本の総輸出額(約70兆円)の1/4を部品が占めていてる.中でも、あらゆる電子機器に積層セラミックスコンデンサ(MLCC)が機器の安定動作に不可欠な役割を果たしている. 現行のMLCCにおいて,比誘電率が2-3千を持つBaTiO3が使用されている.しかし,従来技術の延長では,今後の市場ニーズに応えることは難しく,新材料開発などのパラダイムシフトが必要であることが,電子部品業界における共通認識となっている.本研究では、世界に先駆けて我々が発見したフェリ誘電体の分極電場応答を利用した材料設計指針を確立し、次世代コンデンサをはじめとする新規電子デバイスを創製する.
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研究実績の概要 |
本研究では、世界に先駆けて我々が発見したフェリ誘電体の分極電場応答を利用した材料設計指針を確立し、次世代コンデンサをはじめとする新規電子デバイスを創製することを目的とする.2023年度は,チタン酸ビスマスナトリウム(BNT)とチタン酸バリウム(BT)の固溶体において,フェリ誘電性を示す組成領域を解明し,BNT-BT系の相図の全貌を解明した。具体的には、電場の印加により不可逆な相転移を示す領域があるため、電場印加前と電場印加後のそれぞれの相図について詳細に調査した。 電場印加前の相図は、次の特徴を持つ:BNTリッチ領域では菱面体晶R3c相が、BTリッチ領域では正方晶P4mm領域がある;R3c相とP4mm相を橋渡しするフェリ誘電P4bm相が広い領域で存在する。電場印加後の相図は、次の特徴を持つ:フェリ誘電P4bmの領域が顕著に狭くなる;Aサイト空孔量がゼロの組成では、P4bm相は消失する。Aサイト空孔量が増えると、P4bm相の領域が拡大する。 電場印加後の相図において、フェリ誘電P4bm相であるセラミックスは、電場印加により可逆な電場誘起相転移を示す。電場を印加するとフェリ誘電P4bm相から強誘電相(R3cもしくはP4mm相)へ相転移し、電場強度を小さくするとフェリ誘電相へ逆転移する。この可逆な電場誘起相転移を利用することで、非常に大きな実効比誘電率が得られることが期待される。 電場印加後のセラミック表面の電極をウェットエッチングにより除去したのちに、電場印加領域の構造解析を行うことで、生成相を解析した。このように慎重に相図を調査することにより、BNT-BT系の相図の全貌を解明した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2023年度は,BNT-BT系の相図の全貌を解明することを目的として、本プロジェクトを推進した。その結果、電場印加前と電場印加後の組成相図を解明するに至った。開始当初は、粉末構造解析により組成相図の調査を行った。しかし、組成相境界近傍では、同一組成であっても、粉末と焼結体セラミックスでは生成相が異なることが判明した。また、セラミックス表面の機械ダメージ層と、その層を除去したフレッシュな表面では、生成相が異なることも判明した。したがって、組成相図を調査するにあたり、焼結体セラミックスを対象として、機械ダメージ層をエッチングにより除去した試料を対象として解析した。加えて、電場の印加により不可逆な相転移を起こす組成領域があることも判明した。そのため、電場印加後のセラミック表面の電極をウェットエッチングにより除去したのちに、電場印加領域の構造解析を行うことで、生成相を解析した。このように慎重に相図を調査することにより、BNT-BT系の相図の全貌を解明し、当初の目的をほぼ達成することができた。
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今後の研究の推進方策 |
BNT-BT系セラミックスの誘電特性の調査を進めるとともに、BNTとチタン酸ビスマスカリウム(BKT)の固溶体において,フェリ誘電性を示す組成領域を解明し,BNT-BKT系の相図の全貌を明らかにする。現在までにBNT- BKT系において,BNTリッチ側では菱面体晶の強誘電相(空間群R3c)が,BKTリッチ側では正方晶の強誘電相(空間群P4mm)が現れること,またR3c相とP4mm相の間に,正方晶のフェリ誘電相(空間群P4bm)が存在することが明らかになっている。さらに,これらの生成相には,BKT組成xだけでなく,ペロブスカイトのAサイト空孔量も強く影響することが判明している。今後は,xとAサイト空孔量を変数とする二次元相図を解明する。また,フェリ誘電性を示す試料は,次の二種類に大別される:①電場を印加すると,強誘電相(空間群P4mm)に相転移して,ゼロ電場においてもP4mm相のままである不可逆な電場誘起相転移を示す試料,②電場を印加すると強誘電相(空間群P4mm)に相転移して,電場をオフにするとフェリ誘電P4bm相に戻る可逆な電場誘起相転移を示す試料。このため,電場印加前と後の二次元相図を解明し,フェリ誘電体の材料設計指針を構築する。
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