研究課題/領域番号 |
23H00241
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研究種目 |
基盤研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
中区分26:材料工学およびその関連分野
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研究機関 | 一般財団法人ファインセラミックスセンター |
研究代表者 |
小林 俊介 一般財団法人ファインセラミックスセンター, その他部局等, 主任研究員 (60714623)
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研究分担者 |
仲山 啓 一般財団法人ファインセラミックスセンター, その他部局等, 上級研究員 (30732193)
野村 優貴 一般財団法人ファインセラミックスセンター, その他部局等, 上級研究員 (60970126)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
48,880千円 (直接経費: 37,600千円、間接経費: 11,280千円)
2024年度: 7,540千円 (直接経費: 5,800千円、間接経費: 1,740千円)
2023年度: 33,800千円 (直接経費: 26,000千円、間接経費: 7,800千円)
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キーワード | 電子顕微鏡 / その場観察 / 固固界面 / Liイオン二次電池 / 全固体電池 |
研究開始時の研究の概要 |
全固体電池を構成する固体電解質と固体活物質との界面 (固固界面)において、Liイオンが通過する際の阻害要因や劣化現象を直接観察することにより、Liイオンが容易に移動でき劣化の少ない固固界面の設計指針獲得が可能となる。そこで、本研究では、実空間上で高い空間分解能が求められる固固界面でのLiイオン移動計測を実現させるため、結晶方位を制御した活物質を用いたモデル全固体電池を作製する。そして、高分解能電子顕微鏡法を用いて固固界面を通過する動的なLiイオンの計測技術確立、そして、本計測から得られる明確な根拠に基づく固固界面の設計指針獲得を目指す。
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研究実績の概要 |
全固体電池において固体電解質と固体活物質との界面 (固固界面) の設計が重要となる。本研究では、実空間上で高い空間分解能が求められる固固界面でのLiイオン移動計測を高分解能電子顕微鏡法を通して実現し、本計測から得られる明確な根拠に基づく固固界面の設計指針獲得を目指す。 初年度は透過型電子顕微鏡内部で動作可能なモデル電池作製とナノスケールから原子分解能レベルでのLiイオンダイナミクス計測技術確立を目指して下記の2項目を主として実施した。 全固体モデル電池:電子顕微鏡内部で充放電可能な全固体モデル電池作製技術の構築を実施した。全固体電池を集束イオンビーム装置を用いて薄片化し、透過型電子顕微鏡内部に導入できるサイズに加工する。ここで、負極にはLi4Ti5O12, 電解質には硫化物系固体電解質、また、正極活物質には層状系材料などを用いた。この作製したモデル電池評価を実施するために高性能電気化学測定システムを導入し、特殊電圧印加ホルダーを用い微小全固体モデル電池の動作検証を実施した。そして、全固体モデル電池を電子顕微鏡鏡筒内部において動作させることに成功した。 Liイオン移動計測技術:Liイオンは電極活物質内部を1秒間で約2 nm移動する。つまり、数秒に1フレーム以上の速度でLi組成マップを取得することでナノスケールでのLiイオン移動計測が可能となる。ここでLiイオン分布を計測するために重要な要素技術となるのが電子エネルギー損失分光(EELS)法である。この計測速度を従来より高速化するため、高速にEELSマップを連続取得するシステムを構築した。また、挑戦的な研究課題として設定した原子分解能レベルにおけるLiイオン移動計測技術確立も平行して進め、モデル材料において原子分解能レベルでLiイオン移動に伴う結晶構造変化の取得に成功してきている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
透過型電子顕微鏡内部で動作可能な全固体モデル電池作製技術を確立した。また、電子エネルギー損失分光法を用いて5秒に1フレームの速度でスペクトルマップを連続取得するシステムを構築した。そして、得られたスペクトルデータからLi組成に起因する情報を抽出することでナノスケールにおいて活物質内部におけるLi移動計測が可能となりつつある状況である。また、モデル材料を用いた原子分解能レベルでのLiイオン移動計測技術においても進展があり、Liイオン移動に伴う結晶構造変化の取得に成功してきている。以上より本研究はおおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
初年度において確立した技術を応用・高度化し、固固界面でのLiイオン移動計測の実現に取り組む。具体的には方位制御を行った単結晶活物質を用いたモデル電池作製とナノスケールから原子分解能レベルでのLiイオン計測技術の高度化に取り組む。 全固体単結晶モデル電池:一般的な電極活物質粒子の代わりに方位制御を行った単結晶活物質を用いた全固体電池の作製技術を確立する。方位制御を行った活物質を用いることにより、活物質内部や固固界面での精緻なLiイオン移動計測が可能となる。 Liイオン移動計測技術高度化:電子エネルギー損失分光法によるLiイオン分布計測の高度化、すなわち、より高速にスペクトルマップを取得できるシステムを構築し、高い時間分解能でのLi移動を計測する技術を確立する。そして、本研究課題の重要なテーマである原子分解能レベルでのLiイオン移動計測の実現を目指す。昨年度、原子分解能レベルでLiイオン移動に伴う結晶構造変化の取得に成功してきている。今年度においては、この計測手法をさらに発展させ活物質内部を移動するLiイオンを捉えるために必要なフレームレートでSTEM像を取得する計測条件確立を目指す。
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