研究課題/領域番号 |
23H00251
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研究種目 |
基盤研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
中区分28:ナノマイクロ科学およびその関連分野
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
平野 愛弓 東北大学, 電気通信研究所, 教授 (80339241)
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研究分担者 |
小宮 麻希 東北大学, 電気通信研究所, 特任助教 (00826274)
山本 英明 東北大学, 電気通信研究所, 准教授 (10552036)
但木 大介 東北大学, 電気通信研究所, 助教 (30794226)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
47,190千円 (直接経費: 36,300千円、間接経費: 10,890千円)
2024年度: 14,560千円 (直接経費: 11,200千円、間接経費: 3,360千円)
2023年度: 18,070千円 (直接経費: 13,900千円、間接経費: 4,170千円)
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キーワード | 膜平行電圧 / 膜タンパク質 / イオンチャネル / 細胞膜 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では,“膜平行電圧・電界“という新パラダイムに基づいて,膜タンパク質のための新規機能計測場を創出する.細胞膜における電気現象は,細胞膜越しの電位差を制御する電圧固定法によって計測されてきた.本研究では,膜平行電圧の導入によって初めて見える膜タンパク質機能も存在するのではないかとの仮説に基づき,膜平行電界の存在とイオンチャネルに対する効果を実証する.同時に,膜平行電圧の作用機構や薬物スクリーニング系への展開可能性についても検討し,細胞膜科学の新学理の構築に計測手法の観点から貢献する.
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研究実績の概要 |
細胞膜内外の電位差である膜電位は,細胞膜の基本特性の一つである.イオンチャネル等の膜タンパク質の実験的な機能解析は,膜貫通電位を固定した際に生じるチャネル電流を記録する電圧固定法によって行われてきた.我々は,従来の膜貫通電圧に加えて,膜平行電圧という新機軸を導入することを着想し,これまでに膜平行電圧が電位依存性Naチャネル電流の変調を引き起こすことを報告してきた(Faraday Discuss., 2022; Membranes, 2022).しかし,膜平行電圧の印加からチャネル電流変調に至る機構は不明であり,その発展の障壁となっていた.2023年度は,膜平行電圧の作用機構を調べるための種々の観測系を構築し,膜物性に及ぼす膜平行電圧の効果を定量的に評価し,その作用機構の概要を明らかにした(投稿準備中).一方,1分子レベルのチャネル電流は数pA程度と非常に小さく,ノイズ電流との識別が難しいため,膜平行電圧による単一チャネル電流の変調作用を数値化することは極めて困難であった.そこで,ノイズを含む単一チャネル電流をイオンチャネルの開・閉の2状態に分類する適応的解析方法(AI2)を開発し,新規解析法として提案した(Biophys. J., 2023).AI2は,従来の解析手法に比べて低S/Nデータへの適応性が高く,実チャネルデータに対する解析能力が著しく向上していた.これを用いて,膜平行電圧のチャネル電流変調作用の定量化にも成功した.一方,イオンチャネルは神経信号伝達におけるキープレイヤーでもあるため,培養神経細胞を対象とした研究も並行して進めている.2023年度は,大脳皮質を特徴づけるモジュール構造をもつ培養神経細胞回路を構築し(Sci. Adv., 2023),神経細胞が汎化フィルターとして機能することを報告した(PNAS, 2023).
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の主テーマである膜平行電圧の実証とその機構解明について,種々の膜物性観測系を構築して解析を進めており,その作用メカニズムを解明しつつある(論文執筆中).膜平行電圧によるチャネル電流変調作用の定量化については当初は極めて困難であったが,ノイズを含む単一チャネル電流データを開・閉の2状態に分類する適応的解析方法(AI2)の開発により,これも達成した.AI2については,成果の論文発表に加えて,アルゴリズムの性能評価のために作成した擬似チャネルデータと解析プログラムを研究データリポジトリZenodo上で公開しており,オープンサイエンスの観点からも貢献している.また,イオンチャネルがキープレイヤーとして機能している神経信号伝達現象を対象とした研究も並行して進めているが,こちらにおいても論文成果を挙げており,初年度として順調に進展していると言える.
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今後の研究の推進方策 |
本年度に引き続き,膜平行電圧の実証とその機構解明を進めるとともに,その生理学的意義付けや新規計測基軸としての展開可能性についても検討する.また,膜平行電圧系の汎用性を高めるため,電極寿命の長い膜平行電圧電極チップの作製プロセスも確立する.
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