研究課題/領域番号 |
23H00274
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研究種目 |
基盤研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
中区分30:応用物理工学およびその関連分野
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
高原 淳一 大阪大学, 大学院工学研究科, 教授 (90273606)
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研究分担者 |
藤方 潤一 徳島大学, ポストLEDフォトニクス研究所, 教授 (00869159)
古部 昭広 徳島大学, ポストLEDフォトニクス研究所, 教授 (30357933)
岩崎 拓哉 国立研究開発法人物質・材料研究機構, ナノアーキテクトニクス材料研究センター, 独立研究者 (50814274)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
46,800千円 (直接経費: 36,000千円、間接経費: 10,800千円)
2024年度: 11,830千円 (直接経費: 9,100千円、間接経費: 2,730千円)
2023年度: 14,040千円 (直接経費: 10,800千円、間接経費: 3,240千円)
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キーワード | メタサーフェス / メタマテリアル / グラフェン / 完全吸収体 / ミー共振 |
研究開始時の研究の概要 |
グラフェンは高い移動度、透明で柔軟性・環境安定性にも優れ、波長に依存しない吸収係数と高速の緩和時間を併せ持ち、光エレクトロニクス応用も期待される。しかし、単層グラフェンの光吸収率は2.3%であり、光との相互作用が小さいことが問題である。 本研究は単層グラフェンにシリコン誘電体ミー共振器を近接させ、放射損失の小さなトロイダルダイポールの縮退臨界結合を利用して光とグラフェンとの相互作用を増強することにより、過飽和吸収などの非線形光学効果を増強することを目的とする。さらにこれを超高速かつ低消費エネルギーの光・光スイッチング素子に応用する。これにより縦型グラフェンフォトニクスへの道を拓く。
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研究実績の概要 |
単層グラフェンは電子デバイスだけでなく光デバイスとしての応用が期待される。しかし、単層グラフェンと光との相互作用は弱く、光吸収率は2.3%しかない。単層グラフェンの光吸収率をミー共振器アレイを用いて増強させるため、シリコンメタサーフェス・単層グラフェンのハイブリッド型素子を作製した。その結果、以下の結果を得た。
1)光通信波長1550nmにおいて、トロイダル電気双極子と磁気双極子の縮退臨界結合により完全吸収体となる中空型直方体ミー共振器のアレイ構造を設計した。本構造の作製においては、トロイダル電気双極子を効率よく励起させるため、通常の直方体ミー共振器にドーナツ状の中空穴をあける必要がある。このとき中空穴の設計サイズは210nmであり、微細加工プロセスで作製可能なサイズの範囲内に収まるようにすることができた。 2)スコッチテープによるピーリングによりグラファイトから単層グラフェンフレークを剥離し、PDMS(Poly DiMethylpolySiloxane)スタンプによる転写装置を用いて、上記のシリコンメタサーフェス上に単層グラフェンを担持させることに成功した。その後、ラマン散乱分光スペクトルによりグラフェンが単層であることを確認した。 3)六方晶系窒化ホウ素(hexagonal Boron Nitride: hBN)によりサンドイッチされた単層グラフェンにおいて、波長1550nmの光照射による光起電力の測定に成功した。この光起電力の原因が光熱起電力効果によることを解明した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
グラファイトから単層グラフェンフレークを剥離し、これをシリコンメタサーフェス上に転送して担持することに成功した。これにより、当初の計画通り素子を完成することができた。 しかし、既存のFT-IR顕微分光システムではカセグレン型対物レンズのために垂直方向のスペクトルの取得が困難であることがわかった。これを解決するために、近赤外分光器を備品として購入し、近赤外用対物レンズを用いて垂直吸収スペクトルを取得できる近赤外顕微分光システムを構築した。 また、波長1550nmにおいて単層グラフェンの光起電力効果を実験的に観測することができた。これは今後のシリコンメタサーフェスと単層グラフェンとのハイブリッド系における光検出実験の基礎となる成果といえる。 以上の結果より、おおむね順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
シリコンメタサーフェス上に単層グラフェンを担持することに成功したものの、まだグラフェンとミー共振器間の結合効果の確認には至っていない。これはグラフェンとメタサーフェスとの密着性が低いためであると推測される。密着性を向上させるため、アニーリング時間を現状の数分間程度から、1時間程度に長くする予定である。 また新しい展開として、メタサーフェス上にのせるナノ材料をグラフェンに限定せず、他の2次元ナノ材料である遷移金属ダイカルコゲナイド(TMDC)にも拡張する予定である。単原子層TMDCは半導体であり、高いエキシトン結合エネルギーをもつことが知られている。これによりメタサーフェスの光学機能性を高め、光デバイスへの応用をさらに拡張できると考えられる。
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