研究課題/領域番号 |
23H00284
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研究種目 |
基盤研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
中区分32:物理化学、機能物性化学およびその関連分野
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
佃 達哉 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 教授 (90262104)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
47,320千円 (直接経費: 36,400千円、間接経費: 10,920千円)
2024年度: 17,290千円 (直接経費: 13,300千円、間接経費: 3,990千円)
2023年度: 18,330千円 (直接経費: 14,100千円、間接経費: 4,230千円)
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キーワード | 金クラスター / 触媒作用 / 反応機構 / サイズ効果 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、まず、高分子保護魔法数金クラスター、表面が完全あるいは部分的に露出した配位子保護金クラスター、および固体担持金クラスターの精密合成技術を開発する。次に、それらの触媒性能や耐久性と構造の相関を評価することで、特異的な触媒作用の発現機構を解明し、触媒性能を制御するための指導原理を構築する。これらの取り組みを通して、狙った高い触媒性能と耐久性を併せ持つ金クラスター触媒の創製という最終目標へと繋げたい。
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研究実績の概要 |
本研究では、さまざまな形態の金クラスター触媒の精密合成技術を開発し、それらの触媒性能や耐久性と構造の相関を調査することで、特異的な触媒作用の発現機構を解明し、触媒性能を制御するための指導原理を構築することを目指している。本年度は、下記の成果を得た。 高分子保護金クラスター触媒:調製時の溶液のpHを制御することで、PVPで保護された新規の魔法数金クラスターAu69を得た。さらに、この新規金クラスターが、アルコールの空気酸化反応に対して既報のAu24やAu38よりも高い触媒活性を示すことを見出した。直径が数nmの金ナノ粒子が触媒活性を示さないことから、この結果は金クラスターが1~2 nmの領域の特定のサイズにおいて最大活性を示すことを表している。 担持金クラスター触媒:カーボン担体や金属酸化物担体上で、一部配位子を残存させたAu25及びAu102触媒を製作したところ、担体と残留配位子間の多点の静電相互作用によって耐久性の飛躍的な向上が見られた。この高い堅牢性を利用してヒドロキシルメチルフランの選択酸化に適用したところ、Au102の方がAu25よりも高い活性を示した。速度論的な解析によって、反応機構に対するサイズ効果を明らかにした。100量体以上の担持金クラスターを合成するために、前駆体となる新規チオラート保護金クラスターを複数合成することに成功した。 配位子保護金クラスター触媒:単結晶X線回折によってあらかじめ構造が規定された配位子保護金クラスターから、酸処理によってアルキニル配位子を選択的に脱離させ、特定の金原子を露出する方法を開発した。また、合金クラスターIrAu12の塩素配位子をヨウ素に置換することで、光触媒性能が劇的に向上することを見出した。Nヘテロ環状カルベンで保護されたAu13が二酸化炭素の電気化学還元に対して高い活性と堅牢性を示すことを見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
高分子保護金クラスター触媒と担持金クラスター触媒について、新規の魔法数クラスターの合成に成功し、金クラスターの酸化触媒活性が安定化の方法によらず1~2 nmの領域の特定のサイズにおいて最大となることを示す結果を得た。この興味深い結果は、クラスターサイズの増加とともに、活性を促進する効果と抑制する効果が拮抗していることを示唆しており、その現象に通底する機構を解明することは、学術的な意義が深い。さらに、構造規定された配位子保護金クラスターからの選択的配位子脱離過程の制御は、活性サイトが分子レベルで規定された究極のモデル触媒の創成につながる重要な一歩と捉えている。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、3種類の金クラスター触媒に対して、下記の方策に従って研究を推進する。 高分子保護金クラスター触媒:PVPで保護された魔法数金クラスターの特異的な安定性の起源を解明するために、これらをマトリックス支援レーザー脱離イオン化によって負イオンとして質量分析器に導入し、気相光電子分光によって電子構造を調べる。さらに、より大きな金クラスターの質量分析を可能とするマトリックスの開発に取り組む。 配位子保護金クラスター触媒:部分的にアルキニル配位子が脱離した配位子保護金クラスターの合成に成功したので、単結晶X回折による構造決定及び露出サイトを利用した選択的な触媒作用の探索をおこなう。理論計算も用いて、活性サイトでの反応機構や選択性の発現機構を明らかにする。 担持金クラスター触媒:配位子保護合金クラスターMAu12(dppe)5Cl2 (M = Au, Pd, Rh, Pt, Ir)を前駆体としてMAu12触媒の構築に成功したので、触媒反応における単原子ドープ効果の解明を進める。さらに、層状担体へのインターカレーションや金属有機構造体に取り込むことで堅牢性を向上させ、過酷な条件での触媒反応への適用範囲の拡張に取り組む。
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