研究課題/領域番号 |
23H00292
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研究種目 |
基盤研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
中区分32:物理化学、機能物性化学およびその関連分野
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
田原 太平 国立研究開発法人理化学研究所, 開拓研究本部, 主任研究員 (60217164)
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研究分担者 |
二本柳 聡史 国立研究開発法人理化学研究所, 開拓研究本部, 専任研究員 (30443972)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
47,320千円 (直接経費: 36,400千円、間接経費: 10,920千円)
2024年度: 15,600千円 (直接経費: 12,000千円、間接経費: 3,600千円)
2023年度: 16,120千円 (直接経費: 12,400千円、間接経費: 3,720千円)
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キーワード | 界面 / 非線形分光 / 超高速分光 / ダイナミクス / 光化学 |
研究開始時の研究の概要 |
我々は位相制御した界面選択的非線形分光を独自に開発し、さらにこれとフェムト秒光励起を組み合わせた時間分解測定を実現して液体界面の分子科学を大きく進めた。本研究では、これまでに開発した界面選択的なフェムト秒時間分解振動分光に加えて、新たに界面選択的なフェムト秒時間分解電子分光を開発し、ダイナミクスの観点から「液体界面の分子は溶液中の分子とどのように違い、またその違いが如何に界面特有な現象を引き起こしているのか」を解明する。具体的には、光の位相を検出する界面選択的非線形超高速分光を駆使/開発し、①液体界面の反応ダイナミクス観測への挑戦、②液体界面の振動ダイナミクス研究の深化、を実現する。
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研究実績の概要 |
2つのサブテーマについて以下の主たる成果を得た。 1.液体界面の反応ダイナミクス観測への挑戦 時間分解吸収分光は溶液中の反応ダイナミクス研究に最も広く用いられているが、これに直接対応する界面選択的な時間分解電子分光測定は実現されていなかった。我々は以前、可視吸収スペクトルに直接対応する界面選択的電子スペクトルを測定できるヘテロダイン検出電子和周波発生(HD-ESFG)分光を開発している。これにフェムト秒光励起を組み合わせて、時間分解吸収分光に対応する界面選択的な時間分解HD-ESFG分光のための装置を構築した。この装置を用いて実験を行い、溶液中で多くの研究が行われているマラカイトグリーンの空気/水界面での超高速電子緩和を、電子基底状態の電子遷移バンドのブリーチとリカバリーのスペクトル変化として観測することに成功した。 2.液体界面の振動ダイナミクス研究の深化 水には様々な強さの水素結合が共存し、OH伸縮振動バンドの幅は極めて広い。水素結合のダイナミクスは、赤外パルスでこの広いバンド幅の特定の振動数のOH伸縮振動を励起し、その後の変化を追跡することで調べられる。特に、振動励起で生じる振動励起状態の信号の減衰を観測することで、熱化信号などの影響のない、信頼あるOH伸縮の振動緩和時間(T1)のデータを得た。これにより、界面でも水素結合したOHのT1はバルク水中とほぼおなじ0.3ピコ秒であること、空気側に突き出たフリーOHは0.9ピコ秒程度で回転運動によって水素結合したOHに変換したのち振動緩和することが分かった。この得られた空気/水界面の振動緩和の全体像を論文としてまとめた。また、時間分解能90fsの干渉型2D HD-VSFGの装置を用い、空気/水界面のスペクトル拡散の研究を進め、空気/H2O界面について、バルク水は見られない励起振動数の違いによるスペクトル拡散の違いを観測した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
溶液中の反応ダイナミクス研究において最も広く用いられている時間分解吸収分光に直接対応する界面選択的時間分解電子分光の実現が本研究の大きな目標であったが、1年目においてすでにマラカイトグリーンの空気/水界面での超高速電子緩和を、電子基底状態の電子スペクトルの時間変化として観測することに成功した。これは、時間分解吸収分光スペクトルと直接対応する界面選択的時間分解電子スペクトル測定の初めての例である。
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今後の研究の推進方策 |
2つのサブテーマについて以下のようにそれぞれ研究を推進する。 1.液体界面の反応ダイナミクス観測への挑戦 以前開発した界面選択的電子スペクトルを測定できるHD-ESFG装置に光励起のためのフェムト秒光パルスを導入することで、時間分解HD-ESFG測定を世界で初めて実現した。この世界初の測定について論文化するとともに、時間分解HD-ESFG分光による液体界面の光化学反応の研究を開始し、短寿命反応種とそのダイナミクス観測を行う。まず、水和電子の生成過程を時間分解HD-ESFG分光で追跡することを試みる。 2.液体界面の振動ダイナミクス研究の深化 時間分解ヘテロダイン振動和周波発生(HD-VSFG)分光とその発展の二次元HD-VSFG分光を駆使して、水界面の振動緩和の解明研究をさらに進める。まず、空気/H2O界面のOH伸縮振動の振動緩和時間(T1)の研究の発展として開始した、同位体希釈水界面のT1決定の実験を完遂する。H2Oに対する実験から空気/水界面の水素結合OHの伸縮振動は変角振動の倍音へ分子内緩和することが示唆されたが、同位体希釈水の主たる種であるHODでは変角振動の倍音とOH伸縮振動の振動差が大きくなる。したがって、そのH2OとHODのT1時間を比較することで、空気/水界面の水のOH伸縮振動の振動緩和機構に対するさらなる理解が得られる。また、時間分解能90fsの干渉型2D HD-VSFGの装置を用いて、空気/水界面のスペクトル拡散の研究を進める。空気/H2O界面については、すでにバルク水は見られない励起振動数の違いによるスペクトル拡散の変化を観測しているが、この観測を与える水界面に特有なダイナミクスを解明するとともに、分子内/分子間振動結合の影響が押さえられる同位体希釈した水中でOH基の伸縮振動のスペクトル拡散の観測を進める。
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