研究課題/領域番号 |
23H00296
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研究種目 |
基盤研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
中区分33:有機化学およびその関連分野
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
大井 貴史 名古屋大学, 工学研究科(WPI), 教授 (80271708)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
47,060千円 (直接経費: 36,200千円、間接経費: 10,860千円)
2024年度: 15,210千円 (直接経費: 11,700千円、間接経費: 3,510千円)
2023年度: 16,640千円 (直接経費: 12,800千円、間接経費: 3,840千円)
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キーワード | 水素原子移動(HAT) / ラジカル / クロスカップリング / 飽和炭化水素 / 水素原子引き抜き / ラジカルーラジカルクロスカップリング / 脱水素 / 光触媒 / C-H結合 / 有機分子触媒 / 水素原子移動 |
研究開始時の研究の概要 |
結合の切断は、分子変換に欠かせない最も基本的な素過程である。炭素-ハロゲン(C-X)結合等の切断が容易な結合を利用する手法は分子変換を容易にするものの、適用できる基質が限定されるといったデメリットを生む。一方、有機分子に遍在するC-H結合の切断を起点とすれば、究極的にはあらゆる有機化合物を基質とする分子変換が可能になる。本研究では、2つの異なるC(sp3)-H結合の切断を伴うC-H/C-Hクロスカップリングを実現するための方法論を確立し、多様な化合物の自在変換に資する有機合成化学の開拓を目指す。
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研究実績の概要 |
チオール触媒による可逆的な水素原子引き抜き(HAT)反応を用いたアルキルラジカルの擬似的な長寿命化と不可逆的なHATを組み合わせる戦略に基づき、αアミノアルキルラジカルと環状アルケン間でのアクセプターレス脱水素型クロスカップリング反応の開発に成功し、方法論としての妥当性を実証した。その一方で、研究計画段階での懸念通り、既存のHAT触媒を組み合わせた戦略では適用可能な基質に明確な限界が存在することも明らかになり、適用範囲を拡張する上で新たな触媒開発の必要性が明確になった。 そこで、より広範な炭素-水素結合の切断を念頭に新奇双性イオン型触媒であるアクリジニウムアミデートを創製し、これが可視光照射下においてHAT能を示すことを、一般的なラジカル受容体であるオレフィンとの反応生成物を単離、同定することにより確認した。また、アミデート上の置換基に応じて反応性が変化することも見出しており、理論化学のグループとの協創研究により触媒の励起状態での振る舞いを詳細に明らかにした。しかし、この新奇触媒を用いた脱水素型クロスカップリングについては反応の進行が認められず、中間体であるアクリジンラジカルの還元力が低いため、十分なHAT能を有するものの脱水素化反応が進行しないことが原因の一つと考えられた。そのため、高いHAT能を保持しつつ、より高い還元力を有するアクリジニウムアミデートの開発に着手した。 脱水素型クロスカップリングへの応用には至っていないが、直接光励起型のHAT触媒として高い活性を発現するアクリジニウムアミデートの合成と物性および触媒機能についてプレプリント誌に発表した
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画通り、脱水素型ラジカル-ラジカルカップリングを制御するための方法論の妥当性を実証するとともに、新奇触媒の創製と触媒ライブラリーの構築に資する合成ルートの確立にも成功しているため。
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今後の研究の推進方策 |
アクリジニウムアミデートの触媒ライブラリーの拡張を図るとともに、基本骨格の異なるHAT触媒の開発に取り組む。これら触媒のHAT能と還元力の観点から構造活性相関を詳細に明らかにし、可逆的なHATを可能にする触媒と基質の構造に関する知見を集積する。これを基に、脱水素型ラジカル-ラジカルカップリングに最適な触媒の構造を体系的に調べ、反応の適用範囲の拡大につなげると同時に官能基許容性を検証し、複雑な構造を有する生理活性分子の直接的な変換反応への展開を目指す。
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