研究課題/領域番号 |
23H00301
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研究種目 |
基盤研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
中区分35:高分子、有機材料およびその関連分野
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
藪 浩 東北大学, 材料科学高等研究所, 教授 (40396255)
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研究分担者 |
中村 淳 電気通信大学, 大学院情報理工学研究科, 教授 (50277836)
熊谷 明哉 千葉工業大学, 工学部, 教授 (50568433)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
47,450千円 (直接経費: 36,500千円、間接経費: 10,950千円)
2024年度: 13,650千円 (直接経費: 10,500千円、間接経費: 3,150千円)
2023年度: 20,150千円 (直接経費: 15,500千円、間接経費: 4,650千円)
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キーワード | 電気化学触媒 / 金属錯体 / アザフタロシアニン / AZUL / 酸素還元反応 / 水電解 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究の目的は、独自に開発した金属錯体触媒を炭素上に吸着・自在配列することで、燃料電池や空気電池、水電解などの次世代エネルギーデバイスにおいて、白金などのレアメタル触媒を代替・凌駕する電極触媒の開発とその学理を構築することである。炭素上における金属アザフタロシアニン誘導体のエネルギー状態最適化と二次元配列制御により、各触媒および炭素担体のシナジーによる次世代の電気化学的エネルギー・物質変換デバイスに展開可能な電気化学触媒の新たなコンセプトを提示する。
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研究実績の概要 |
金属アザフタロシアニンを炭素に担持したAZapthalocyanine Unimolecular Layer (AZUL)触媒について、触媒の分子構造を制御し、可溶性官能基や電子供与性・電子吸引性など、様々な官能基を導入した誘導体を合成し、その酸素還元反応(Oxygen Reduction Reaction, ORR)触媒活性のpH依存性を回転リングディスク電極(Rotating Ring-Disc Electrode、RRDE)を用いて評価した。また、Density Function Theory (DFT)計算により、各触媒活性のpH依存性を予測し、アルカリ条件・酸性条件で非常に良い一致を得た。さらに、鉄アザフタロシアニンを炭素に担持したAZUL触媒を紙に塗工し、マグネシウムを負極として用いることで、塩水など身近な電解質を吸い上げることで発電する金属空気紙電池の作製に成功し、ウェアラブル酸素飽和度計やGPSセンサーの電源として機能することを明らかとした。具体的には、塩水を電解液として、セルの電流―電圧特性及び電流―出力性能を評価した結果、紙の密度が高い方が毛管力により塩水を吸い上げる能力が高い一方、電解液の保持量が少なく、抵抗が高いことから出力が低いことが判明した。また紙の密度が低い方が塩水を吸い上げる時間がかかる一方、セル出力が高いことを明らかとした。この結果、紙の密度を最適化することが金属空気紙電池の性能向上に重要であることが示された。最適化したセルでは1.8 Vの開放電圧と103mW/cm2の出力、968.2 Wh/kg(Mg)の容量を達成した。また、カーボンナノファイバー(CNF)を導電助剤として正極に混合することで、集電体を使わず、直接デバイスと接続できる金属空気紙電池も作製可能であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予定していた酸素還元反応(Oxygen Reduction Reaction, ORR)触媒活性のpH依存性を理論・実験の両方から明らかにすることができ、研究は概ね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
触媒分子が炭素とどの様な相互作用をしているか、またそれによって触媒分子の活性がどの様に変わるかはAZUL触媒の高い活性を理解する上で 重要な課題である。特に、吸着分子が炭素網面のどの場所に吸着するか、また、どの様な電子的な相互作用が存在するかは触媒分子活性を左右 する重要な情報である。 グラファイト基板(Highly Oriented Pyrolyzed Graphite, HOPGなど)上に触媒を塗布し、炭素上の触媒分子と担持炭素との相互作用を熊谷が持 つ電気化学プローブ顕微鏡技術や申請の紫外光電子分光(UPS)などにより実験的に明らかとする。理論計算結果と比較することで、AZUL触媒 の活性発現の原理を実験的・理論的に証明する。 合成した各触媒の特性に基づき、炭素網面上に異なる触媒を吸着・配列させることによる触媒活性の向上と多様な電気化学反応に対する触媒活 性の発現を検討する。具体的には、2種以上の金属AzPc分子を混合して炭素上に吸着させたタンデム型AZUL触媒を調製し、予測されたシナジェ ティックな触媒活性効果や特定の電気化学反応・素反応に関して触媒活性が得られるかを確認する。その上で、配列の影響を調べるために金属 AzPcを二次元に連結した分子を吸着、あるいはその場合成することで、炭素網面上に金属AzPcの二次元MOF状構造を形成し、その配列効果の検 証を現有のポテンショスタット等を用いて行う。合成物や配列の確認は現有のTEM-EDXや学内共通設備であるXPS、STEM-EDXなどの手法を用いて行う。
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