研究課題/領域番号 |
23H00304
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研究種目 |
基盤研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
中区分35:高分子、有機材料およびその関連分野
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
楊井 伸浩 九州大学, 工学研究院, 准教授 (90649740)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
47,320千円 (直接経費: 36,400千円、間接経費: 10,920千円)
2024年度: 10,660千円 (直接経費: 8,200千円、間接経費: 2,460千円)
2023年度: 16,640千円 (直接経費: 12,800千円、間接経費: 3,840千円)
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キーワード | 光物性 / フォトン・アップコンバージョン / 励起三重項 / シングレット・フィッション |
研究開始時の研究の概要 |
光励起状態にある複数分子が相互作用した多重励起子の中でも2つの励起三重項から成る三重項ペアは、低エネルギー光を高エネルギー光に変換するフォトン・アップコンバージョンなどの光エネルギー変換過程における重要な中間体である。これまでの理論的な研究により、三重項ぺアの構造やエネルギー準位がフォトン・アップコンバージョンのスピン選択則の制御において重要であること示唆された。本研究では分子間配向とエネルギー準位を制御した色素集積構造を構築し、多重励起子の精密な制御を行うことを目指す。これにより多重励起子が関わるフォトン・アップコンバージョンなどの光エネルギー変換過程を合理的に高効率化することに挑戦する。
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研究実績の概要 |
二つの励起三重項からなる三重項ペアは低エネルギー光を高エネルギー光に変換するフォトン・アップコンバージョンやその逆過程であるシングレット・フィッションの重要な中間体であり、本研究では三重項ペアの精密な制御を通じた光エネルギー変換過程の高効率化を目的としている。これまでの理論的な研究において三重項ペアの配向がフォトン・アップコンバージョンおよびシングレット・フィッションのスピン選択性の制御において重要であることが示唆されてきた。そこで本研究では色素間の配向を平行に制御できるダイマー分子を新規に設計、合成した。アントラセンなどの色素に複数のアルデヒド基を修飾し、ジアミン化合物との間のシッフ塩基形成を利用することで、高選択的かつ高収率でダイマー分子を合成することに成功した。得られたダイマー分子の構造解析より色素ユニット間が平行な配向に保たれていることを確認した。ポルフィリン誘導体を用いてアントラセンダイマーの三重項を増感したところ、溶液中においてフォトン・アップコンバージョン発光を確認でき、アップコンバージョン効率と分子間配向の関係について有用な知見を得た。更にペンタセンを色素ユニットに用いることで、ペンタセン間が並行に配向したペンタセンダイマーの合成にも成功した。得られたペンタセンダイマーの超高速過渡吸収分光より、高速なシングレット・フィッションが起こっていることが確認された。更にはペンタセンダイマーのESR測定より平行な配向を反映した副準位選択的な三重項ペアの生成を確認できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新規なダイマー分子の合成により、当初の計画通り三重項ペアの制御に必要な色素間の配向制御に成功した。更には得られた色素ユニットの配向を反映したフォトン・アップコンバージョンやシングレット・フィッションの特性が得られており、計画が順調に進展していると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
前年度に得られた合成戦略を一般化することで、より多様な色素構造や架橋構造のダイマー分子を系統的に合成し、物性評価を進めていく。得られたダイマー分子の過渡吸収測定や過渡ESR測定などを行うことで光励起後の三重項ペア形成過程を詳細に理解していく。得られた知見を基にダイマー構造を最適化し、フォトン・アップコンバージョンやシングレット・フィッション、及びそれらの協奏による遅延発光の機能化についても検討を進める。
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