研究課題/領域番号 |
23H00307
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研究種目 |
基盤研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
中区分35:高分子、有機材料およびその関連分野
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
瀧宮 和男 国立研究開発法人理化学研究所, 創発物性科学研究センター, グループディレクター (40263735)
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研究分担者 |
川畑 公輔 東北大学, 理学研究科, 准教授 (10710212)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
48,230千円 (直接経費: 37,100千円、間接経費: 11,130千円)
2024年度: 10,530千円 (直接経費: 8,100千円、間接経費: 2,430千円)
2023年度: 27,170千円 (直接経費: 20,900千円、間接経費: 6,270千円)
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キーワード | 有機半導体 / 結晶構造シミュレーション / 結晶構造 / 電界効果トランジスタ / ペリ縮合多環芳香族 / 結晶構造制御 / 単結晶構造解析 |
研究開始時の研究の概要 |
「有機半導体のキャリア移動度の最大値はどれほどか」という根源的な問いの解を求めるべく、ペリ縮合多環芳香族への位置選択的置換基導入により結晶構造が制御された分子群を開発する。ペリ縮合多環芳香族は二次元的に広がった分子構造を持ち、分子間での軌道の重なりが大きい一方で、結晶中で低次元構造となる傾向が高い。本研究では、大きな軌道の重なりを維持しつつ「結晶構造マニュピレーション」により二次元電子構造へ導き、高キャリア移動度化する。これにより高移動度材料開発の新たな設計指針を導出するだけでなく、ホール輸送材料や多単結晶膜トランジスタといった新たな応用を検討することで高移動度有機半導体の可能性を探求する。
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研究実績の概要 |
本研究における重要な標的化合物であるペリレン、ペロピレン、含複素ピレンなどにメチルカルコゲノ基を位置選択的に導入した化合物の合成を行った。このうち、ペリレンでは4個のピナコールボリル基が導入された中間体から直接メチルチオ基を導入する方法を開発することで、合成に成功した。また、ペロピレン誘導体の合成では初期検討で低溶解性が問題であることが分かったことを受け、あらかじめメチルチオ基を導入した高溶解性ペロピレン前駆体を合成したのち、最終段階でペロピレン骨格を構築する手法を開発した。更に含セレン原子ピレン等電子構造をもつジベンゾジセレナペンタレンの簡便合成と位置選択的臭素化にも成功し、対応するメチルチオ誘導体にも展開できることを見出した。これらの新規材料の評価は単結晶構造解析と単結晶トランジスタにより行い、結晶構造より計算できる固体電子構造との単結晶での輸送特性を比較することで、詳細な構造-物性相関の検討を行った。また、メチルカルコゲノ基が置換したペリ縮合多環芳香族炭化水素の結晶構造を精確にシミュレートする手法であるインシリコ結晶化法を開発し、材料合成と結晶化、構造解析といった実験に先立ち、予測された固体電子構造から半導体特性を類推し、合成ターゲットを選定する研究スキームを確立することも出来た。このような検討の中から、移動度が30 cm2/Vsに達する超高移動度材料を見出すことにも成功している。 以上の結果は、ペリ縮合多環芳香族炭化水素を基盤とし、二次元電子構造を与える分子系へと変換する材料開発が、極めて有効であることを示している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
結晶構造の合理的なシミュレーション法であるインシリコ結晶化法を確立し、標的化合物の選定に使えることを明らかにした。さらに、計画当初に想定した標的化合物の多くを既に合成することに成功している。また、初期の標的化合物の中で未合成であるコロネン誘導体についても位置選択的にメトキシ基を導入した化合物の合成には成功しており、同様の合成ルートを用いることで、メチルチオ誘導体の合成にも展開できると考えている。 これらに加え、種々の材料開発に必要な新規合成中間体の合成やメチルチオ基を効果的に導入する手法の開発も進めており、来年度以降、多様な材料群の開発に結び付けることが出来ると期待している。
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今後の研究の推進方策 |
現在検討中のメチルカルコゲノ基を有するコロネン誘導体の合成を優先課題として実施し、その結晶化と構造解析を実施する。これを、既にインシリコ結晶化法で予測している結晶構造と比較し、π電子系が大きくなった系に於いて本シミュレーション法が有効であるか否かを確認する。また、確立しつつある新たな縮合多環構造の構築法を応用することで、種々の縮合多環芳香族への位置選択的な複素元素の導入を検討する。今年度の予備的な検討により、分子内のメチルチオ基の配向は母体芳香環の縮環様式に影響を受けるだけでなく、結果として分子全体の平面性にも影響を与えることから、これを制御し得る分子設計を確立したいと考えている。
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