研究課題/領域番号 |
23H00308
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研究種目 |
基盤研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
中区分36:無機材料化学、エネルギー関連化学およびその関連分野
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
古川 森也 大阪大学, 大学院工学研究科, 教授 (10634983)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
47,580千円 (直接経費: 36,600千円、間接経費: 10,980千円)
2024年度: 13,130千円 (直接経費: 10,100千円、間接経費: 3,030千円)
2023年度: 21,060千円 (直接経費: 16,200千円、間接経費: 4,860千円)
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キーワード | 触媒 / 合金 / 多元素合金 / 秩序構造 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、触媒としての合金材料の在り方を大きく変える新奇な材料観と設計指針に基づき、難度の高い分子変換を高効率に達成可能な革新触媒を開発するとともに、それを可能にする学理体系を材料化学や触媒化学、およびその関連基礎科学(無機化学、物理化学、固体物理)の観点から整理・確立する。具体的には、優れた触媒の設計に不可欠な「合金の多元素化」と「秩序構造の構築」という一見相反する二つの要素を、「ハイエントロピー金属間化合物」という新たな合金材料の構築により両立させ、これらを達成することを目指す。対象反応としては、社会的インパクトと重要度の高いCO2を利用した炭化水素の変換反応をターゲットとする。
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研究実績の概要 |
本年度においては、HEI材料を基盤とした新規触媒設計を元に、CO2によるプロパン酸化脱水素を対象に高効率な触媒の開発を行った。具体的な材料設計としては、母体となる金属間化合物として、アルカン脱水素に高い活性と選択性を示し、かつΔHfが負に大きいPtSn(ΔHf = -74 kJ/mol)を用いた。ここでPtはC-H結合の活性化に有効であり、不活性なSnはPt-Pt配位数を減少させることで副反応(C-C開裂)を抑制し選択性を高めている。一方でPtSnはCO2活性化には有効でないため、CO2活性化能の高いCoとNiをPtサイトに導入した。またこれによりPt-PtサイトがCo/Niでさらに希釈されPtは合金中で孤立化し、脱水素選択性もより高くなる。一方Snサイトには同じく不活性な典型金属であるInとGaを導入し、エントロピー効果を高めた。この様にして多元素化した(PtCoNi)(SnInGa)/CeO2触媒を調製し、CO2によるプロパン酸化脱水素にて触媒性能を評価した結果、600℃という厳しい条件下においても高い活性、選択性、耐久性を示すことが判明した。この条件では先行触媒である3元系のPt-Co-In/CeO2触媒では急激な性能劣化が見られており、触媒の熱的耐久性が低いことも分かった。これらのことから、多元素化により実際に耐久性が劇的に向上することが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度においては、計画通りCO2によるプロパン酸化脱水素にて6元系の新規合金触媒の設計、調製、性能評価を行うことで、当初の設計指針が妥当であることを示すことができた。これは進捗状況としては順調に進展していると判断できるものである。
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今後の研究の推進方策 |
本研究では、優れた触媒の設計に不可欠な「合金の多元素化」と「秩序構造の構築」という一見相反する二つの要素を、ハイエントロピー金属間化合物という新たな合金材料の構築により両立させ、これらを達成することを目指している。既に(1)CO2によるプロパンの酸化脱水素については検討がほぼ完了したため、今後はCO2を用いた分子変換に関して新たな系への挑戦を進める。具体的にはCO2水素化によるエタノールの製造に着手する。本反応にはCO2の活性化に加え、C-H、C-O、O-Hという三種類の結合を形成させなければならないため難易度と挑戦性が高い。一方でこれらの多機能性の確保には多元素合金反応場の形成が適しているため、本アプローチの有望性も高い。また触媒開発だけでなく、HEIを形成可能な金属組成・条件について幅広く検討し、HEI物質ライブラリーとして構築することで新たな物質群の広がりとその学理を把握する。これら基礎と応用を両輪とした研究軸により、合金触媒化学のさらなる新境地を切り拓く。
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