研究課題/領域番号 |
23H00324
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研究種目 |
基盤研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
中区分38:農芸化学およびその関連分野
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
榊原 均 名古屋大学, 生命農学研究科, 教授 (20242852)
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研究分担者 |
小嶋 美紀子 国立研究開発法人理化学研究所, 環境資源科学研究センター, 専門技術員 (10634678)
西川 俊夫 名古屋大学, 生命農学研究科, 教授 (90208158)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
46,930千円 (直接経費: 36,100千円、間接経費: 10,830千円)
2024年度: 10,790千円 (直接経費: 8,300千円、間接経費: 2,490千円)
2023年度: 14,300千円 (直接経費: 11,000千円、間接経費: 3,300千円)
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キーワード | サイトカイニン / 植物病原菌 / FASオペロン / Rhodococcus fascians / ジャガイモそうか病菌 |
研究開始時の研究の概要 |
植物ホルモンの1つであるサイトカイニンの作用は、濃度変化による「量的」な調節と側鎖構造の多様性による「質的」な調節により、その強さと制御形質が規定される。ある種の植物病原菌では、その病症原因遺伝子座にコードされる酵素群が特殊な側鎖修飾をもつサイトカイニン様分子群を生産し、それらが宿主植物の情報統御の恒常性を撹乱することで奇形を誘発する。そこで本研究では、植物病原菌が作り出す新奇サイトカイニン様分子群の構造とその生合成機構と作用機作を分子レベルで解き明かし、病原微生物由来のサイトカイニン側鎖構造の多様性と質的な作用調節機構の基盤原理を明らかにする。
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研究実績の概要 |
FASオペロン遺伝子群(fas1~fas6およびmt1, mt2)をRhodococcus 属細菌発現ベクター(pTip, pCpi)に導入し、Rhodococcus erythropolisに形質転換した。小スケールでの発現確認後、リットルスケールでの大量培養を行い、培養上清中のサイトカイニン分析を行った。その結果、NC273に加え、現時点で最終産物と予想しているNC303を検出したことから、R. erythropolis中でFASオペロン遺伝子群が正常に機能していると判断した。なお、検出されたピーク強度はNC303>NC273>NC289であり、この結果からも、NC289は最終産物ではなく、NC303が目的物質であることが支持された。 この上清中からの目的物質NC303の精製を試みたが、NC303の化学的性質がNC273とは大きく変化し親水性が増したことから、溶媒抽出や、植物由来のサイトカイニンを対象に構築された固相抽出カラムでの精製手順での濃縮率、回収率が十分に上がらなかった。現在においても精製法は検討中であるが、NC303の大量精製は現時点では完成していない。 一方で、NC303はFAS1による多段階反応の結果生じた物質であるが、種々の分析途上でその中間反応産物(NC305)の検出に成功した。この物質の構造を、反応試薬(セミカルバジド、チオール化合物)との反応分析と、研究分担者である小嶋による質量分析などにより予測した。同じく研究分担者である西川の協力を得て、この中間代謝産物NC305の有機化学的合成の取り組みを開始した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Rhodococcus erythropolisでのFAS遺伝子クラスターの発現により、これまでの大腸菌発現系比べ格段に大量のNC化合物群の生産が可能になり、その系においてもNC303が最終産物である仮説が支持された。また、溶媒抽出などの過程でその化合物の化学的性質(他の前駆化合物と比較した浸水性など)に関する知見も得ることができた。NC303化合物の最終的な構造決定にまでは至らなかったものの、その過程で反応中間産物(NC305)の検出に成功した。その化合物の反応試薬(セミカルバジド、チオール化合物)との反応分析から最終産物の構造予測を行い、ほぼ最終構造を特定するところにまでこぎつけることができ、次年度はその証明を行うことになる。以上のことから、ほぼ当初の計画通りに研究は進捗していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は最終産物NC303の構造を同定する。具体的には、NC303の前駆物質であるNC305の有機化学合成を行い、十分量のNC305を調製しFAS1と反応させた際に生成する反応物(NC305と予測)を精製し、質量分析およびNMR分析する。その結果をもとにNC303の構造を決定する。NC化合物は中間産物も感染植物内に蓄積しており、それらの複合的な作用により、病症を発すると考えられることから、上記の構造決定と並行して前駆物質NC273の宿主植物細胞側への作用機構についての研究をすすめる。特にNC273が本当にサイトカイニン情報伝達系に作用しているのかについて、シロイヌナズナのサイトカイニン受容体の変異株を用いて検証を行う。また、受容体がNC273を認識しうるか否かについて、in silicoでの結合シミュレーション解析や、結合アッセイなどで検証していく必要がある。
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