研究課題/領域番号 |
23H00325
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研究種目 |
基盤研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
中区分38:農芸化学およびその関連分野
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研究機関 | 同志社大学 (2024) 京都大学 (2023) |
研究代表者 |
入江 一浩 同志社大学, 研究開発推進機構, 嘱託研究員 (00168535)
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研究分担者 |
久米 利明 富山大学, 学術研究部薬学・和漢系, 教授 (10303843)
池川 雅哉 同志社大学, 生命医科学部, 教授 (60381943)
喜田 昭子 京都大学, 複合原子力科学研究所, 助教 (70273430)
景山 裕介 滋賀医科大学, 医学部, 研修医 (80971069)
塚野 千尋 京都大学, 農学研究科, 教授 (70524255)
遠山 育夫 滋賀医科大学, 医学部, 理事 (20207533)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
47,190千円 (直接経費: 36,300千円、間接経費: 10,890千円)
2024年度: 15,600千円 (直接経費: 12,000千円、間接経費: 3,600千円)
2023年度: 17,030千円 (直接経費: 13,100千円、間接経費: 3,930千円)
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キーワード | アルツハイマー病 / アミロイドβ / 抗毒性ターン特異抗体 / 毒性オリゴマー / 分子内ジスルフィド結合 / オリゴマー / ジスルフィド結合 / 毒性立体配座 / 抗毒性ターン抗体 / 有機化学 / 毒性配座特異抗体 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究代表者らは、42残基のアミロイドβタンパク質が中央部分でターン構造を取ることによって毒性オリゴマーを形成するという「毒性配座理論」を提唱し、本理論に基づき、分子内SS架橋により毒性配座に固定したAβ42と、C末端領域でAβを架橋した毒性2および3量体モデルを創製してきた。本研究ではこれらに対するモノクローナル抗体を作製し、得られた抗体と抗原との共結晶のX線構造解析、並びに各種機能解析を行う。次に、毒性配座を適切に認識する抗体を選別し、N末抗体とのサンドイッチELISAを構築して、ヒト脳脊髄液ならびに血漿による超早期AD診断法を確立する。さらに、これらの抗体によるADモデルマウスに対する治療効果を検証する。
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研究実績の概要 |
アルツハイマー病(AD)の発症において重要な役割を果たしているアミロドβタンパク質(Aβ)は,凝集することにより神経細胞毒性を示す.本研究代表者らは,Aβ42が中央部分でターン構造を取ることによって,C末端の疎水性コアが形成されて毒性オリゴマーになるという「毒性配座理論」を提唱した.本研究は,毒性配座に固定した野生型Aβ42およびそのオリゴマーモデルに対する抗体を作製し,ヒト血漿ならびに脳脊髄液による超早期AD診断法の確立を目的としている. 今年度はまず,Aβ42の17および28位間の分子内ジスルフィド架橋体のうち,最も高い凝集性ならびに毒性を示したL17homoCys,K28Cys-SS-Aβ42に対するモノクローナル抗体をマウスを用いて作製したところ,4種のクローンが得られた.それぞれの産生する抗体についてAD患者脳切片に対する免疫組織化学的染色により調べたところ,ほとんど染色されなかった.また、各種Aβ42誘導体に対する結合選択性をEIAによって調べた結果,抗原ペプチドとともに,毒性ターンを取りやすいE22P-Aβ42に強く結合したが,野生型Aβ42に対する結合能も比較的高かったことから,更なるスクリーニングが必要である. 次にAβのC末端領域で架橋した2量体モデルの構造最適化を行なった.毒性配座を取りやすいE22P-Aβ40の38位において2個の炭素鎖で架橋したモデルがE22P-Aβ42に匹敵する高い細胞毒性を示したことから,リンカー長を炭素数2に固定し,38位を中心として架橋位置を系統的に変化させたE22P-Aβ誘導体を合成し,凝集能と細胞毒性を調べた.その結果,Aβ40においては38位での架橋が,Aβ42においては40位がそれぞれ最適な架橋位置であることが明らかになった.さらに最適化された2量体モデルにおいて,22番目のプロリン残基を野生型のグルタミン酸残基に換えたところ,凝集性と神経細胞毒性は顕著に低下した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Aβ42の17位,28位間でのジスルフィド架橋体の中で,最も高い凝集能と細胞毒性を示したL17homoCys,K28Cys-SS-Aβ42をマウスに免疫することにより,抗原ペプチドならびに高い細胞毒性を有するE22P-Aβ42に強く結合するモノクローナル抗体・4クローンを取得することができた.ただし,いずれも野生型Aβ42に対する結合能が比較的高かったため,毒性配座に対する選択性を高めるべく,更なるスクリーニングが必要である. 一方,毒性ターン構造をとりやすいE22P-Aβ40およびE22P-Aβ42のC末端領域を,2個の炭素鎖で架橋した2量体モデルを系統的に合成した結果,それぞれにおいて最も高い凝集能と細胞毒性を示す架橋位置を決定することができた.しかしながら,22位のプロリン残基を野生型のグルタミン酸残基に変換したところ,凝集能と細胞毒性は顕著に低下した.AD診断に有効な毒性オリゴマー抗体を得るためには,最適化した2量体の立体配座を分子内SS架橋などにより毒性配座に固定する必要がある. 以上の経緯から,おおむね順調に進展していると判断した.
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今後の研究の推進方策 |
昨年度に引き続き,L17homoCys,K28Cys-SS-Aβ42の立体配座特異抗体の作製を進める.一方で,Cryo-EMによって明らかにされたAD患者のAβ42凝集体の立体構造に基づき,17位と28位間以外での分子内架橋による毒性配座の固定を試みる.さらに,本研究代表者が提唱している毒性2量体モデル(35位と42位間での架橋)の模倣も考えている.高い凝集性ならびに細胞毒性が認められた配座固定誘導体を抗原として,立体配座特異抗体の作製を試みる. 野生型Aβ42の2量体モデルにおいて,架橋位置を系統的に変化させ,最適な毒性2量体の取得を試みる.同時に,17位および28位間での分子内SS架橋等により,毒性配座に固定した野生型Aβの2量体モデルの合成を行う. 既に開発に成功した,L17C,K28C-SS-Aβ42に対する立体配座特異抗体(TxCo-1)によるADモデルマウス(5 x FAD transgenic mouse)の治療実験を開始する.
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