研究課題/領域番号 |
23H00326
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研究種目 |
基盤研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
中区分38:農芸化学およびその関連分野
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
植田 和光 京都大学, 高等研究院, 特定拠点教授 (10151789)
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研究分担者 |
木村 泰久 京都大学, 農学研究科, 准教授 (10415143)
難波 啓一 大阪大学, 大学院生命機能研究科, 特任教授(常勤) (30346142)
古寺 哲幸 金沢大学, ナノ生命科学研究所, 教授 (30584635)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
47,320千円 (直接経費: 36,400千円、間接経費: 10,920千円)
2024年度: 15,600千円 (直接経費: 12,000千円、間接経費: 3,600千円)
2023年度: 17,160千円 (直接経費: 13,200千円、間接経費: 3,960千円)
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キーワード | ABCA1 / HDL / 高速AFM / クライオEM / コレステロール / ABC蛋白質 / HDL産生 / クライオ電顕 / 構造生物学 / クライオEMによる構造解析 / 動脈硬化症 |
研究開始時の研究の概要 |
抗動脈硬化作用をもつ高密度リポ蛋白質(HDL)の産生メカニズムを理解することは動脈硬化症の予防や治療のために重要だが、いまだ謎のままである。ATP依存トランスポーターであるABCA1は、HDL産生の第一段階として、数百分子のコレステロールとリン脂質の周りをアポリポ蛋白質A-I(アポA-I)が取り巻いた円盤状構造の新生HDLを産生する。本研究は、ABCA1がコレステロールとリン脂質をアポA-Iに受け渡して新生HDLを産生するメカニズムを、クライオ電子顕微鏡と高速原子間力顕微鏡(高速AFM)を用いた可視化によって解明・実証する。
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研究実績の概要 |
本研究で実施するABCA1のクライオ電子顕微鏡観察と高速AFM解析の成否は、蛋白質試料の品質にすべて依存する。そのため、ヒトABCA1蛋白質を細胞膜から機能を保持した状態で抽出・精製する条件の最適化を行った。ヒトABCA1をヒト培養細胞(FreeStyle 293細胞)に一過性発現させ、細胞膜から界面活性剤を用いて抽出し、C末端に付加したFLAGタグを利用したアフィニティー精製とゲル濾過により高純度に精製した。精製試料の品質をATP加水分解活性測定と電子顕微鏡ネガティブ染色により評価し、それらの結果をフィードバックすることで各段階の精製条件の最適化を行った。 次に、脂質二重層に埋まった生理状態に近いABCA1試料を調製するため、精製ABCA1を、通常膜蛋白質の再構成に用いられる膜スキャフォールド蛋白質(MSP)の2倍の長さのもの(MSP2N1)を利用し、コレステロールやリン脂質を600から700分子含む大きなナノディスク(直径約15 nm)に再構成した。再構成したナノディスク試料をゲル濾過を用いてさらに細かく分画し、1分子のABCA1が再構成されたナノディスクを分離・精製を行った。 上記の方法でナノディスクに再構成したABCA1試料の高速AFM観察を行った。その結果、直径約15 nmの大きなナノディスクに埋まった1分子のABCA1が、各ドメインが判別できる解像度で可視化でき、細胞外ドメインがフレキシブルに動く様子が観察された。さらに、ナノディスクに再構成した1分子のABCA1にATPを加えてリアルタイム観察を行った結果、時間経過に伴いナノディスクが徐々に収縮していくと同時に、細胞外ドメインは肥大化する変化を観察することに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ナノディスクに再興したABCA1を高速AFMを用いて観察することで、ABCA1によて新生HDLが形成される各段階の可視化に成功した。さらに、各段階の詳細な構造をクライオ電顕を用いて解明することによって、本研究の目的であるABCA1によるHDL産生過程の可視化が達成できると期待される。
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今後の研究の推進方策 |
HDL産生過程の各段階のABCA1の詳細な構造をクライオEMを用いて観察する最適条件を確立する。それによって、HDL産生過程各段階のABCA1の詳細な構造を明らかにし、ABCA1によるHDL産生メカニズムを解明する。
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