研究課題/領域番号 |
23H00330
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研究種目 |
基盤研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
中区分39:生産環境農学およびその関連分野
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
堀 雅敏 東北大学, 農学研究科, 教授 (70372307)
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研究分担者 |
原田 昌彦 東北大学, 農学研究科, 教授 (70218642)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2028-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
46,540千円 (直接経費: 35,800千円、間接経費: 10,740千円)
2024年度: 8,840千円 (直接経費: 6,800千円、間接経費: 2,040千円)
2023年度: 9,620千円 (直接経費: 7,400千円、間接経費: 2,220千円)
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キーワード | 青色光 / 殺虫 / 昆虫細胞 / 昆虫組織 / 細胞障害 / 細胞傷害 |
研究開始時の研究の概要 |
青色光殺虫は光生物学上の新知見として、また、クリーンな新規殺虫技術の開発に繋がるものとして注目されているが、殺虫メカニズムの詳細はまだ未解明な部分も多い。同じ青色光でも短波長側と長波長側ではメカニズムに違いがある可能性も示唆されている。そこで、短波長側と長波長側の青色光について、殺虫メカニズムを細胞、組織、個体レベルで解明することで、青色光殺虫のメカニズムの全容を明らかにし、動物に対する光の作用の新たな知見を得るとともに、青色光殺虫技術普及のための基盤を確立する。
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研究実績の概要 |
ショウジョウバエ胚由来細胞(S2細胞)を用いて、405、420、435、450、470nmの青色光を照射した細胞および非照射の細胞でTUNEL法によるDAN断片化の解析を行なった。その結果、420nm光の照射により、DNA損傷細胞の割合が最も多くなることが明らかになった。405や435nm光でもDNA損傷は認められたが、その割合は420nmに比べるとかなり低く、また、450および470nmでは損傷は認められなかった。一方、上記5波長の青色光照射間で生細胞密度を比較すると、450nm照射区による生細胞密度は他の4波長に比べて明らかに高かった。また、細胞周期に与える影響から、405や420nm照射区ではS期細胞の割合が増加し、470nm照射区ではG2/M期の割合が増加することが示された。以上から、短波長と長波長の青色光で作用メカニズムの変化が生じる境界は450nm近辺と推定された。また、短波長青色光では照射によりDNA損傷が生じるが、長波長青色光ではG2/M期での細胞周期停止は起きるもののアポトーシスは誘導されないことが示唆された。 青色光照射による傷害因子を明らかにする目的で、S2細胞を用いて、照射による過酸化脂質の蓄積を420、450、470nm光で比較したが、いずれの波長の青色光でも蓄積は認められなかった。よって、青色光照射による細胞傷害に過酸化脂質の蓄積はあまり関与していない可能性が示された。 次に、ハイパースペクトルカメラを用いてS2細胞の吸収スペクトルを解析した。その結果、青色光の波長領域は他の波長領域に比べて細胞に吸収されやすいこと、また、青色光の中でも短波長であるほど細胞膜や細胞小器官に吸収されやすいことが示された。 青色光照射による傷害組織の特定では、脳と中腸における傷害を解析した。脳には青色光照射による傷害は認められなかったが、中腸には傷害が認められた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
細胞への傷害作用の波長間比較においては、照射による細胞周期停止およびアポトーシス誘導作用の違いを短波長と長波長の青色光で明らかにすること、また、傷害作用の違いからみた短波長と長波長青色光の境界を明らかにすることを、昨年度は計画として立てていた。これに対し、照射によるDNA損傷の波長間比較から、450nm近辺に作用メカニズムが変化する境界があると推定できた。また、ハイパースペクトルカメラによる解析から、青色光は他の波長域の光に比べて、細胞に吸収されやすく、また、青色光の中でも短波長であるほど細胞膜や細胞小器官に吸収されやすいことを示すことができた。一方で、活性酸素によって生じる細胞傷害として考えられる過酸化脂質については、青色光照射による細胞傷害にはあまり関与していない可能性も示した。 さらに、昨年度の計画には入れていなかった内容として、傷害組織の特定も試みた。その結果、青色光照射による脳への損傷はみられないこと、腸に損傷が認められることが明らかになった。一方、昨年度の計画に入れていた次世代放射光観察に向けた解析手法の検討は実施できなかった。 以上を総合的に判断して、おおむね順調に進展していると自己評価した。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度は傷害因子として、過酸化脂質の蓄積に着目して解析したが、照射による蓄積は推測と異なり確認できなかった。よって、傷害因子をまず網羅的に調べ、因子をある程度推定してから、特定するのが効率的であると考えた。そこで、まず、ショウジョウバエ胚由来細胞を用いて、照射により発現する遺伝子について網羅的に解析した後に、主要な発現遺伝子について発現量を青色光波長間で詳細に比較解析することにより、傷害因子の波長による違いを明らかにする。 また、細胞のどこで青色光が特に吸収され、それによりどの細胞小器官が傷害を受けるのかを、ハイパースペクトルカメラや蛍光顕微鏡観察による解析により明らかにする。 組織・個体については、神経損傷の解析がかなり難しいため、傷害組織の特定が、蛍光顕微鏡観察ではかなり困難と考えている。そこで、個体についても照射により発現する遺伝子についてまずは網羅的に解析し、傷害因子の絞り込みをある程度先に行う。その後、個体の部位ごとに、照射による遺伝子発現解析を行い傷害因子と傷害部位(組織)の推定を行う。 以上により、細胞での傷害と組織での傷害を結びつけ、細胞ー組織ー個体に対する傷害作用の全容を解明していく。
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