研究課題/領域番号 |
23H00334
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研究種目 |
基盤研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
中区分39:生産環境農学およびその関連分野
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研究機関 | 東京農業大学 |
研究代表者 |
太治 輝昭 東京農業大学, 生命科学部, 教授 (60360583)
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研究分担者 |
有賀 裕剛 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 遺伝資源研究センター, 研究員 (00849060)
西村 浩二 島根大学, 学術研究院農生命科学系, 准教授 (30304257)
西條 雄介 奈良先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 教授 (50587764)
土松 隆志 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 教授 (60740107)
星川 健 国立研究開発法人国際農林水産業研究センター, 生物資源・利用領域, 任期付研究員 (70634715)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2028-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
46,800千円 (直接経費: 36,000千円、間接経費: 10,800千円)
2024年度: 8,710千円 (直接経費: 6,700千円、間接経費: 2,010千円)
2023年度: 11,960千円 (直接経費: 9,200千円、間接経費: 2,760千円)
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キーワード | 耐塩性 / 浸透圧耐性 / シロイヌナズナ野生系統 / 多様性 / 水欠乏耐性 / 植物の環境応答 / ゲノム編集作物育種 |
研究開始時の研究の概要 |
同一種内で見られるストレス耐性の多様性解明は、植物が自然環境に適応してきたレジリエンス機構の解明を可能とし、より分子育種に適合するメカニズムの解明に繋がると期待される。しかしながら、その進化的要因や背景でどの遺伝子が働いているのかに関しては多くが不明である。これまでのシロイヌナズナ野生系統を用いた多様性研究により、様々な環境ストレス耐性の多様性に寄与する遺伝子や、耐塩性を向上させる遺伝子の同定に成功した。本研究では、植物が気候変動に適応するレジリエンスの理解と応用展開を目的に、これらの遺伝子を中心とした植物の浸透圧・塩ストレスに対するレジリエンス機構の解明、さらに耐性作物育種への展開を目指す。
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研究実績の概要 |
本年度は以下2点の成果を得た。 1)カルシウム(Ca2+)イオンは、様々なシグナル伝達や応答経路におけるセカンドメッセンジャーとして普遍的に作用する。ゴルジ体は細胞質よりも高濃度のCa2+を保持しており、水分欠乏や塩害などの環境刺激に応答して一過性にCa2+が上昇した場合に、細胞質Ca2+を基底状態に戻す役割を担う。しかしながら、植物のゴルジ体に局在するCa2+輸送体は不明であった。そこで、植物の水不足や塩ストレスに対する耐性が損なわれたシロイヌナズナ突然変異株、aod6を単離し、その原因遺伝子がCATION/Ca2+ EXCHANGER 4 (CCX4)であることを明らかにした。CCX4がCa2+輸送体として機能し、ゴルジ体に局在したことから、CCX4がCa2+応答に関与するゴルジ体局在のCa2+輸送体であり、シロイヌナズナの水不足や塩ストレス耐性に重要な役割を果たしていることが明らかとなった。 2)先行研究において、シロイヌナズナの水欠乏耐性多様性に寄与する遺伝子として、ヌクレオチド結合性ロイシンリッチリピートタンパク質をコードするACQOSを同定した。ACQOSは、シロイヌナズナの実験系統であるCol-0を含む水欠乏高感受性の系統で保存されており、病害耐性に有益である一方、水欠乏に応答して有害な自己免疫を誘導し、結果として水欠乏耐性を抑制する。しかしながら、ACQOSがどのようにして自己免疫を誘導するのかは不明であった。そこで、水欠乏耐性が向上したシロイヌナズナ突然変異株、aot19を単離し、その原因遺伝子が核膜孔複合体の構成因子、NUCLEOPORIN 85 (NUP85)であることを明らかにした。NUP85はACQOSの核内移行に必須であり、NUP85の変異は、水欠乏に応答するACQOS誘導性自己免疫を抑制することにより、水欠乏耐性を向上させることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
2023年度内に責任著者として上記2報を含む、4報を国際科学誌にて発表することができた。いずれもインパクトの高い科学雑誌への業績であり、当初の計画以上に研究の進展が見られた。
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今後の研究の推進方策 |
シロイヌナズナ野生系統を用いた植物の浸透圧・塩ストレスに対するレジリエンス機構の解明、耐性作物育種への展開を目的に、以下の課題に取り組む。 1)浸透圧耐性欠損変異株の解析: シロイヌナズナ浸透圧耐性系統から塩馴化後浸透圧耐性を欠損したaod変異株を複数単離した。昨年度の成果において、これらのうち、aod1, aod10, aod12の原因遺伝子の同定に成功した。これらの原因遺伝子はそれぞれ、免疫応答、脂質輸送、DNA損傷修復への関与が報告されている遺伝子であった。そこで本年度はこれらの遺伝子が浸透圧ストレス応答へどのように関与するのか、それぞれ解析する。 2)SALT 遺伝子の機能解析: 極めて高い耐塩性を示すシロイヌナズナ野生系統より、その原因遺伝子を同定したところ、SALTと名付けた遺伝子欠損が原因であることが示唆された。昨年度の研究成果においてSALT 遺伝子が輸送体として機能することが明らかになりつつある。本年度はSALTの輸送基質を明らかにすることを目的に、輸送体欠損酵母にSALT 遺伝子を導入することで、その輸送基質を調べる。またSALT 遺伝子の組織、および細胞内の局在を明らかにする。 3)SALT 遺伝子欠損トマト・イネ・コマツナの作出と耐塩性評価: 昨年度、トマト・イネ・コマツナにおけるSALT 相同遺伝子のゲノム編集を行った。これらの植物種においてはいずれもSALT 相同遺伝子が2遺伝子ずつゲノム上に存在したことから、二重欠損株の作出を試みた。本年度は二重欠損株の遺伝的な固定を行い、通常生育および塩ストレス下における植物体サイズや収量への影響を評価する。 4)耐塩性獲得変異株の単離解析: シロイヌナズナより耐塩性が野生株よりも向上したsot変異株を複数系統単離した。得られた変異株の遺伝学的な解析により、原因遺伝子を同定する。
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