研究課題/領域番号 |
23H00349
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研究種目 |
基盤研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
中区分41:社会経済農学、農業工学およびその関連分野
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
中村 公人 京都大学, 農学研究科, 教授 (30293921)
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研究分担者 |
濱 武英 京都大学, 農学研究科, 准教授 (30512008)
櫻井 伸治 大阪公立大学, 大学院農学研究科, 講師 (30531032)
大西 健夫 岐阜大学, 応用生物科学部, 教授 (70391638)
長野 宇規 神戸大学, 農学研究科, 准教授 (70462207)
松田 壮顕 滋賀県立大学, 環境科学部, 講師 (10915367)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
48,620千円 (直接経費: 37,400千円、間接経費: 11,220千円)
2024年度: 5,590千円 (直接経費: 4,300千円、間接経費: 1,290千円)
2023年度: 34,450千円 (直接経費: 26,500千円、間接経費: 7,950千円)
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キーワード | 水田水管理 / 温室効果ガス / 炭素管理 / 重金属 / 有機物 / 有害金属 |
研究開始時の研究の概要 |
温室効果ガスの排出が地球温暖化を引き起こしていることが高い確度で明らかになる中,水田からのメタンを主とした温室効果ガスの排出抑制と炭素貯留を両立させて気候変動緩和に寄与することが農業分野の重要な使命である.そのためには,土壌の物理・化学的特性に応じた有機物管理と水管理方法の提案が不可欠である.また,有害重金属のイネへの移行とのトレードオフの関係に配慮することも必要である.本研究は,土壌中の炭素,窒素,重金属,主要イオンなどの動態を表現する新しい統合モデルを構築し,様々なトレードオフの関係に配慮した温室効果ガス排出抑制と炭素貯留を両立できる物質と水の管理方法を提案する.
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研究実績の概要 |
土壌からの二酸化炭素とメタンの排出フラックスを測定するためのシステムを新たに導入し,土壌カラムを用いて,有機物として微生物資材を投入したことによるガス排出特性への影響とその土壌水分量による違いを室内実験により調べた.その結果,微生物資材の投入によって,不飽和状態においては二酸化炭素の排出量に違いが確認され,その後の湛水状態への切り替えによるメタン排出量にも影響することが示された.温室効果ガス抑制のための有機物管理として微生物資材の投入の可能性が示唆された. また,カドミウムとヒ素を用いた室内バッチ試験を行い,湛水から非湛水状態への切り替えを行った土壌と非湛水から湛水状態への切り替えを行った土壌における化学形態の変化と酸化還元電位の変化を比較した.その結果,カドミウムの可給態濃度や各形態の存在割合が両水管理条件で上昇しなかったのに対して,ヒ素は,いずれの水管理条件でも,切替14日後に比較的移行性の高い形態が支配的になることが示された.水管理の影響がヒ素で大きいことが明らかになった.以上のように,室内実験では今後のモデル構築のために必要なデータを蓄積しつつある. 現地水田圃場における観測では,近年その導入が進められている自動給水栓の利用により,従来行われていた中干し後の間断灌漑が行われず,常時湛水状態になりやすいことが確認され,メタン排出量が増加するおそれがあることがわかった.将来の水田の湛水管理においては,中干し後に適切な間断灌漑になるような自動給水栓の設定方法を明らかにすることが重要であることを認識した. また,土壌中の炭素,窒素,リン,有害重金属を主対象とした物質動態と水・熱移動の統合モデルの開発に関しては,土壌中の水・溶質・熱移動モデルのHYDRUSと化学反応モデルのPHREEQCを組み合わせたHP1モデルの運用を試みた.現時点ではその概要把握を行ったところである.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度の大きな成果としては,二酸化炭素とメタンの土壌からの排出フラックスの経時変化を測定するシステムを整備して,これを用いた実験が実施できたことにある.室内実験では,とくにカドミウムとヒ素の共存状態での水管理による動態変化のデータを取得できた.
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今後の研究の推進方策 |
今後の推進方策の基本は,①室内実験による土壌内の有機物・無機物の物質動態の要素ごとの特徴(とくに形態変化の反応速度)の把握,②現地観測による非定常の湛水深変化(湛水と非湛水の切り替え)に伴う二酸化炭素とメタンの排出過程の解明を通し,③温室効果ガス排出抑制と重金属の作物吸収抑制を両立するための方策を検討することができる物質動態モデルを開発して,④具体的な有機物と水管理の提案を行うことにある. 2024年度は,とくに現地観測を安定的に実施する体制を整えるとともに,モデル構築の基礎となるHP1モデルの習熟に注力する.室内実験は,研究分担者を中心に並行して進める.また,異なる特性を有する土壌における管理法の提案に向けて,国内各地の土壌採取を開始し,把握すべき土壌の物理・化学・生物学的な特性について検討を行う. 2025年度は,現地観測,室内実験を継続するとともに,モデルで考慮すべき物質の挙動特性の情報を室内実験から整理して,これをモデルに組み込み,モデルの具体的な運用ができるようにする.扱う土壌を拡張するために,東南アジア諸国を中心とした土壌を採取して,その特性を把握し,モデルに導入する. 2026年度は,開発したモデルの運用により有機物や水の適切な管理方法についてまとめることを中心とする.室内実験と現地観測は継続して行い,モデルパラメータの高精度化とモデルの妥当性の検証に用いる.
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