研究課題/領域番号 |
23H00361
|
研究種目 |
基盤研究(A)
|
配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
中区分42:獣医学、畜産学およびその関連分野
|
研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
島田 昌之 広島大学, 統合生命科学研究科(生), 教授 (20314742)
|
研究分担者 |
梅原 崇 広島大学, 統合生命科学研究科(生), 准教授 (60826858)
杉野 利久 広島大学, 統合生命科学研究科(生), 教授 (90363035)
|
研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
|
配分額 *注記 |
46,930千円 (直接経費: 36,100千円、間接経費: 10,830千円)
2024年度: 10,920千円 (直接経費: 8,400千円、間接経費: 2,520千円)
2023年度: 15,080千円 (直接経費: 11,600千円、間接経費: 3,480千円)
|
キーワード | 卵巣 / 臓器完成 / 間質 / 代謝 / 妊孕性 / 慢性炎症 / ミトコンドリア / 性ステロイドホルモン |
研究開始時の研究の概要 |
成熟雌の卵巣において,発達した卵巣間質に覆われた卵胞が発育し,排卵が生じる.したがって,間質組織の発達が卵巣機能に重要な役割を果たすと考えられるが,卵巣間質の成立機構や卵胞発育との関係は全く明らかとなっていない.本申請課題では,卵巣間質の成立機構をsingle cell RNAseqによる間質の構成細胞群の変化解析から明らかとする.さらに,成立した卵巣間質と卵胞発育との関係を①メカノバイオロジーと②分子内分泌学の視点から解明する.これらから,卵巣間質細胞の分泌因子を卵巣成熟マーカーへと応用し,末梢血分析で「卵巣形成完了=その種雌畜は繁殖に利用できる」を判断する繁殖技術を開発する.
|
研究実績の概要 |
生殖器官および副生殖器官の臓器機能の完成機構を解明するため,生殖細胞や副生殖器官における分泌細胞,それらを支持する間質組織に着眼して研究を実施している。具体的には,二次性成長期から機能喪失期までの卵巣間質を構成する細胞の動態変化について,顆粒膜細胞由来細胞をGFPでマーキングしたsingle cell RNAシークエンスにより解析した。その結果,卵巣機能が未成熟である3週齢から卵巣機能が成熟する8週齢にかけて,間質を構成する細胞が多様化していくことが明確化された。さらに,この多様な細胞の一部は卵胞内にある顆粒膜細胞に由来することも明らかとなった。この多様な細胞群は,卵巣機能が消失する加齢マウス卵巣で,さらに構成が変化していくことも示された。この多様化の一要因は,代謝機能低下による老化細胞様細胞への変化,それに引き続き起こる線維化であった。老化細胞様細胞を代謝改善薬で処理すると細胞内に蓄積した脂肪顆粒が減少したことから,卵巣機能消失においては,代謝低下が間質構成の変化を引き起こす可能性が示された。今後,これらの分化誘導機構や細胞の誘引メカニズムの解明を行っていく計画である。 一方,雄の副生殖器官である精嚢腺において,テストステロン依存的に代謝がシフトし,グルコースを同化して脂肪酸を合成し,精液成分として分泌する機構をトランスクリプトーム解析とメタボローム解析により明らかとした。このような性ステロイドホルモンによる代謝シフトは,上述の細胞分化ともリンクする可能性があり,今後,その詳細を検討する。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
卵巣構造の経時的変化の解析が終了し,その多様化の仕組みを解明するためのヒントとして「代謝機構の変化」に着目するエビデンスを得ることができた。この1年目の成果を踏まえて,2年目以降,卵巣が臓器完成する仕組みと,その完成と機能消失を検出するマーカーの開発を行っていく計画である。
|
今後の研究の推進方策 |
上述の通り,卵巣間質を構成する細胞の分化誘導機構について,RNAシークエンスのデータをバイオインフォマティクス解析により誘導因子の推定を行い,その立証を間質細胞の体外培養により実施する。この体外培養のデータから,体内で分化抑制あるいは分化誘導を行う薬剤投与試験やノックダウン試験を実施する。卵巣機能が発揮される条件特異的に間質細胞が分泌する因子は,RNAシークエンスのデータから候補化し,血中濃度測定系を立ち上げ,その経時的変化を解析する。
|