研究課題/領域番号 |
23H00382
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研究種目 |
基盤研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
中区分44:細胞レベルから個体レベルの生物学およびその関連分野
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
中野 明彦 国立研究開発法人理化学研究所, 光量子工学研究センター, 副チームリーダー (90142140)
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研究分担者 |
戸島 拓郎 国立研究開発法人理化学研究所, 光量子工学研究センター, 上級研究員 (00373332)
伊藤 容子 お茶の水女子大学, ヒューマンライフサイエンス研究所, 特任助教 (10733016)
黒川 量雄 国立研究開発法人理化学研究所, 光量子工学研究センター, 専任研究員 (40333504)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
47,580千円 (直接経費: 36,600千円、間接経費: 10,980千円)
2024年度: 18,330千円 (直接経費: 14,100千円、間接経費: 4,230千円)
2023年度: 20,150千円 (直接経費: 15,500千円、間接経費: 4,650千円)
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キーワード | 膜交通 / ゴルジ体 / 選別輸送 |
研究開始時の研究の概要 |
膜交通のメカニズムの理解は、超解像ライブイメージングの最先端技術によって大きく刷新されつつある。我々が開発したきわめて時空間分解能の高い顕微鏡技術は、生細胞内を自由自在に動き回る微小オルガネラや輸送小胞の4次元追跡を可能にし、従来のパラダイムを大きく変えた。とくに、選別輸送のハブに位置するゴルジ体とその隣接区画の役割は、予想をはるかに超えてダイナミックなものであることがわかってきた。これらのオルガネラの細胞内体制は、酵母、動物、植物の細胞で、一見大きく異なっているが、そこには驚くべき共通点が存在する。その相互比較から根源的な原理を抽出し、真核細胞の膜交通の統合モデルを構築する。
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研究実績の概要 |
我々が開発した高速超解像顕微鏡技術(Super-resolution Confocal Live Imaging Microscopy, SCLIM)を駆使し、動物細胞、植物細胞、酵母細胞における膜交通を可視化して、ゴルジ体とその隣接区画・関連区画におけるタンパク質選別のメカニズムの解明を進めた。本年度は、酵母のエンドサイトーシスの最初の区画が前期トランスゴルジ網であること(eLife 2023)、また小胞体―ゴルジ体中間区画が存在すること(eLife 2024)を世界で初めて示し、動物細胞や植物細胞との比較により真核生物共通のメカニズムを提唱した。また、ヒトの消化管間質腫瘍の原因が、変異KITチロシンキナーゼがトランスゴルジ網に停留して一群のシグナル伝達因子を活性化するためであることを明らかにし(Cell Reports 2023)、超解像ライブイメージングの医学応用の威力を示した。大阪大学やお茶の水女子大学との共同研究でもSCLIM技術を駆使し、ヒト細胞におけるゴルジ体ユニットの存在(Nature Communications in press)や植物細胞の小胞体―ゴルジ体中間区画の機能等に関する新規の事実を次々に明らかにしている。 SCLIM技術の開発も精力的に続けた。新規に完成したSCLIM2Mモデルでは、冷却型イメージインテンシファイアによる高S/Nのシグナル増倍により単一光子計測とノイズ除去を実現し、新たに開発した誤差評価を含んだ構造再構築アルゴリズムによって、空間で70-100 nm、時間で20立体/秒という高い分解能を達成し、国際的に大きな注目を得ている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
SCLIM顕微鏡技術により、これまで誰も見たことのないきわめて高い時空間分解能で、膜交通における選別輸送の過程を観察できるようになりつつある。3色完全同時の高速超解像4D計測により、たとえば動物細胞のトランスゴルジ網(TGN)における輸送キャリアの形成時に異なる積み荷タンパク質を同時に観察し、目的地の異なる積み荷がどの時点でどのように選別されているか等について、驚くべき現象を続々に発見している。世界随一のイメージング技術を駆使することの威力により、これまで漠然と想像するしか術がなかった選別過程を明確に可視化し、多くの謎に包まれていた分子機構が解明しつつある。
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今後の研究の推進方策 |
2024年4月に、研究分担者であった理研の黒川量雄専任研究員が急逝した。大変残念なことであるが、彼が進めていた酵母膜交通に関する研究は、中野と戸島で責任をもって進めていく。また、2024年度一杯で、代表中野の所属チームが終了となる予定で、次年度以降、メンバー異動の可能性がある。計画通りに研究が推進できるよう最大限の努力を行う予定である。 SCLIM顕微鏡は引き続き理研で管理され、その利用には問題がない。メンバーの異動後も、動物細胞、植物細胞、酵母細胞での膜交通ライブイメージングを通じて、真核生物に共通する統合モデルの完成を目指していく。
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