研究課題/領域番号 |
23H00424
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研究種目 |
基盤研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
中区分52:内科学一般およびその関連分野
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研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
岡崎 康司 順天堂大学, 大学院医学研究科, 教授 (80280733)
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研究分担者 |
奥田 修二郎 新潟大学, 医歯学系, 教授 (00512310)
木下 善仁 近畿大学, 理工学部, 講師 (20634398)
村山 圭 順天堂大学, 大学院医学研究科, 教授 (50316741)
大竹 明 埼玉医科大学, 医学部, 特任教授 (00203810)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
47,840千円 (直接経費: 36,800千円、間接経費: 11,040千円)
2024年度: 12,350千円 (直接経費: 9,500千円、間接経費: 2,850千円)
2023年度: 23,660千円 (直接経費: 18,200千円、間接経費: 5,460千円)
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キーワード | ミトコンドリア病 / オミックス解析 / ミトコンドリアDNA / メタボローム解析 / シングルセル解析 / 心筋症 / ゲノム解析 / ヘテロプラスミー率 / マルチオミックス解析 / シングルセル / ヘテロプラスミー |
研究開始時の研究の概要 |
小児ミトコンドリア病は死亡率が約40%と予後の悪い疾患である。本申請では60%の未診断症例解決を目的とし、マルチオミックス多層統合解析を実施する。すなわち遺伝子発現制御領域バリアントの同定、罹患臓器に対するAIを組み合わせたメタボローム解析による障害経路の特定などから、ミトコンドリア病発症原因の解明を試みる。またmtDNA変異を有する症例においては1細胞レベルでのmtDNA不均一性の評価を行う。遺伝子診断結果と紐づいた臨床情報からなるミトコンドリア病ゲノムコホートを確立し、臨床現場での利活用を目指す。本成果はミトコンドリア病のみならず、遺伝性疾患のゲノムコホート研究の先駆けとなる。
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研究実績の概要 |
60%の小児ミトコンドリア病未診断症例に対して、マルチオミックス多層統合解析を実施した。具体的には、ミトコンドリア病の全国からの患者収集および生化学診断を行い、既知遺伝子のスクリーニング後も原因が特定できなかった症例の中で、線維芽細胞が利用可能であり、ミトコンドリア機能異常(ミトコンドリア呼吸鎖複合体の活性異常および酸素消費量の低下)を示す症例を選択した。選択した症例に対して、全ゲノム解析・RNAシーケンシングを施行した。全ゲノム解析にてバリアント情報を取得し、既知・未知バリアントの選り分けを行い、既知疾患バリアントがない場合は、RNAシーケンス解析により、mRNA発現異常を示す遺伝子を同定した。また、ゲノムデータとRNAシーケンスデータのバリアント比較から片アリル発現を示すRNAを特定し、異常な挙動を示す遺伝子を同定した。遺伝子発現制御領域バリアントの同定、さらにその結果を罹患臓器に対するメタボローム解析データ結果とも組み合わせて、またmtDNA変異を有する症例においては、mtscATAC-seq法により細胞種のプロファイルを解析し、1細胞レベルでの罹患臓器細胞のヘテロプラスミー率不均一性の定量化を行い1細胞レベルでのmtDNA不均一性の評価を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
以下の3つに対して順調に計画を進めることができ、次年度の計画につなげることができている。(1)ゲノム解析後の症例から解析対象を選別:ミトコンドリア病の全国からの患者収集および生化学診断を行い解析検体を予定通り順調に増やすことができた。既知遺伝子のスクリーニング後も原因が特定できなかった症例に対しては、線維芽細胞の採取および、ミトコンドリア呼吸鎖複合体もしくは酸素消費量の測定も順調に行うことができた。(2)全ゲノム解析・RNAシーケンシング:上記で選択した症例において、全ゲノム解析およびRNAシーケンシングを、どちらか一方で原因遺伝子が確定した場合を除いた検体で施行することができた。(3)繊維芽細胞におけるシングルセルでのヘテロプラスミー率の不均一性の定量化:mtscATAC-seq法は、既存のscATAC-seq法のプロトコールをカスタマイズする必要があったが、条件検討を重ねた結果、最適なmtscATAC-seqの条件を決めることができた。最適な実験条件下のもとで、細胞種のプロファイルを解析し、1細胞レベルでの罹患臓器細胞のヘテロプラスミー率不均一性の定量化を行った。さらに、バイオインフォマティクスのパイプラインもmtscATAC-seq用に新規に構築する必要があり、独自で構築したパイプラインを用いて解析結果を得ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
前年度に引き続き、ミトコンドリア病の全国からの患者収集および生化学診断を継続し、解析検体を増やしていく。RNAシーケンシングとプロテオーム解析は線維芽細胞を用いて行うため、線維芽細胞においてもミトコンドリア異常を示している症例では遺伝子発現が異常を来たしている可能性が高く、原因が特定できる可能性が高くなるため、繊維芽細胞の収集も継続して行う。上記で選択した症例において、全ゲノム解析およびRNAシーケンシングを、どちらか一方で原因遺伝子が確定した場合を除き、全ての検体で実施する。また、必要を認めた検体に対してプロテオーム解析、メタボローム解析を実施する。プロテオーム解析のエントリー基準は、候補バリアントを持つ遺伝子がtRNAやrRNAなど、遺伝子の翻訳に関与するものなどとする。メタボローム解析については、患者が心筋症を呈しており、候補バリアントを持つ遺伝子が代謝系酵素である症例、臨床診断から代謝経路阻害が疑われる症例とする。 プロテオーム解析からは、クラスターとして発現の低下している遺伝子群を抽出する。新たに導入するメタボローム解析では、障害されている代謝経路のプロファイルを取得する。 前年度の繊維芽細胞を用いたmtscATAC-seqの技術を発展させ、罹患臓器におけるシングルセルでのヘテロプラスミー率の不均一性の定量化を行う。mtscATAC-seq法により細胞種のプロファイルを解析し、1細胞レベルでの罹患臓器細胞のヘテロプラスミー率不均一性の定量化を行う。
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