研究課題/領域番号 |
23H00434
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研究種目 |
基盤研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
中区分56:生体機能および感覚に関する外科学およびその関連分野
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
柿田 明美 新潟大学, 脳研究所, 教授 (80281012)
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研究分担者 |
他田 真理 新潟大学, 脳研究所, 准教授 (30646394)
北浦 弘樹 公立小松大学, 保健医療学部, 教授 (80401769)
田井中 一貴 新潟大学, 脳研究所, 教授 (80506113)
池田 昭夫 京都大学, 医学研究科, 特定教授 (90212761)
濱崎 英臣 新潟大学, 脳研究所, 特任助教 (80843771)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
47,320千円 (直接経費: 36,400千円、間接経費: 10,920千円)
2024年度: 15,600千円 (直接経費: 12,000千円、間接経費: 3,600千円)
2023年度: 16,120千円 (直接経費: 12,400千円、間接経費: 3,720千円)
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キーワード | てんかん / 機能脳外科 / 病態形成機序 / 神経回路 / 分子プロファイル / 興奮伝播特性 / 組織透明化 / ネットワーク / シングルセルトランスクリプトーム / 空間的トランスクリプトーム |
研究開始時の研究の概要 |
てんかんは脳の機能障害による罹患率の高い症候群である。“てんかん焦点ではどのような機序で異常な神経興奮が惹起され伝播するのか?”臨床てんかん学における本質的命題である。本研究は、外科的に切除されたひとてんかん焦点脳組織を対象に、最新鋭の技術を用いた3つの解析:すなわち“生鮮脳スライスを用いた生理学的解析”、“脳組織の3次元的病理解析”、“空間情報を付帯した単一細胞ごとの分子プロファイリング解析”を行い、この命題に対する明確な‘解’つまり病態形成機序を明らかにする。てんかん患者に対する有効な新規治療法の開発基盤となることを目指す。
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研究実績の概要 |
てんかんは脳の機能障害による罹患率の高い症候群である。“てんかん焦点ではどのような機序で異常な神経興奮が惹起され伝播するのか?”臨床てんかん学における本質的命題である。本研究は、外科的に切除されたひとてんかん焦点脳組織を対象に、この命題に対する明確な‘解’つまり病態形成機序を明らかにすることを目的とする。本研究ストラテジーの柱は3つ。すなわち (i) “生鮮脳スライスを用いた生理学的解析”:神経興奮の時空間的伝播特性を捉えて機能異常を可視化し、 (ii) “脳組織の3次元的病理解析”:神経細胞やグリア細胞の立体的ネットワークの特徴を捉えて形態異常を明らかにし、更に、(iii) “空間情報を付帯した単一細胞ごとの分子プロファイリング解析”である。つまり、(i), (ii)の2つのイメージングによりてんかん焦点の機能と形態の特徴を捉え、更にこうした事象論を理解するために、これらと関連する分子発現を明らかにする。つまり最新鋭の3つの解析技術で機能-形態-分子の情報を統合し、ひとてんかん病巣における病態形成機序を理解する。てんかん患者に対する有効な新規治療法の開発基盤となることを目指す。 本年度は、生鮮脳スライスを用いた生理学的実験を進め、てんかん病巣における異常興奮伝播に関する神経回路ネットワークの機能異常を捉えデータを蓄積した。また、内側側頭葉てんかん患者から摘出されたてんかん原性海馬組織を対象に、海馬硬化症を伴う症例と伴わない症例について、single nucelar RNA-seq解析を行うと共に、こうした分子情報と細胞の位置情報を融合させることを目的に、空間的トランスクリプトーム解析を実施した。生理学的現象と関連する可能性のある細胞腫クラスターごとの分子プロファイル分析を進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題は臨床てんかん学における本質的命題である“てんかん焦点ではどのような機序で異常な神経興奮が惹起され伝播するのか?”を知り、てんかん患者に対する有効な新規治療法の開発基盤となる基礎データを得ることを目的としている。そのために掲げた3つの解析ストラテジーのうち、(i) “生鮮脳スライスを用いた生理学的解析”と(iii) “空間情報を付帯した単一細胞ごとの分子プロファイリング解析”については、実験を繰り返し行うことができ、有効なデータが取得できてきている。もう一つの解析手法である(ii) “脳組織の3次元的病理解析”についても、次年度以降に研究を実施できるだけの基礎的フィージビリティー実験を行っている。このような進捗状況から、総合的に見て(2)おおむね順調に進展している:と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
当初の研究計画に大きな変更はない。以下の3つのストラテジーを進める。 (i) “生鮮脳スライスを用いた生理学的解析”:神経興奮の時空間的伝播特性を捉えて機能異常を可視化できる独自開発イメージング技術であり、引き続き当該手術が行われる日に実験を継続する。 (ii) “脳組織の3次元的病理解析”:神経細胞やグリア細胞の立体的ネットワークの特徴を捉えて形態異常を明らかにできる。ひと脳組織に特化した技術開発基盤は確立することができた。コネクトームやグリアアセンブリに着目した立体観察を進める。 (iii) “分子発現プロファイリング解析”:引き続きsnRNA-seq 解析とVisium 解析(病理標本上の細胞の位置情報を付帯したRNA-seq解析)を実施する。既に膨大なデジタルデータが得られており、これらの解析を専門的に行う研究者(濱崎)を本研究チームに迎えた。 これら3つの解析技術で機能-形態-分子の情報を統合し、ひとてんかん病巣における病態形成機序を理解するため、チーム内でデータを共有しディスカッションを重ねる。特に、臨床てんかん学の見地から実験データの妥当性と臨床応用に進む可能性の検証を行う。
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