研究課題/領域番号 |
23H00445
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研究種目 |
基盤研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
中区分58:社会医学、看護学およびその関連分野
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
寺尾 豊 新潟大学, 医歯学系, 教授 (50397717)
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研究分担者 |
土門 久哲 新潟大学, 医歯学系, 准教授 (00594350)
前川 知樹 新潟大学, 医歯学系, 研究教授 (50625168)
平山 悟 新潟大学, 医歯学系, 助教 (70778555)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
47,190千円 (直接経費: 36,300千円、間接経費: 10,890千円)
2024年度: 11,830千円 (直接経費: 9,100千円、間接経費: 2,730千円)
2023年度: 18,070千円 (直接経費: 13,900千円、間接経費: 4,170千円)
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キーワード | 肺炎 / 肺炎球菌 |
研究開始時の研究の概要 |
国内外において,感染性肺炎の主たる原因細菌として分離される肺炎球菌に着目し,「肺炎球菌性肺炎の統合的な検査/予防/治療に向けた開発研究」を行う.具体的には,肺炎球菌がヒト免疫系を攪乱し重症化を促すという知見,in vivo MS/MS同定した肺胞および唾液中の肺炎重症化の分子マーカー候補群,およびマクロライドや阻害剤による免疫調節(免疫系の至適化)メカニズムの解析を進める.そして,それら知見を統合することにより,ワクチン副反応の予防法,現行よりも簡便な肺炎検査法,および免疫調節による耐性菌肺炎までをカバーする治療法を一体化して開発研究する.
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研究実績の概要 |
新型コロナウイルスの流行で,数多くの感染者,重症肺炎患者および死者が発生し,患者個々の健康問題だけでなく,社会・経済・医療システム全般に大きな負の影響が生じた.また,新型コロナウイルス性肺炎を除いても,国内では年間に約13万人もの肺炎死者(誤嚥性肺炎を含む)が報告され,かつ増加し続けている.さらに,感染性肺炎は,薬剤耐性菌の増加や治療薬の無い新型ウイルスにより難治化・重症化している.科学・学術研究の主な目的の1つは,ヒトおよび社会の幸せへの貢献である.そこで,本申請の肺炎制御研究では,安全安心な予防法・簡便な検査法・効果的な治療法を一体化で開発研究し,社会への貢献を目指す.令和4年7月から省庁横断的に始動した『経済安全保障プログラム』政策においても,令和2年から施行された新型コロナウイルス等の感染症対策の様々な政策においても,肺炎等の制御は国家基盤の重要技術の1つとされている.また,現在のコロナ対策の不十分さは,感染性肺炎の学術研究に未到達な領域が残っていることを示している.申請者らは,ヒト免疫系と肺炎球菌のせめぎ合いを解析してきた.その結果,肺炎球菌等の病原微生物は,肺組織を直接損傷するのではなく,ヒト免疫系を攪乱し その過剰免疫によりヒト自らの組織を傷害するという知見,ならびに肺胞および唾液中の肺炎重症化の分子マーカー候補群を得た. 本申請では,現在までに得た前述の肺炎球菌研究の独自知見と免疫調節の概念を統合し,肺炎の予防法,検査法,治療法を一体化して開発研究することを試みる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請調書に記載した研究計画に基づき,実験を開始し,その中間成果を9回の学会発表で公表し,関連研究者と討議を交わし計画のアップデートを果たすことができた.そして,それら学会発表の中間成果と討論を踏まえ,9編の英語の国際学術論文を執筆し,インパクトファクターの付された査読付きの国際学術ジャーナル(Microbiology and Immunology, iScience, Microbiology and Immunology, Cytokine, Diagnostics, Microbiology Spectrum, Journal of Biological Chemistry, Microorganisms, PLOS ONE)に投稿することができた.さらに,エディターやレビューワーのコメントを受け,追加実験や論文の修正を行い.投稿した9編の英語の国際学術論文の全てが受理され,公表されるに至っている.すなわち,申請調書にて計画した中間成果の発表,および成果学術論文の公表が,おおむね順調に達成できていることが,客観的に数値で示すことができている.以上に加え,得られた成果のアウトリーチ活動も励行し,公立中学校での無料出前授業も実施済みである(2023年11月,大阪府).また,アウトリーチ活動の一環として,成果のNHKテレビや新聞者の取材を受ける等の社会還元活動も申請調書の公約に基づき実施できている.
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今後の研究の推進方策 |
申請調書の計画に基づき,実験項目1から3について,以下を実施する.1:免疫系の撹乱を示す唾液マーカーの同定と簡便な検査法の開発研究.(1) 前年度に同定した肺炎球菌の病原因子に関して,遺伝子欠失株を作製する.(2) 前年度に作製した組換えプロテアーゼを好中球と肺胞上皮細胞に添加し,細胞傷害性を調べる.同様に,病原因子欠失株から培養上清を採取し,細胞傷害性を野生株と比較する. 2:免疫調節マクロライド誘導体を用いた重症肺炎の治療研究.(1) マクロライド改変体ライブラリから免疫調節薬の候補が確定できれば,マウス肺感染モデルにて,肺炎球菌を気道感染させ,免疫調節薬候補のマクロライド改変体ライブラリを事後投与した予防効果の検索を行う.(2) モデルマウスに感染させる肺炎球菌を実験室株,ペニシリン耐性株,マクロライド耐性株,キノロン耐性株にまで拡げ,免疫調節薬候補のマクロライド改変体ライブラリの治療効果を検索する.(3) 治療後のマウス末梢血を採取し,寒天平板培地に播種し,生育コロニー数を計測する.抗菌作用を欠いていても,免疫系を回復させれば血中細菌を除去できるか否かも調べる.3:免疫調節マクロライド誘導体を用いたワクチン副反応の予防研究.(1) マクロライド改変体ライブラリから免疫調節薬の候補が確定すれば,アレルギーモデルマウス(CLEA社)にてin vivo解析を行う.アレルギーモデルマウスはメーカー指示書に従い,OVA(卵白アルブミン)を投与しアナフィラキシーを誘発させ,免疫調節薬候補のマクロライド改変体ライブラリを事前投与した予防効果の検索を行う.
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