研究課題/領域番号 |
23H00479
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研究種目 |
基盤研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
中区分60:情報科学、情報工学およびその関連分野
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
花岡 悟一郎 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 情報・人間工学領域, 首席研究員 (30415731)
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研究分担者 |
品川 和雅 茨城大学, 理工学研究科(工学野), 助教 (20896089)
宮原 大輝 電気通信大学, 大学院情報理工学研究科, 助教 (20928288)
Attrapadung Nuttapong 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 情報・人間工学領域, 研究チーム長 (40515300)
渡邉 洋平 電気通信大学, 大学院情報理工学研究科, 助教 (40792263)
岩本 貢 電気通信大学, 大学院情報理工学研究科, 教授 (50377016)
松田 隆宏 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 情報・人間工学領域, 研究チーム長 (60709492)
水木 敬明 東北大学, サイバーサイエンスセンター, 教授 (90323089)
宮本 賢伍 茨城大学, 理工学研究科(工学野), 助教 (90845801)
山下 恭佑 大阪大学, 大学院情報科学研究科, 助教 (90935743)
矢内 直人 大阪大学, 大学院情報科学研究科, 准教授 (30737896)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
47,190千円 (直接経費: 36,300千円、間接経費: 10,890千円)
2024年度: 14,950千円 (直接経費: 11,500千円、間接経費: 3,450千円)
2023年度: 17,160千円 (直接経費: 13,200千円、間接経費: 3,960千円)
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キーワード | 物理暗号 / 視覚暗号 / 高機能暗号 |
研究開始時の研究の概要 |
高機能暗号は安全なデータ利活用を可能とする技術として極めて有効であるが、機能や安全性の概念が複雑であり、潜在的な利用者企業が必ずしも十分に理解が出来ず社会展開があまり進んでいない。本研究では、高機能暗号の事業展開を検討している企業と連携し、高機能暗号技術について、潜在的利用者に対する機能や安全性の平易な説明を可能とする物理・視覚暗号の設計および実装を行う。また、高機能暗号の物理・視覚化を行うだけでなく、その基盤となる数理モデルを構築することで厳密な安全性解析等を明らかにする。さらに、脳開発した物理・視覚暗号が、機能や安全性の理解を促す効果について評価・分析を行う。
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研究実績の概要 |
本研究は、高機能暗号の社会展開を円滑に行うための物理・視覚暗号の設計・実装・評価を行うことを目指すものである。具体的には、【課題1】高機能暗号の物理・視覚化、【課題2】物理・視覚暗号の数理モデル化と安全性解析・機能拡張、【課題3】提案方式の評価方法の確立、の三つを課題として設定している。2023年度においては、以下の研究を行った。 【課題1】秘密計算の仕組みや安全性について直感的な理解を促す動画を作成し、産総研YouTubeを通じて社会に発信しただけでなく、実際にZenmuTech社が広報活動に同動画を使用した。また、検索可能暗号の仕組みや安全性について直感的な理解を促すためのスライドによる説明資料を作成(CSS学生論文賞、UWS学生論文賞)し、GMOサイバーセキュリティbyイエラエ社が、自社イベントでその内容について紹介を行った。これらの活動については国際会議MobiSec 2023において招待講演として発表を行った。そして、AIセキュリティの教育コンテンツ(CSS最優秀デモンストレーション賞)や琴を用いた暗号技術(IWSEC Best Poster Award)を提案した。加えて、秘密計算やゼロ知識証明のカードベースプロトコル(CSS優秀論文賞を含む)、視覚暗号を用いた物理・視覚プロトコル、ARグラスを用いた視覚復号型秘密分散を新しく開発し、株式会社ハナヤマと共同で視覚復号型秘密分散を用いた地図パズルを作成した。 【課題2】物理・視覚暗号の数理モデル化と安全性解析の研究として、物理的な天秤を用いる秘密計算の数理モデル化(DICOMO優秀論文賞)と有限群の分解を用いたシャッフル操作の研究を行った。 【課題3】秘密計算の動画および検索可能暗号のスライドについて、提案方式の評価方法の確立を目的として、ユーザ調査を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本年度の当初計画では、事業者企業に対するヒアリングを行い、物理・視覚暗号の方式設計をする段階を目指していたが、その段階にとどまらず、実際に事業者企業が物理・視覚暗号の実利用を開始する段階に到達したためである。具体的には、秘密計算の仕組みや安全性の動画について、産総研YouTubeを通じて社会に発信しただけでなく、実際にZenmuTech社が広報活動に同動画を使用した。また、検索可能暗号の仕組みや安全性について直感的な理解を促すためのスライドによる説明資料を作成し、GMOサイバーセキュリティbyイエラエ社が、自社イベントでその内容について紹介を行った。さらに、株式会社NTTドコモの秘匿クロス統計技術がdocomo Open House’24において展示された際、説明コンテンツの一部にカードベース暗号プロトコルが用いられており、その具体化やコンテンツ作成に対して技術支援・監修を行った。これらの活動は、本研究プロジェクトの研究成果が、事業者企業による実利用を通して社会展開されていることを意味している。
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今後の研究の推進方策 |
X引き続き、事業者企業との密な連携のもと、当該事業者企業が利用者企業に対して、社会実装の対象となる高機能暗号の機能や安全性を納得させることが可能な、物理・視覚暗号の設計を行う。 【課題1】引き続き、カードベース暗号(秘密計算・ゼロ知識証明)プロトコルの開発に取り組むと共に、高機能暗号の物理・視覚化のため、ボードゲームのゲームマスター・司会なしでの実現等、カードベース暗号技術の応用手法の開発にも着手する。また、前年度に引き続き、秘密計算および検索可能暗号の機能や安全性を直感的に理解可能な説明方法について検討を進め、作成済みの動画や説明資料に反映させる。さらに、視覚秘密分散を用いた地図パズルの実用化・商品化(株式会社ハナヤマと共同で実施)、3Dプリンタ等の様々なツールを活用した新たな物理暗号の考案、秘密計算を分かりやすく説明するための教育用玩具の開発等にも取り組む。他にも、より幅広い学術分野に対して視覚化を検討する。 【課題2】引き続き、カードベース暗号プロトコルを中心に、海外連携を行いながら機能拡張・モデル化に取り組む。具体的には、既に確立しているカードベース暗号の計算モデルを再解析し、電子的な秘密計算との差異や本質的ギャップを見極めつつ、両者の歩み寄りの可能性探求を継続して進める。また、天秤を用いる秘密計算プロトコルの拡張に取り組む。 【課題3】課題1で作成した動画や資料を用いた説明により期待した効果が得られているかについて、調査会社等を利用して定量的に評価を行い、真に社会展開に資する内容になっているか、また、そのために欠けていた点が何であるか明らかにする。また、ARグラスを用いた視覚復号型秘密分散の研究について、本格的な実験に取り組み、その精度を精密に評価できる手法を確立することを目指す。上記以外の高機能暗号についても、事業者企業からの要望に応じて検討を進める。
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