研究課題/領域番号 |
23H00499
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研究種目 |
基盤研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
中区分61:人間情報学およびその関連分野
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研究機関 | 奈良先端科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
向川 康博 奈良先端科学技術大学院大学, デジタルグリーンイノベーションセンター, 教授 (60294435)
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研究分担者 |
荒木 臣紀 独立行政法人国立文化財機構奈良国立博物館, その他部局等, 上席研究員 (20537344)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2028-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
46,410千円 (直接経費: 35,700千円、間接経費: 10,710千円)
2024年度: 10,010千円 (直接経費: 7,700千円、間接経費: 2,310千円)
2023年度: 10,010千円 (直接経費: 7,700千円、間接経費: 2,310千円)
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キーワード | 高次元光解析 / デジタル修復 / 文化財修理 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では,文化財の保存修復を目的とし,光情報を高次元で計測することで,通常のカメラでは撮影できない視覚情報を復元し,文化財の劣化・損傷具合を定量的に評価するための解析技術を開発する.光線の通過点と方向を計測する4次元光線空間や,各波長ごとの強度を計測する分光カメラ等を用いた高次元光計測と,計測結果に潜在的に含まれる視覚情報を抽出する深層学習を組み合わせ,文化財の修復に特化した光解析技術を開発する.
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研究実績の概要 |
研究代表者の向川は,2023年6月5日-8日にかけて,フランス・アミアンのノートルダム大聖堂のステンドグラスの分光計測を行った.可視光と近赤外に対応した2種類の分光器を組み合わせることで,約400nm-1400nmの広い波長帯域で0.5nmの高分解能で分光計測した.ステンドグラスを屋内から計測する場合には,日照が光源となる.本計測は波長分解能を優先したために,空間的にスキャンする方式となっており,計測の間に日照条件が変化してしまう.この問題に対して,垂直スキャンと水平スキャンを組み合わせることで,日照変化の影響を補償する方法を開発した.また,福岡県の珍敷塚古墳の壁画の顔料解析にも取り組んだ.壁画の分光データを対象とし,オートエンコーダを用いた教師なし学習によって,表面の顔料の厚みを推定する技術を開発した.これらの成果は,2023年10月にフランス・パリで開催されたInternational Conference on Computer Vision (ICCV2023)のワークショップ e-Heritageにて発表した.
一方,研究分担者の荒木は,津波によって被災したガラス乾板資料の実見調査を行った.また被災資料と同じ乾板メーカーである東洋乾板(後に富士フィルムと合併)の技術資料の調査を行い,次年度以降に行う処置に備えて乾板の構造や材質について調査を行った.併せて今後使用を予定している実験機器の市場調査と購入,修理材料の調査と調達を行った.
研究代表者の向川と研究分担者の荒木は2023年9月27日に,陸前高田市立博物館を訪問し,実際に津波によって被災したガラス乾板資料を共同で調査し,適用できる保存修復手法について検討を行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ステンドグラスの分光計測における日照変動の補償方法,および,古墳壁画の分光データ解析については,査読付き国際会議で発表するなど,十分な成果が得られている.一方で,ガラス乾板については,被災した乾板の調査や,シミュレーション実験は進められているものの,仮想修復については現在取り組んでいる最中である.
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今後の研究の推進方策 |
文化財を模したサンプルを対象として,高次元光計測による解析手法や物理修理手法の評価実験を進めつつ,実際に様々な文化財を対象とした実証実験にも取り組む.分光カメラを用いたステンドグラスの高次元光計測では,日照変化の影響をより高精度に除去する手法を開発する.また,同じく分光カメラを用いた古墳壁画計測では,これまできちんと計測されてこなかった新たな横穴式石室を対象とし,最適な計測方法の検討を開始する.古文書については,分光カメラに加えて近赤外に感度を持つ高解像度カメラを併用することで,劣化状態や不可視情報の推定に取り組む.ガラス乾板については,4次元の光伝播計測に基づく見え方の分離に取り組む.また,デジタル修復と実物修理を比較するにあたり,修理技法と修理材料の検討を行うためにガラス乾板の技法材料と劣化状態の調査分析を行う
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